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三章 設定を知る者

ゲーム通りにしているはずなのに…

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もうすぐ試験が始まる。
今回は失敗しないように試験勉強は教室に一人で始めた。

…始めても王子が現れることはなく攻略対象者の二人が現れ僕を取り合っていた。

この二人の好感度ばかりが上がって他の人が上がっているように思えない。
教師はあっちに取られて王子を取られるわけにはいかないのに、なかなか上がらない。

王子の好感度が上がらなければシークレットキャラも出てこないのに…。

試験勉強を頑張っても王子が現れることがなかった。
試験結果は六十三位…こんなに真面目にやってもあっちの主人公には勝てなかった…。

なんで?

不正してるって噂だけど卒業まで不正し続けるの?
…もしかして、その不正を暴くのが僕ってこと?
王子と一緒に不正を暴いて信頼度を高める?

もしかしてあいつの試験の不正を解決する為に王子と一緒の時間を過ごしながら二人だけの秘密を作ることで新密度をあげるの…か?

僕があいつの不正を暴かなきゃいけなかったんだ…。

もしかして教師と婚約したのも不正をさせるため?
脅迫とか色仕掛けで弱みを握ってやらせたんだ…。
だから…主人公の僕が動かなきゃいけなかったんだ。
傍観しちゃいけなかったんだ。
そうとなればあの人達を監視しないとっ。

探偵みたいなことは出来ないけど、主人公って問題を解決しつつ危険な目に遭いながらも攻略対象者に間一髪で助けてもらうって決まってるよね。
安全は約束されてるからあいつの不正を暴くのみ。
だけど試験の不正なんてどうやったら暴けるの?
脅迫現場を押さえるとか試験問題を渡しているところを目撃とかだよね?
なら、試験が終わったら不正は暴けないの?
またしても僕はやらかしていたんだ…。
今後は先回りしないと。

気合いをいれるも、なにも出来ないまま長期休暇に入ってしまい僕と王子の進展はなにもなく過ぎた…。

落ち込んだまま屋敷へ戻るとお父様は大層喜んでいた。
なにかと思えば僕に婚約の申し込みが二件来ていたらしい。
相手は「公爵家」と「侯爵家」と聞けばすぐに誰か予想出来た。
お父様はかなり喜んでいたけど僕からしたら、たったの二件だけ?だった。
あれだけ僕の良い噂が流れて光属性という特別な力が備わって文句の付けようのない可愛らしい顔を持つ僕に婚約希望者がたったの二人…。

「セドリックなら、高位貴族の愛人になれると思っていたが正妻になれるなんて凄いじゃないかっ」

お父様の言葉に耳を疑った。

え?僕って愛人候補だったの?
どんなに中身が良くても男爵は正妻ではなく愛人にしかなれないの?
まぁヒロインていうのは理不尽の中で戦うものだけど…悔しい。
あっちの主人公は何が起きても正妻って…本気の努力もしないで不正で幸せを掴むなんて、いつか罰を受けたらいい。

「それとな、王子の婚約披露パーティーに呼ばれた。明後日にはデザイナーが来るからなっ。」

王族のパーティーか…楽しみっ。
確かゲームではパーティーの最中王族に呼ばれるんだよね?
婚約についてだったり卒業後どうするのかとか…。
パーティーは主人公にとって大事なもの。
あっちの主人公に出し抜かれないようにしないと…。

パーティーの為に衣装をデザイナーと真剣に話していた。
王族のパーティーには誰もが衣装を新調するため腕の良いデザイナーは高位貴族で埋まり、かなりの高額になる。
男爵家である僕のところに直ぐに来て対応出来ると言う事がどういうことなのか理解していなかった。

そして、完成した衣装が送られた時には愕然とした。

色から形まで僕の望んだものとは違っている…。
これを着て王族のパーティーに参加すれば違った意味で目立ってしまう…。

貴方は本当にデザイナーなんですよね?
これが本当に良いと思っているの?

こんな恥ずかしい姿では参加できない…。
お父様とデザイナーの二人はかなり満足している様子で僕の感性が違うのかもしれない…我慢して着替え二人の前に現れれば頷いていた。
何とか耐えて部屋へ戻った時に使用人にその悩みを相談したが、そこで僕の知らない常識を知った。
男爵や子爵は王宮のパーティーでは着ることの出来る色が暗黙の了解で決まっているらしく、万が一高位貴族と色が被らない為の配慮だとか。

使用人の説明で色は納得した…形は?なんでこんなにダサイの?

「あのデザイナー様は…旦那様のご友人だそうです。」

「………。」

お父様とお母様の仲を疑ったことはないが…この世界では愛人は当たり前らしい。
…もしかしたら、あの人は愛人…愛人候補、初恋の相手、過去の恋人だったりするのかな?
それで仕事と称して単に彼に逢いたかっただけ?

それにしても…あんな衣装着たくない…。

部屋のクローゼットを見渡すも似たような衣装ばかりだった。
お母様はこの事知っているのかな?
なんか…知りたくないこと知っちゃったかも…。
衣裳問題は解決することなく日々が過ぎ僕が我慢するしかないと諦めた。
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