【完結】ハーレムルートには重要な手掛かりが隠されています

天冨七緒

文字の大きさ
上 下
350 / 414
二章 ハーレムルート

パーティー

しおりを挟む
一度パーティーを経験したとはいえ、今回で二度目。
馴れない僕は今とてつもなく緊張し、震える手を握りしめているとライの大きな手が重なった。

「緊張してんのか?」

「…ぅん」

「俺がいる。」

ライの言葉には魔法があり、見つめ合うと震えが次第に治まっていく…。

「俺もいるぞ。」

肩を引き寄せられエドの温もりを感じ「僕もいますよ」と目の前からリックに頬を撫でられた。

「俺のことも忘れんなよ?」

腰に両腕を回され背中にシリクレッチ様の存在があった。

皆は僕の髪と目の色のハンカチーフだったりブレスレットやピアス、ブローチをしていてエドなんて僕があげたあの小さな猫のお守りを胸に覗かせていた。僕の方は皆の色を着けたらごちゃごちゃしちゃうからって何もなかったのが残念でならない。

パーティーは平民の方達が時間前に会場に入り、それから貴族の入場を出迎える。爵位の低い貴族から順に入場するが、婚約者がいるものは婚約者と共に、いない者は一人で入場となる。
公爵家である僕は貴族の中で一番最後、四人に囲まれながらの登場となり当然だけどかなり目立ちながら入場した。

無事転ぶことなく緊張の中ホールに降り立ち、トリを務めるあの二人を出迎えた。

僕達の時よりも遥かに盛大な拍手の中二人は現れた。
誰よりも輝いて見える王子様と王子さまの瞳の色のブローチを胸に着けた婚約者だった。

二人は映画に出てくるように美しくて僕も目を奪われてしまった。

よくライブ会場でアイドルの人と目があったっていうのを僕も味わっていた。
婚約者をエスコートしている王子様と目があったように感じたがそんな事有るわけがないんだ。
僕…シャルマンと王子様に特別な関係はない。
王子様の魔力酔いで少し関わることはあったけど、それだけ…それ以上の関係はない。

王子の手首には今日もあのバングルがされていた。

学園長や王様の挨拶があり、その後王子様と婚約者二人のダンスが始まった。
僕の付け焼き刃のダンスとは違い、彼らのダンスは優雅で完璧で見ていて気持ち良かった。
終わると自然と拍手をしていた。
一組目のダンスが終わると今度は生徒全員の自由な時間になった。

「シャル、良いか?」

「…はい」

真剣に誘われ一気に顔が熱くなり照れてしまった。

ライの手に導かれ完全に身を委ねる。

あの日、目覚めた時に僕の目の前にいた人がライで良かった。
近くにいるのに目を合わせる事もなく、よく思われていない僕に優しくしてくれた人。
きっと、この人が居なかったら僕は今も一人だったかもしれない。
日本の常識が強い僕なので、この人だけの僕でいたかった…。
僕の全てを彼に捧げたかった…僕が獣人じゃなかったらと思うことは今でもある…けど、嫌なことばかりじゃなかった。獣人の体力がついて沢山ライのエッチに応えることが出来て嬉しかったのは本当だ。猫になってライの服の中で過ごすのは楽しかったし身体を洗ってもらったのも幸せな気分だった。
それにライとの赤ちゃんは僕にとって最高の授かり物だった。
この世界では子を産むことは難しく平等ではないが獣人の僕の繁殖能力はかなり高く、何人でも産めると言われた。人間の時には魔力の問題はなくとも体力の問題で二人目は危険な可能性もあると判断されていたらしい。なのでライの赤ちゃんを沢山産めるなら獣人になって良かった。

