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四章 物語は終盤へ

流されまくりの僕は…

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いつの間にか眠ってしまったので夕食をご馳走になることになった。

僕が起きても王子は眠っていて少しでも元気になってほしくて起きるまで寝かせてあげた所、気が付けば外は暗くなっていた。
王子が起きると僕は上半身裸で急に恥ずかしくなり身体を隠せば、僕の様子を見て落ちていた服を王子が拾い渡してくれた。

「悪いな…」

「いえ、眠れたようなので良かったです。」

あの…エッチな服を着るには一瞬胸が無防備になる…王子に「あっち向いて」って言える仲ではないので、背を向けて身に付けいく。

「…食事…していかないか?」

きっと王子にとってはお礼のつもりなんだと思う。

「へっ?あ~帰ります。急に人数が増えたらシェフの人困っちゃうだろうから。」

「王宮では数名増えるくらいなら問題ない。」

「んっん~遅くなるなんて言ってなくて…」

言い訳が子供みたいだけど僕にはこれが精一杯。

「誘ったのは私だ、そのくらいこちらで伝えておく。」

「でも…」

「もう少し…眠りたいんだ…、フィンコックがいると眠れる。」

「…はい…」

そんな風に言われてしまえば断れなかった。

食事は王子との二人きりではなく王様と王妃様も一緒だったが、王子妃と側室であるハーヴィル様の姿はなかった。
王族の仕来たりは分からないが、側室は別でも結婚したばかりの王子妃は一緒でも良いのではないだろうか?

この顔ぶれはなんだか緊張する。

僕なら食事は皆が一緒が良い。
緊張して食べることに集中するしかなかったが、王族の方々に気を使われてしまった。

王様は「旦那達とはどうだ?」「子供達は元気か?」って質問を沢山され、王妃様も「身体は大丈夫?」「双子を産んだばかりでしょ?」と僕の事を気遣ってくれてなんだか申し訳ないというか…こういう時に大人は恐縮ですと使うんだなと体験した。

そして流されまくりの僕は何故僕が最近双子を生んだことを既に王族に知られているのか?などの質問は頭に浮かんでこなかった。

それよりも王様からの提案に混乱するばかりだった。

「こんな遅くに公爵家の令息…いや伯爵夫人を帰すわけにはいかない。ぜひ泊まっていってほしい。」

「いえっそんなご迷惑を…」

王様の提案を断って良いのか分からないが、ここで「はい」と言ったら遠慮がないと思われるのかもと僕なりに必死に考えていた。

「迷惑なんかじゃないよ、レイモンドの食欲が戻ったのはシャルマン様のお力なんだよね?」

王妃様にも進められると断りづらい。
僕としては王宮に泊まるなんて思ってもいなかっから、この状況に困惑している。
王様も王妃様もキラキラした目で僕を見ていた。
王子の体調不良を治したのは僕では…そんなすごい人じゃないのに…勘違いさせてしまった…。

王族への不敬罪とか言われたりしないよね?

「僕は何も…一緒に居ただけです。」

「一緒にいるだけで回復するなんて、きっと相性が良いんだね。もうしばらく一緒にいてほしいな。」

「えっあの…」

これは社交辞令?屋敷を出る時にお父様達が心配していたのは僕が社交辞令や本音・建前に疎いからだったのかもしれない。
今になってお兄様にお願いして一緒に来てもらえば良かったと後悔した。

「はは、公爵家の方には私から連絡しておこう。シャルマン様は本日王宮に泊まるということで。」

有無を言わせない王様の言葉に傍にいた執事は目線で合図され食堂を出ていってしまった。
助けを求めるように王子に視線を送れば、微笑んで頷かれ、僕の気持ちは届かず泊まることが決定してしまった。

お父様に泊まるなんて言ってないのに…無断外泊してしまった…。

その後も王様達との談笑は続き、ワインを飲んで気分が良くなった王様からは「いっそ二人が結婚したらいい」と酔った勢いで爆弾発言をされてしまった。
「僕は人妻ですよ」と慌てるも、王妃様まで「それいいね、僕の息子になりなさい」って、こちらもかなり酔いが回っているようだった。
酔っぱらいの相手なんてしたことがないが、酔っている人の言葉に本気で狼狽え返事しなくても良かったのかもしれない。

上機嫌の二人を見送りながら僕は王子にエスコートされ、流れで王子の部屋へ入ってしまった。
王子の部屋から食堂への道を覚えるのは難しく、自分が王子の部屋に向かっているとは思わなかった。

てっきり客室に案内されているんだとばかり思っていた。

「あの王子?」

「レイモンドと呼んでくれ。」

「いえっそんなっ」

王子を名前で呼ぶなんて…。
それに僕達はそんな関係ではないこともちゃんと理解しています。

「シャルマンにはそう呼ばれたい。私もシャルマンと呼んでいいか?」

「僕の名前は構いませんが、僕が王子の名前を呼んで良いものか…。」

「私が許可を出したのだから問題ない。」

…良いのかな?

「…はぃ…では…レイモンド王子。」

「いずれはレイモンドと呼んでくれると嬉しい。」

「それはっ…」

王子を呼び捨てなんて恐れ多い…怖すぎる。
それに、そんなことしたら王子の威厳に関わるのでは?

「それと、今日はここに泊まってくれ。」

「へっ、いえっ僕は客室に…。」

「私を眠らせてくれないのか?」

そんな捨てられた子犬のような目をされては…。

「…では、王子が眠ったら…」

「数時間で起きてしまうかもしれない…子供のようかもしれないが夜は側に居てほしい。」

「…はぃ…。」

睡眠障害で苦しんで漸く安眠グッズ?のような僕を見つけたから手放したくないのかな?

「それと…」

「はひっ」

まだ何かあるの?

「私の事はレイモンドと。」

「あっ…はい。」

どうしてそこまで名前を?

王子…レイモンド王子はクローゼットを開け服を用意していた。

「寝巻きにはこれを…」

「あっはい」

使用人の人ではなく、王子が僕の服を用意してくれていた。
あっもしかして、一緒に眠る時に使用人の魔力が移った服を着た僕だと不快なのかな?そう考えると、とても繊細だ。

それよりも…お風呂…入りたいなぁ。

「どうした?」

「あっいえっ…。」

「何かあるなら言ってくれ、シャルマンには感謝しているので快適に過ごしてほしい。」

王子の好意に甘えてお風呂に入りたいって言って良いのかな?

「…王じぃ…レイモンド王子もやっぱり洗浄魔法で済ませるんですか?」

「あぁ…あっ獣人は魔法が使えないんだったか、では私がっ」

「いえそんなっ王子の手を煩わせるわけにはっ」

それに魔力酔いの人に魔力を使わせてしまって良いの?
…ダメだ…分からない。

「構わない。」

「いえっ…僕は…出来るならお風呂が…」

「風呂?」

「はい…お風呂が好きなんです…。」

「わかった用意させよう。」

王子がベルを鳴らせばすぐに使用人が現れお風呂の用意を指示した。

「レイモンド王子はお風呂…嫌いですか?」

「ん?嫌いだとは思わない、ただ効率が悪いとは思う。洗浄魔法の方が完璧で時間を掛けないからな。」

「…そうですね。」

「風呂が好きなのか?」

「はい、お風呂はリラックス効果があるんです。それに血行が良くなって身体が暖まると睡眠にも効果があると聞いたことがあります。」

「…そうなんだな。では、私も入るとしよう。」

「…一度試してみて効果があれば続けて、体質に合わないと分かれば洗浄魔法で済ませばいいと思います。」

「………。」

そして僕達はお風呂に。
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