上 下
292 / 414
二章 ハーレムルート

猫の人形

しおりを挟む
ダンスパーティーが終わり皆が定期的に泊まりに来ながら長期休暇を過ごした。

特別な訪問と言えば、フランクリン様とアデルバード様もリックやアレックスと共に何回か我が家にやって来て、学園では味わえない楽しさを満喫していた。
アドルフも沢山の家族に囲まれてなんだか幸せそうだったけど、皆が帰って行くと心細いのか泣いてしまう事が多くなりだした。
僕がそう感じたのかもしれないけど、何かしてあげたくた猫の姿でベビーベッドにいることが多くなった。
尻尾を握られたり口に含まれたりとたまに緊張が走ったけど、泣き止んでくれるならと尻尾を差し出した。

赤ちゃんってなんでこんなに可愛いんだろう?
大好きな人の子供だから?自分で産んだから?
分かんないけど可愛いっ。

もうすぐ学園が始まる、そうなるとアドルフの側にいる時間が減ってしまう。
乳母や騎士の方が常に一緒だから心配はないんだけど…何かしてあげたい。

僕の事忘れないで欲しい…。

何か…何か僕がしてあげられること…。
…赤ちゃんには人形とか必要だよね?
猫の人形とかあげたら喜んでくれるかな?

黒猫の人形…僕に似たやつ…。

スタっとベビーベッドから降り、素晴らしく着地を決めた事に満足しつつ鏡の前に移動した。

僕の人形をアドルフに渡したら喜んでくれるかな?
人形って簡単に作れるかな?…作って…みよっかな…。
よしっ、そうと決まればお裁縫だっ。

んふふ。

あれから部屋に戻って人形のデザインを考え、何枚も何枚も描いてこれだってのが出来たっ。
それからは使用人に黒い布を貰いチョキチョキ、チクチク、綿を詰め詰めしてさらにチクチクした。
僕なりに頑張って猫の人形が出来たっ。

アドルフ喜んでくれるかな?

早く反応がみたくて急いでアドルフの部屋へ向かった。

「アドルフ、プレゼントだよ?」

僕の渾身の猫の人形をアドルフに見せた。

「………」

あれ?
なんの反応も無し?

ゆっくり手を伸ばし猫の尻尾をニギニギし始めた。
それだけで作ってよかったと思え、嬉しくっていつまでも眺めていられた。

「ここにいたのか?」

声だけでライだとすぐに分かり、振り向けばライとエドとリックがいた。

「アドルフは元気か?」

「うん、んふふ」

人形の尻尾をにぎにぎしてるのを見ると微笑んでしまう。

「おっ…なんだ…この…人形?」

ん?エド、人形に気付いちゃった?んふふ可愛いでしょ?

「……これは…もしかして…シャルマンが作ったの?」

流石リックよく分かるねっ。

「うんっ…んふふ」

ん?なんで皆そんな変な顔してるの?

「…ん゛…ね…ねこ…なんだよな?」

「ん?猫だよ?」

ライどうしたの?
なんで疑問系なの?どっからどうみても猫だよ?

僕とそっくりな猫の人形だよ?

「ぷっはっ…ね…ねこ?…これ猫なのか?」

…エドって本当に失礼じゃない?
猫にしか見えないでしょっ。

「どう言うこと?」

「いやっうん…とても個性的な猫だね。」

リックはちゃんと誉めてくれたっ。

「アドルフも気に入ってるな…その…ねこ?」

「ライにもそう見える?良かった。」

頑張って立体的に作ったからねっ。

「…ねこ……(なんだよな?)」

「ねこ……(って本人は言ってるからな)」

「ふふ……(二人ともシャルマンが猫って言ってるんだから受け入れて)」

「……(いやっ、あれは猫には…絵本に出てくる悪魔みたいたぞ?)」

「……(ルマン的にはリアルに作ったのかもしれないが、平面を分厚くしただけだろ?しかもなんで仁王立ちの姿なんだ?)」
 
「……(色々思うことはあるけど一生懸命作ったんだろうから、猫って言った後に?マークは付けないで。)」

「……(分かった)」

「……(なんて言えば良いんだよ?あの…猫っぽいやつを)」

「……(色々あるでしょっ)」

「シャル…世界に一つの猫の人形だなっ。」

「「……(おぉー上手い言い方)」」

「うん、んふふ。」

「……(次は俺だよな?えっと…)愛嬌があるねこ?だな。」

「……(良いんじゃないか?)」

「……(エドバルド、?マークは頑張って捨てろ)」

「頑張って考えたのっふふふ」

その後は三人一緒に猫の人形に戯れるアドルフを眺めた。

三人に誉めて貰った猫の人形をお仕事から帰ってきたお兄様にも見せたら「芸術家のような感性だな」って誉めてくれた。

んふふ、僕には芸術家の才能があったみたい。

お父様もお母様も「可愛いっ」て特にお母様は大はしゃぎだった。

数日後アレックスが来た時も「愛着がわくね」と言ってくれた。

んふふ。

これで僕が授業を受けている間もきっと寂しくないよね?
アドルフの側にいてあげてね?僕の猫。
しおりを挟む
感想 195

あなたにおすすめの小説

総受けルート確定のBLゲーの主人公に転生してしまったんだけど、ここからソロエンドを迎えるにはどうすればいい?