ダンスが終わった時、ホールを出ていないのにキスされたのは驚いた。
その瞬間周囲の時間が止まった…気がした…いや止まったのは僕だけだったかも…。

キスしちゃうともっとしたくなっちゃうのに…ライを誘うような視線を送った。

「続きは帰ってからな?」

「ぅん」

「私も良いですか?」

「えっ?先生?良いの?」

振り返ると先生が立っていた。

卒業パーティー会場には先生もいたが、それは大人の立場であって一緒にダンスが許されるのか疑問だった。

「勿論。」

「んふふ、お願いします。」

先生の手に添えて再びステップを踏んでいく。

魔法の家計に育ち真剣に取り組んでいた人にとって魔法に対して不真面目だった生徒の練習に付き合うなんてあまり気持ちの良いものではなかったに違いない。もしかしたら、僕が悪さをしないかの監視だったのかもしれない…けど僕は嬉しかった。
先生達も僕の事を遠巻きにして居たのにアレックスだけはちゃんと見てくれた。
何度も倒れて面倒な生徒だった筈なのに心配して側にいてくれた。
獣人になり不安で側にいた先生に依存して、あの時から僕は先生に頼ってばかりで甘えちゃってた。
獣人となり二番目の婚約者を受け入れることが出来たのはアレックスだったから…他の人では僕は二人目の婚約者を選ぶ事はなかったかもしれない。

ダンスはアレックスに誘導されいつの間にか終わり唇を重ねおでこを着け、そこからは僕が何度も触れるだけのキスを繰り返した。

「次は俺だよな?」

「ふふっうん」

そこにはエドがいた。

アレックスからエドの手に移り、エドの手は二人より少し強く距離も近かった。
たまにエッチに感じるのは僕の気の所為かな?
耳元で囁かれながら片方の手がお尻に移動し始めたのでペチンと叩いた。
今のうちに止めておかないと僕の方が止まらなくなっちゃうのを気付いていないんだ。
エッチな触れ方をしておきながら引いてしまい僕の身体の方が疼いて我慢できなくなるのに…。
エドは僕の悪い噂を知りつつもライのペアになった僕を認めてペア継続で悩んでた時には励ましてくれた。エドの解決方法はエッチな事が多いけど今の僕には合っていると思う。
日本にいた時、僕はエッチに凄く興味があって、でも怖くて何も出来なかった。
エドは強引に乗り越えてくれるので嬉しくもあり期待しているところもある。

エドは日本にいた時の僕の夢見た理想の彼氏だったと思う。

曲が終わり力強く抱きしめられ二人のキスとは違い、激しいキスとお尻を触られた。

「エドバルドッやり過ぎだっ。」

「分かったよ。後でなっ。」

「ぁんっ」

エドは僕のお尻の奥を刺激してから離れていった。

「全くあいつは…。」

「リック?」

「シャルマンもあまりそんな顔を僕ら以外に見せないで。」

「ん?」

「…踊ろっ」

「うんっ」

リックの手はあの時と変わらない。

僕を救ってくれた優しい手…。
始めの頃は僕の事を避けているんだと思った…けど本当はずっとライ達にも話せない事で悩んでいた。 
僕のフェロモンが彼を救ったのかもしれないけど、その所為でリックを鎖で繋いじゃったのかもしれないとずっと思ったいた。

リックはそれでいいって言っていたけど…。

「リック…」

「どうした?」

「リックは幸せ?」

「うん幸せだよ。」

「そっか…んふふ、良かった。」

曲が終われば背伸びをして僕からリックにキスを求めた。

「次は俺だろ?」

シリクレッチ様が現れた。

リックから離れる前に首元にキスをされ痕が着いたと分かる。
リックも意外に負けず嫌い?独占欲強いのかも…お返しに僕も首に痕を残した…結構見えるところに。

んふふ僕の独占欲。

「おいっ俺だろ?」

あっ、いつまでもリックとイチャイチャしてたら怒られた。

シリクレッチ様は出会いは最低だったけど、なんだか子供みたいで可愛く見えるんだよね。
赤ちゃん産んでから母性本能が目覚めたのか、胸に抱きついている顔が幸せそうで拒絶出来ない。
一番はアドルフだけど次にきっとシリクレッチ様が僕の母乳を知っていると思う。
こんなにも甘えてくれる人初めてで、僕も甘やかしたくなっちゃう。それにやっぱり猫好きに悪い人はいないと思うし、僕って単純だなって思うけど不良が雨の中猫を拾う定番のギャップは凄まじい。

「もう一曲するか?」

「ならキスはお預けだね?」

「えっダメなのか?」

「んふふ、何回もキスしちゃったら僕が止まらなくなっちゃう。」

「なら、パーティー抜けるか?」

「んふふ、それもいいかもねっ。」

シリクレッチ様に引っ張られ僕達は人々をすり抜けていた。
映画とかでよくある逃避行みたいで楽しくて、振り返るとライ達が追いかけてきているのが見えた。
二人で会場を抜け外の静寂に包まれ抱き合いキスをした。

