上 下
399 / 414
四章 物語は終盤へ

いつになったら帰って来るんだ? 公爵邸では

しおりを挟む
公爵家の部屋には公爵とドミニク、旦那のライアン、アレックス、エドバルド、フレデリック、シリクレッチ、レノックそして、アレクサンダーがソファに座っていた。

「一日で帰ってくるんじゃなかったのか?」

エドバルドが苛立ちを抑えてはいるが震える声だったのは皆に伝わっていた。

王族からの呼び出しに王宮へ向かってから既に二日が経っていた。

初日は王子の体調不良により迷惑をかけた事のお詫びに夕食に招き一泊していただく、と王族から連絡が来た。

そして二日目。
魔道具を届けたアレクサンダーの話によると、明日ハーヴィルと直接会いバングルの効果を確認するので側で待機する事に了承してしまったと…。
王族からも天候が悪く、伯爵夫人を馬車で返すのは危険と判断し滞在させる…と連絡があった。
確かに外は土砂降りで「危険」と言われれば納得してしまう程だった。

「明日には帰ってくるだろ…。」

なんの根拠もないが、悪い予感を振り払いたいフレデリックは希望を口にした。

「念のため明日迎えに行くと連絡はしておいた。」

今は公爵の言葉にすがるしかなかった。

「アレッサンドロ、学園ではシャルマン様と王子はどんな関係だったんだ?」

客観的に様子を見てきたアレクサンダーが疑問を口にした。

「どんな…入学当初はペアについて王子に意見していましたが、最高学年になる頃には落ち着き二人を一緒に見かけることは…王子の体調の変化が起きてからは私と王子の連絡係として動いてもらいました。」

「…そうか。」

「何かありましたか?」

「いや…私が魔道具を渡した時は、シャルマン様より王子の方が彼に依存しているように見えたな…。」

「「「「「「………」」」」」」

アレクサンダーの言葉で全員が甘い考えだったのを知る。

「明日、シャルを迎えに行く。」

「「あぁ」」

「明日は…どうでしょう…。」

ライの言葉にエドとリックが頷くもアレクサンダーは否定的だった。

「何でっ…ですか?」 

ライが声を荒げたが必死に冷静さを取り戻して聞いた。

「明日はハーヴィル様と会うとの事です、それは本当でしょう。そして万が一魔道具が効かなかった場合、王子に近付けるのがシャルマン様だけかと…。」

「なら、明日は我慢しろと?」

「私としても連絡を頂くまでは動けませんね…。魔道具もあれで効果がなければ難しいでしょうから。」

今回の魔道具が光属性の加護に効く最後のバングル…。
効果がなければ…、

「…このままシャルマンが帰ってこないってこと無いですよね?」

「…どうでしょう…。」

フレデリックの質問に不安が場を支配した。
相手は王族、簡単に訪問出来る相手ではない。

「シャル…」

何も出来ず明日になるのを待つしかなかった…。

だが、三日目もシャルマンが帰ってくることはなかった。

バングルの効果がないどころか王子が寝込み、近づくことが出来るのはシャルマンだけなので世話を頼んだと報せを受けた。

王子の魔力酔いが嘘ではないことも、その魔力酔いを引き起こす相手が光属性の加護を扱える人物だと言うことも分かっている…。
貴重な存在でその力に悪影響があるとは聞いたこともないにも関わらず体調不良を引き起こす事に対応できず、効果のあるバングルに出会えないのも納得出来る…出来るが三日も会えず、いつ帰って来るのかも分からないとなると落ち着いてはいられなかった。

シャルマンは百年ぶりの獣人。
直接王族から欲っしていると聞いたわけではない…が不安でしかない。

これ以上長引けばシャルマンは王族に囲われるのではないか…。

それは、誰もが頭に有った。

明日俺はシャルを迎えに行く。

四日目の朝。
昨日の決意を口にしたわけでもないのにライアン、アレックス、エドバルド、フレデリック、シリクレッチが揃い、馬車まで準備されていた。
馬車の御者台にはレノックが座っていた。

「俺の家は商家なんで馬車の運転も仕事の基礎として練習したので出来ます。」

「…あぁ、頼む。」

五人は馬車に乗り込み六人で王宮へ向かった。



ーーーーーーーーー
ストックが…。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

転生令息は冒険者を目指す!?

