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三章 設定を知る者

卒業まで残り僅か

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最近新たな噂を耳にするようになった。
それは僕と彼の事だ。

僕の方は湖で人を助けた聖女のようだって奇跡の技に皆が夢中…仕方ないよね本当の事だからっ。
一方あれは僕の人助けの横取りしようと必死らしい。
その場にいなかったのに、居たように触れ回り僕が助ける前に助けたとか。

そんなの誰も信じるはずないのに…。

きっと権力で噂を流せって強要したに違いない。
噂を撒き散らす方も仕方なくだろうけど、そんな嘘を吐きたくないだろうに可哀想…卒業式には僕が暴いてやらないと。

最近王子の様子がおかしいと感じていた。
会う機会が極端に減り忙しそうにしていると思ったら、理由がわかった。

あっちの主人公に付き纏われていたらしい。

婚約者を四人も作りながら未だに王子を諦めていなかったようで、最近再び奇行に走っているらしい。

本気でそんなことが出来ると思っているの?
ここがゲームを元にしている世界とはいえ現実だよ?
許されるわけないのにどうして気付かないのかな?

本当、あっちの主人公と関わったら道連れにされそう…。

王子を助けるには僕が側にいるしかないよね、そうしたら寄って来ないはず…きっとこれは主人公対決への幕開けなのかもしれない。

それから僕は必死に王子を探して出来る限り側にいた。

やはり僕が側にいると向こうは寄ってこなかった…が、僕の安全を考えてなのか王子はすぐに何処かへ行ってしまう。

僕の事は気にしないで良いのに…僕をあっちの主人公から守るために…。

心配で仕方がない。
王子は日に日に顔色悪くしていき弱っているように見える。

可哀想な王子…主人公が天然・鈍感ってのはよくあるけど、ここまで気付かないと不愉快になってくる。

王子は優しいからハッキリ言えないのかもしれないけど、言わないと分からないって人いる…あれのように。

僕が代わりに言うしかないのかも…。

「今は一人になりたいだ。」

突然王子にそのような事を言われ驚いたが、その後真実を知った。
僕は気付いていなかったが僕の後方にはもう一人の主人公がいたらしい。

僕越しに彼に「近寄るな」と宣言したかったんだとおもう。

漸く気持ちを言えた王子はそれから体調を戻していき、彼が王子に近寄ることはなかった。
僕は王子にハッキリ事実を聞いたわけではないが、王子が誰に何を言いたかったのかは分かる。

大丈夫だよ、僕は王子を信じてるから。

あの言葉は僕に言ったわけではないが、表向きは僕に言っていたので一応王子との距離を置いた。
でないと、あれは王子の側に行くはずだから。
僕が行けば自分もと我が儘を発揮するだろうと容易に想像できる。
なので、少し残念だが王子を探すのはやめた。
探さなくても同じ場所に帰る僕には彼と違って余裕がある。

余裕のある人間と、ない人間では優雅さが違うんだよね。

冬休みに入り王子との距離も以前に戻ったように感じた。
食事は別だが偶然出会うと、庭園を一緒に散歩するようになった。
王子は忙しいのか散歩はとても僅かな時間だったが、僕と一緒の時間を過ごしてくれた。

外の情報はお父様からの手紙でしか知ることが出来ないが、あちらの主人公はまた婚約者を増やしたとか。
名前を聞いても分からないが多分モブ、もはや手当たり次第といえるだろう。
質より量という言葉を目の当たりにした気がする。

なんだか僕が態々動く必要がないくらい彼は暴れまわってるらしい…。

何故なら王宮で偶然シャルマン フィンコックの名前を聞いてしまった…多分だが王族が既に動いている可能性もある
やっぱり、良くある卒業式での断罪は免れないようだ…。

もしそうなら、僕も動くべきだよね?

