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四章 物語は終盤へ

体調不良

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王子が目覚めると部屋に夕食が運ばれた…。
二人だけの食事をするも、まだハーヴィル様の魔力の影響なのか王子の食事を進める手はゆっくりだった。
 
「あの…サンドイッチとか僕が作ってきましょうか?それぐらいなら出来ますよ?」

「…いや…いぃ」

断られてしまえば何も出来ず大人しく食べ進めるしかない。

「…はぃ」

王子と一緒に僕の分まで用意されているので食べないわけにはいかないが、王子の前でばくばく食べるのも気が引ける。
普段から沢山食べる方の僕ではないので半分程食べて食事は終わるも、王子の方は三分の一程だった。
 
再び王子の食欲不振が始まってしまった…。

けれど、今回はハーヴィル様の魔力が原因というのをハーヴィル様本人に伝えたので会う機会は更に減っていくだろう。
そうなれば次第に回復していく…はず…。

ハーヴィル様と会う機会が減れば、僕の仕事はなくなる…であれば僕は屋敷に…戻れる。

食事を終え王子はソファで寛いでいる…というより微動だにしない。
休んでいるが王子は自身の魔力も使えない程体力が落ちていた。
今の状態で誰かに洗浄魔法を掛けてもらうのも困難なので、お風呂に入るしかない。

一日くらい我慢するべきかな?

と思ったが…。

「あれが身体中に着いているようで…流したい。」 

他人の魔力を感じたことがない僕は身体を洗うだけで魔力が流れるのかは分からないが王子が望むのであれば何も言わない。
ただ心配なのが、この状態で一人お風呂に行かせるのは不安でしかなかった。

ずっと不安を抱えたまま王子を待ち続けるくらいなら、お手伝いするべきなのかもしれない…。
今の王子に近付けるのは僕だけ…きっとこうなることを見越して王子も僕に残ってほしかったんだと思う。

お風呂に行こうとする王子は心配になる後ろ姿だが、王族のお風呂を手伝うのは悩んでしまう…。

「…ぁっ」

王子は膝から力が抜けたように倒れそうになるも壁に手を付き持ちこたえた。
僕はもう何も考えず王子まで駆け寄り支えた。

「…シャルマン?」

「お風呂までお付き合いします。」

僕は僕の仕事をしよう。

「…頼む。」

「はいっ」

僕達は王族専用のお風呂場に向かい、脱衣所まで入った。

「すまない、ここからは一人で…。」

王子から一人を望まれたが本当に一人にして良いのだろうか…。
今の王子は僕でも倒してしまいそうなくらい弱ってる…。
そんな人を一人にして、お風呂に浸かった時万が一が起きたらどうしよう…。

「…手伝います…ょ…?」

「…ぃゃ…」

「溺れでもしたら…」

「…それは…」

「今日だけですから…」

「……あぁ」

強引だった自覚はあるが王子の許可を貰い、僕が王子の服を脱がしていく。

そこに色っぽい感情は一切無い。
病人?相手に邪な感情はなく淡々と進めていく。

その…王子を意識しないように浴室へ案内し、僕は服を脱ぐことはなく王子のお風呂に専念した。

貴族のお風呂の手順は分からないけど、僕は暖かい泡風呂に浸かってもらいながらタオルで王子の体を洗う。
体を終え頭を洗うと眠くなったのか、王子の瞼が落ちているのがわかる。
頭を洗いつつマッサージすれば寝てしまいそうな雰囲気だった。

「…王子…」

起こすのは申し訳ないと感じつつも、眠られてしまうと僕一人で王子を運ぶことは出来ない。
そうなれば使用人を呼ぶ事になるんだが、魔力の無い人なんて居ない。
少し落ち着いてきたのに魔力のある人に触れて再び体調を悪くしたら折角お風呂に入った意味がない。

「…シャルマンは?」

「んん?僕が何ですか?」

「入らないのか?」

入る?…お風呂にって事?

「…いやっ僕は…」

「私は構わない…」

「…王子の後に頂きますから、僕の事は気にしないでください。」

「………」

頭を洗いお湯で流し終えた。

「僕、外で待ってますね。眠らないでくださいよ?」

「待て…」

立ち去る瞬間手を捕まれた。

「はい、なんでしょう?…あっ飲み物ですか?」

「いや…ここにいてくれ。」

「ここに?」

「…あぁ」

「…はい」

体調不良の時ってやっぱり心細いよね。

今まで人が側にいるのが辛かったから側にいる事が出来る人に縋っちゃうのかも。
捕まれた手が先程のようにひんやりとはしておらず、お風呂のおかげで温かい。
お風呂場に留まる事に了承したが、僕は逃げたりしないのに王子に手を繋がれたままだった。
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