【完結】ハーレムルートには重要な手掛かりが隠されています

天冨七緒

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二章 ハーレムルート

贈り物には気を付けて

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何日かに一度、旦那様達が揃う時がある。

領地運営や辺境騎士、魔法省との繋がりなど各々忙しく全員が揃うのは一ヶ月に一度か二度…無い時もあるくらいなのでとても貴重だった。

その時は互いの近況報告をするようになっている。

領地の報告だったり、他国の動き、王都の話題、学園にいた時とは違い皆大人になったいた事に僕だけ焦りを感じた。
僕が話せることと言えば、赤ちゃん達の成長や皆の家族から頂いたプレゼントとお返しだったりの相談だった。
その中で以前アレックスのお義兄様アレクサンダー様から魔法の本を頂いたことを話した。
魔法について掛かれている本ではなく、本に魔法が掛かっていると話しどんなものか皆興味津々だった。

「あぁ、これは…」

「アレックス知ってるの?」

「これは有名なんですよ、発動したことがないって。」

「はい、アレクサンダー様も同じこと仰っていました。」

「この著者の本はどれも発動しないと有名なんです。もし発動したら面白い内容ばかりなんですけどね。」

「へぇ…そうなんだ。」

「それでどの本を頂いたんですか?」

「んと…僕に相応しいって…。」

頂いた本をアレックスに渡した。
中を確認し読み進めていくと「ふふっ」とアレックスが笑ったので気になってしまった。

「…読んでみますか?」

「はいっ」

面白い本なんだよね?気になる。

「どうぞ」

渡された本を指でなぞりながら声に出して読んでいた。
皆も気になるかな?って思って僕が代表して音読した。
内容は…。

「新婚のうちは盛り上がるも三ヶ月、三年と過ごすうちに次第にマンネリとなり夫婦生活に陰りが見えてくる。そうなった時に貸出に手を出したり愛人を作ったりする事が多々ある。」

確かに日本でも三のつく日には気を付けろって聞いたことがある。この世界でも同じようだった。
貸出とは、未婚の者を期間限定で子供を作るためだけに借りる。そこに愛はなく娼婦と違い必ず出産し親権を持つことは許されない。完全にお金で雇われ管理された者の事。運良く愛人になれる者はごく僅かで期待してはいけないと言われている。貸出になる者は訳あり貴族やお金のない容姿が整った平民で、そこに幸せはないと言われている。

そんなものに頼る前に試して欲しいと本には書いてあった。

「旦那を魅了する為には視覚から攻めるべき。普段とは違う格好で悩殺せよ。」

普段とは違う格好で…悩殺…。

「おっ、フィンコックだったらどんな服で悩殺してくれんだ?」

シリクレッチ様は楽しそうに聞いてくる。
なんかエッチな話で盛り上がる同級生みたいで、僕はそんな会話に入ったことがないから返事に困ってしまう。

「ぼ…僕は…ん…」

ダメ…全然想像がつかない。
悩殺…エッチな服って事だよね?
エッチって露出が高い服?女の人のエッチな服は…なんだろ…短いスカートに胸を強調したのかな?
想像力がないのか思い浮かばないよ。

「シャル、無理に考えなくても良い。」

「…うん」

ライが助けてくれた。

「シリクレッチも強要するな。」

「…悪かったよ。」

「ぅん」

しりくれっち様もこの関係に慣れてきたみたい。
皆の弟みたいで可愛い。

エッチな服かぁ…そんなの縁がなかったからよく分かんないなぁ。

この国に来ても学園の制服や普段着、後は使用人や騎士の制服しか見たことない。
この世界にエッチな本も映像もないし、そういう場所に縁の無い僕にはこの国の人達がどんな服に興奮するなんて想像もつかなかった。

あっ思い出したビックリしたのを見たことがある。

外国の女優さんで背中が大きく開かれ太ももの脇まで繋がり、編み込んだ紐で押さえられたセクシーなドレス…けど下着ってどうなってるんだろう?って思ったのを思い出してしまった。

エッチな服ってあんなドレスだったり露出の激しいやつの事だよね?