葛城 惶
BL
ある時、日本に大規模災害が発生した。  救助活動中に取り残された少女を助けた自衛官、天海隆司は直後に土砂の崩落に巻き込まれ、意識を失う。  再び目を開けた時、彼は全く知らない世界に転生していた。  異世界で美貌の貴族令息に転生した脳筋の元自衛官は憧れの冒険者になれるのか?!  とってもお馬鹿なコメディです(;^_^A

イケメン王子四兄弟に捕まって、女にされました。

天災
BL
 イケメン王子四兄弟に捕まりました。  僕は、女にされました。

俺は北国の王子の失脚を狙う悪の側近に転生したらしいが、寒いのは苦手なのでトンズラします

椿谷あずる
BL
ここはとある北の国。綺麗な金髪碧眼のイケメン王子様の側近に転生した俺は、どうやら彼を失脚させようと陰謀を張り巡らせていたらしい……。いやいや一切興味がないし!寒いところ嫌いだし!よし、やめよう! こうして俺は逃亡することに決めた。

やめて抱っこしないで!過保護なメンズに囲まれる!?〜異世界転生した俺は死にそうな最弱プリンスだけど最強冒険者〜

ゆきぶた
BL
異世界転生したからハーレムだ!と、思ったら男のハーレムが出来上がるBLです。主人公総受ですがエロなしのギャグ寄りです。 短編用に登場人物紹介を追加します。 ✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎ あらすじ 前世を思い出した第5王子のイルレイン(通称イル)はある日、謎の呪いで倒れてしまう。 20歳までに死ぬと言われたイルは禁呪に手を出し、呪いを解く素材を集めるため、セイと名乗り冒険者になる。 そして気がつけば、最強の冒険者の一人になっていた。 普段は病弱ながらも執事(スライム)に甘やかされ、冒険者として仲間達に甘やかされ、たまに兄達にも甘やかされる。 そして思ったハーレムとは違うハーレムを作りつつも、最強冒険者なのにいつも抱っこされてしまうイルは、自分の呪いを解くことが出来るのか?? ✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎ お相手は人外(人型スライム)、冒険者(鍛冶屋)、錬金術師、兄王子達など。なにより皆、過保護です。 前半はギャグ多め、後半は恋愛思考が始まりラストはシリアスになります。 文章能力が低いので読みにくかったらすみません。 ※一瞬でもhotランキング10位まで行けたのは皆様のおかげでございます。お気に入り1000嬉しいです。ありがとうございました! 本編は完結しましたが、暫く不定期ですがオマケを更新します!

兄弟がイケメンな件について。

どらやき
BL
平凡な俺とは違い、周りからの視線を集めまくる兄弟達。 「関わりたくないな」なんて、俺が一方的に思っても"一緒に居る"という選択肢しかない。 イケメン兄弟達に俺は今日も翻弄されます。

【完結】僕の異世界転生先は卵で生まれて捨てられた竜でした

エウラ
BL
どうしてこうなったのか。 僕は今、卵の中。ここに生まれる前の記憶がある。 なんとなく異世界転生したんだと思うけど、捨てられたっぽい? 孵る前に死んじゃうよ!と思ったら誰かに助けられたみたい。 僕、頑張って大きくなって恩返しするからね! 天然記念物的な竜に転生した僕が、助けて育ててくれたエルフなお兄さんと旅をしながらのんびり過ごす話になる予定。 突発的に書き出したので先は分かりませんが短い予定です。 不定期投稿です。 本編完結で、番外編を更新予定です。不定期です。

溺愛お義兄様を卒業しようと思ったら、、、

ShoTaro
BL
僕・テオドールは、6歳の時にロックス公爵家に引き取られた。 そこから始まった兄・レオナルドの溺愛。 元々貴族ではなく、ただの庶子であるテオドールは、15歳となり、成人まで残すところ一年。独り立ちする計画を立てていた。 兄からの卒業。 レオナルドはそんなことを許すはずもなく、、 全4話で1日1話更新します。 R-18も多少入りますが、最後の1話のみです。

精霊の港 飛ばされたリーマン、体格のいい男たちに囲まれる

風見鶏ーKazamidoriー
BL
 秋津ミナトは、うだつのあがらないサラリーマン。これといった特徴もなく、体力の衰えを感じてスポーツジムへ通うお年ごろ。  ある日帰り道で奇妙な精霊と出会い、追いかけた先は見たこともない場所。湊(ミナト)の前へ現れたのは黄金色にかがやく瞳をした美しい男だった。ロマス帝国という古代ローマに似た巨大な国が支配する世界で妖精に出会い、帝国の片鱗に触れてさらにはドラゴンまで、サラリーマンだった湊の人生は激変し異なる世界の動乱へ巻きこまれてゆく物語。 ※この物語に登場する人物、名、団体、場所はすべてフィクションです。

処理中です...