僕も自分なりに正義のために動いて偶然王子に保護されたり共通の時間を過ごしたりするんじゃない?
だって…僕が一人で動いて危険な目にあったらきっと、攻略対象や王子が助けてくれるはず。
そうしたら「何て危険なことをするんだ」って詰め寄られ、そこで僕が「不正を許すことが出来ないからです」って言えば僕の正義感に感銘を受けるはず。

あっちの主人公は僕の攻略対象や王子の好感度を上げるために存在しているんだろうね。

気になるのは、あれは裏でどれだけの悪さをしているんだろうか…。
きっと一つ掴めば芋蔓式に悪事が現れる、突破口があれば…。

冬休みが終わり学園が始まると何事もなく過ぎていった。
その頃にはあっちの不正を暴く暇もないくらい僕は卒業後の進路にぶち当たった。
いずれ王子の側室になるとはいえ、今の僕には打診されていない。
婚約の申し込みは公爵家のドルドリッチ ミットシュルディガー様と侯爵家のテアドール アベイユ様の二つだった。

たったの二つ。

光属性を扱え、性格も顔も良い僕がたったの二件だけ。
何かの間違いなのでは?と思うくらいの少なさだが、僕と王子の関係が知れ渡っているので仕方がないのかもしれない。

王子の思い人に婚約の申し込みはしづらいよね。

それに結婚して一年以内は愛人は作らず、二年目から愛人や貸出との契約をするのが暗黙の了解だった。
王族も一年後なら王妃に子が出来ようが出来まいが側妃・愛人を持つことが出来る。
なので、僕に王子からお声が掛かるとしたら王子達が結婚して一年後以降になる。
それまでは多くの貴族は、僕に婚約の申し込みを遠慮するだろう。
僕に婚約を打診した二人は高位貴族であり僕を本妻にするなら王子より早く申し込まなければならない。
なのでこのタイミングだった。

「もう少し…確りと考えさせて欲しい。」

思わせ振りな態度で、結論は出さなかった。
そうなると、再び卒業後の進路について悩むことになる。

王宮勤めをすると王子ルート確定となり、どんなエンドを迎えても僕は王宮から離れることは出来ない。
まぁ、僕が王子に振られる事はないんだけど王妃がどんな手段を取るかは分からない。
ゲームではかなり大人しく僕の能力の素晴らしさにいつも微笑みを浮かべ一歩引いて、王子と僕の関係を了承していた。

これが王子ルートのハッピーエンド。

別のルートでは…僕の光属性の特性を活かすべく魔法省へ入省したとすると、魔法省の人との恋愛ルートに入るが、その攻略対象者があっちと婚約した先生の可能性が高くなる。

だとすると僕はあっちの主人公から先生を取り返さなきゃいけない…。

きっと弱みを掴んで婚約者になったのだろうからそれら全てを暴かなければならない…。
もし失敗すると僕は誰とも結婚せず聖女のように人々に尽くすことになる。
多くの貴族・平民から崇拝されるも僕の幸せと先生は…。
かなり盛り上がるストーリーだが、かなりハードかもしれない…。

王子ルートを進んでいる僕が無理に先生ルートを選ぶ必要はない…。
先生を助けたい気持ちはあるが、王子の好感度を捨てて先生にいって失敗はしたくない…。
それだったら、婚約を申し込んだ二人のうちどちらかを選べば好感度からしてハッピーエンドは確定。

どちらを選んでも僕の幸せは決まっている。

そして最後の選択肢が誰の婚約も受けず、男爵家へ戻った時だ。
数年は一人の時間を過ごすも攻略対象者が現れ「セドリックの事が忘れられない、俺を選んで欲しい」と訪ねてくる。
僕が「誰も選ぶことが出来ない」と素直に告白するとハーレムエンドになる…はず。ハーレムエンドは好感度が重要で、きっと今のままならハーレムエンドは問題ないと…。だけど、確りとやり込んでないから…不安もある。

悩むなぁ、僕が王妃になるには王子ルートに入ってなんだけど…そこからは情報がないんだよね…。
ちゃんと王妃になるルートは有るんだけど…僕がやった時にはそこまでなかったんだよね…好感度がまだ足りなかったみたいで…。
ハーレムを目指すなら誰とも婚約しない…なんだけど、ネットは人によって言っていることが違ったんだよね…。

こっからは知識がない…。
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