「…ふぇっ?」

「「「「「…えっ…?」」」」」

暖かい空気を感じ身体が雲に包まれた。
雲が晴れると僕の服は…

「…ん?…やぁーん観ないで…戻って戻ってぇえええ。」

僕は身体を抱きしめて隠すように座っていたソファに屈んだ。

雲が晴れた瞬間、僕は淫らな服を身に纏っていた。
今までの服は肌なんてほとんど露出していなかったのに、雲が晴れた瞬間上半身は胸だけを隠す布で谷間の部分が編み込まれていた。五人産んで大きくなった僕の胸を押し潰すようにピッタリと大きさが分かるような服で、ズボンを履いていたはずなのに今はとんでもなく短いスカートだった。両側がスリットのようで、そこも編み込んであった。ハッキリいってしまえば人を誘惑する、とんでもなくエッチな服だった。

こんな恥ずかしい格好を皆に観られたくないのに、身体を隠してくれる布が周囲には無かった。

パサッ

「へ?」

「大丈夫だ。」

ライが着ていた服を脱ぎ、僕の淫らな格好を隠してくれた。

「ライィ。」

助けを求めるように、優しいライに抱きついた。

「…うっ」

「これは…」

「すげぁな…」

「………」

「おぉー」

こんな服どうすれば良いの?

ライは抱きしめてもくれなければ視線をどこか遠くを観てる。

「ライ?」

「あっあぁ、ギノフォード先生どうしたら元に戻るんですか?」

「…ぁっはい、そうですね。本を失れ…ぃ…。」

アレックスは僕の膝の上にあった本を手に取ると動きを止めた。

「アレックス?」

「…いえっ」

アレックスは僕から顔を逸らして本を開いた。

「あっここですね。ルゥここを読んでください。」

指示された箇所を指でなぞりながら声に出して読めば、再び雲に包まれ僕の服が元に戻った。

「あっ…良かったぁ…」

布が大きい。

「…よかっ…たな。」

良かったなって言ってくれたのにライの寂しそうな顔は何で?

「うん、ライも服ありがとうっ」

「…これで…安心…ですね…。」

安心なのにアレックスの反応がおかしい…どうしたんだろう?

「うん、あっアレクサンダー様にお伝えした方がいいですよね?魔法の本はやっぱり魔法が使えたと…。」

「えぇ。ルゥの発見は、この著者の本全ての魔法が実行可能であると証明されるかもしれませんからね…」

「僕、役に立てました?」

「えぇ、とっても。」

「んふふ。」

「だが、あの服凄かったな。あんなの見たことねぇよ。ルマンの想像か?」

エドの言葉で、やはりこの世界にはあんなエッチな服は存在していなかったみたい。
寧ろ、服というより下着に近かったと思う。

多分だけどパンツのが面積大きい。

「えっ、違っ見たことがあるのっ」

「見たことが…。」

エド止めて、その信じられないって目で僕を見ないで。

「どこで見たんだ?」

シリクレッチ様が食いついてしまった。

「それは…その…」

前世だけど…シリクレッチ様には僕が前世の記憶があるの話してないよね?
言っても良いのかな?

「シャルマン彼は既に家族です。伝えておくべきですよ。」

僕が悩んでいることを察知してリックが背中を押してくれた。

「あっあのね…僕には別の記憶があるの…」

「別の記憶?」

初めて言うから信じられないよね。

「僕達は前世ではないかと思ってます。」

リックが補足してくれた。

「前世?」

それでもやっぱり受け入れづらいよね…。
前世の記憶があるなんて。

「…うん…あるの…。」

「…んであの服は前世で着てたのか?」

「なっ、着てないよっ着ている人を見たことがあるだけで僕はそんなっ。」

なんて事を言うんだ、僕が着るわけないのに…。
選ばれた人しか着れないよ…。

「ふぅん、もう着ないのか?」

「着ないよっ」

あんなエッチな服、僕にはハードルが高過ぎる。

「勿体ねぇ…」

シリクレッチ様の声は聞こえなかった事にした。

その後もあの危険な本はアレックスからアレクサンダー様にお返ししてと渡すも「一度貰ったもんを返すのは失礼じゃないのか」とシリクレッチ様に指摘された。

確かに貰ったものを返すのは失礼だし返されたら悲しいよね…。

「だけど、これは魔法の効果がないからって貰って…それにこの本に効力があることを知ったら研究?したいんじゃ?」

「分かりました。兄さんには聞いておきますので、今はルゥが保管しておいてください。」

「…んっ、それなら。」

僕が持っていても、読まなければ大変なことにはならないよね?
大切にしまっておかなきゃ。

僕が手元に残す発言をしたことで、ここにいる何人かがニヤけたのに気付かなかった…もしかしたら全員だったかも。
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