寺一(テライチ)
BL
──妹よ。にいちゃんは、これから五人の男に抱かれるかもしれません。 ユズイはシスコン気味なことを除けばごくふつうの男子高校生。 ある日、熱をだした妹にかわって彼女が予約したゲームを店まで取りにいくことに。 その帰り道、ユズイは階段から足を踏みはずして命を落としてしまう。 そこに現れた女神さまは「あなたはこんなにはやく死ぬはずではなかった、お詫びに好きな条件で転生させてあげます」と言う。 それに「チート転生がしてみたい」と答えるユズイ。 女神さまは喜んで願いを叶えてくれた……ただしBLゲーの世界で。 BLゲーでのチート。それはとにかく攻略対象の好感度がバグレベルで上がっていくということ。 このままではなにもしなくても総受けルートが確定してしまう! 男にモテても仕方ないとユズイはソロエンドを目指すが、チートを望んだ代償は大きくて……!? 溺愛&執着されまくりの学園ラブコメです。

【完結】かなしい蝶と煌炎の獅子 〜不幸体質少年が史上最高の王に守られる話〜

倉橋 玲
BL
**完結!** スパダリ国王陛下×訳あり不幸体質少年。剣と魔法の世界で繰り広げられる、一風変わった厨二全開王道ファンタジーBL。 金の国の若き刺青師、天ヶ谷鏡哉は、ある事件をきっかけに、グランデル王国の国王陛下に見初められてしまう。愛情に臆病な少年が国王陛下に溺愛される様子と、様々な国家を巻き込んだ世界の存亡に関わる陰謀とをミックスした、本格ファンタジー×BL。 従来のBL小説の枠を越え、ストーリーに重きを置いた新しいBLです。がっつりとしたBLが読みたい方には不向きですが、緻密に練られた(※当社比)ストーリーの中に垣間見えるBL要素がお好きな方には、自信を持ってオススメできます。 宣伝動画を制作いたしました。なかなかの出来ですので、よろしければご覧ください! https://www.youtube.com/watch?v=IYNZQmQJ0bE&feature=youtu.be ※この作品は他サイトでも公開されています。

侯爵令息は婚約者の王太子を弟に奪われました。

克全
BL
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。

すべてを奪われた英雄は、

さいはて旅行社
BL
アスア王国の英雄ザット・ノーレンは仲間たちにすべてを奪われた。 隣国の神聖国グルシアの魔物大量発生でダンジョンに潜りラスボスの魔物も討伐できたが、そこで仲間に裏切られ黒い短剣で刺されてしまう。 それでも生き延びてダンジョンから生還したザット・ノーレンは神聖国グルシアで、王子と呼ばれる少年とその世話役のヴィンセントに出会う。 すべてを奪われた英雄が、自分や仲間だった者、これから出会う人々に向き合っていく物語。

第十王子は天然侍従には敵わない。

きっせつ
BL
「婚約破棄させて頂きます。」 学園の卒業パーティーで始まった九人の令嬢による兄王子達の断罪を頭が痛くなる思いで第十王子ツェーンは見ていた。突如、その断罪により九人の王子が失脚し、ツェーンは王太子へと位が引き上げになったが……。どうしても王になりたくない王子とそんな王子を慕うド天然ワンコな侍従の偽装婚約から始まる勘違いとすれ違い(考え方の)のボーイズラブコメディ…の予定。※R 15。本番なし。

隣人、イケメン俳優につき

タタミ
BL
イラストレーターの清永一太はある日、隣部屋の怒鳴り合いに気付く。清永が隣部屋を訪ねると、そこでは人気俳優の杉崎久遠が男に暴行されていて──?

【完結】『ルカ』

瀬川香夜子
BL
―――目が覚めた時、自分の中は空っぽだった。 倒れていたところを一人の老人に拾われ、目覚めた時には記憶を無くしていた。 クロと名付けられ、親切な老人―ソニーの家に置いて貰うことに。しかし、記憶は一向に戻る気配を見せない。 そんなある日、クロを知る青年が現れ……? 貴族の青年×記憶喪失の青年です。 ※自サイトでも掲載しています。 2021年6月28日 本編完結

あと一度だけでもいいから君に会いたい

藤雪たすく
BL
異世界に転生し、冒険者ギルドの雑用係として働き始めてかれこれ10年ほど経つけれど……この世界のご飯は素材を生かしすぎている。 いまだ食事に馴染めず米が恋しすぎてしまった為、とある冒険者さんの事が気になって仕方がなくなってしまった。 もう一度あの人に会いたい。あと一度でもあの人と会いたい。 ※他サイト投稿済み作品を改題、修正したものになります

処理中です...