「おいっ」

「ルゥ?」

「ルマン?」

「シャルマンっ」

見つかった。
しおりを挟む
感想 195

あなたにおすすめの小説

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

美形×平凡の子供の話

めちゅう
BL
 美形公爵アーノルドとその妻で平凡顔のエーリンの間に生まれた双子はエリック、エラと名付けられた。エリックはアーノルドに似た美形、エラはエーリンに似た平凡顔。平凡なエラに幸せはあるのか? ────────────────── お読みくださりありがとうございます。 お楽しみいただけましたら幸いです。

普段「はい」しか言わない僕は、そばに人がいると怖いのに、元マスターが迫ってきて弄ばれている

迷路を跳ぶ狐
BL
全105話*六月十一日に完結する予定です。 読んでいただき、エールやお気に入り、しおりなど、ありがとうございました(*≧∀≦*)  魔法の名手が生み出した失敗作と言われていた僕の処分は、ある日突然決まった。これから捨てられる城に置き去りにされるらしい。  ずっと前から廃棄処分は決まっていたし、殺されるかと思っていたのに、そうならなかったのはよかったんだけど、なぜか僕を嫌っていたはずのマスターまでその城に残っている。  それだけならよかったんだけど、ずっとついてくる。たまにちょっと怖い。  それだけならよかったんだけど、なんだか距離が近い気がする。  勘弁してほしい。  僕は、この人と話すのが、ものすごく怖いんだ。

[BL]憧れだった初恋相手と偶然再会したら、速攻で抱かれてしまった

ざびえる
BL
エリートリーマン×平凡リーマン モデル事務所で メンズモデルのマネージャーをしている牧野 亮(まきの りょう) 25才 中学時代の初恋相手 高瀬 優璃 (たかせ ゆうり)が 突然現れ、再会した初日に強引に抱かれてしまう。 昔、優璃に嫌われていたとばかり思っていた亮は優璃の本当の気持ちに気付いていき… 夏にピッタリな青春ラブストーリー💕

身代わりになって推しの思い出の中で永遠になりたいんです!

冨士原のもち
BL
桜舞う王立学院の入学式、ヤマトはカイユー王子を見てここが前世でやったゲームの世界だと気付く。ヤマトが一番好きなキャラであるカイユー王子は、ゲーム内では非業の死を遂げる。 「そうだ!カイユーを助けて死んだら、忘れられない恩人として永遠になれるんじゃないか?」 前世の死に際のせいで人間不信と恋愛不信を拗らせていたヤマトは、推しの心の中で永遠になるために身代わりになろうと決意した。しかし、カイユー王子はゲームの時の印象と違っていて…… 演技チャラ男攻め×美人人間不信受け ※最終的にはハッピーエンドです ※何かしら地雷のある方にはお勧めしません ※ムーンライトノベルズにも投稿しています

俺の親友がモテ過ぎて困る

くるむ
BL
☆完結済みです☆ 番外編として短い話を追加しました。 男子校なのに、当たり前のように毎日誰かに「好きだ」とか「付き合ってくれ」とか言われている俺の親友、結城陽翔(ゆうきはるひ) 中学の時も全く同じ状況で、女子からも男子からも追い掛け回されていたらしい。 一時は断るのも面倒くさくて、誰とも付き合っていなければそのままOKしていたらしいのだけど、それはそれでまた面倒くさくて仕方がなかったのだそうだ(ソリャソウダロ) ……と言う訳で、何を考えたのか陽翔の奴、俺に恋人のフリをしてくれと言う。 て、お前何考えてんの? 何しようとしてんの? ……てなわけで、俺は今日もこいつに振り回されています……。 美形策士×純情平凡♪

【完結】ぎゅって抱っこして

かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。 でも、頼れる者は誰もいない。 自分で頑張らなきゃ。 本気なら何でもできるはず。 でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。

王子様から逃げられない!

白兪
BL
目を覚ますとBLゲームの主人公になっていた恭弥。この世界が受け入れられず、何とかして元の世界に戻りたいと考えるようになる。ゲームをクリアすれば元の世界に戻れるのでは…?そう思い立つが、思わぬ障壁が立ち塞がる。

処理中です...