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二章 ハーレムルート

異世界に行けば昭和の遊びが役に立つ

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「んっん?」

「起きましたか?」

僕の腕の中で眠り続けていた天使が目覚めた。

瞬きを繰り返しなから、状況を整理しようとしている表情が可愛いい。

「ずっと抱き締めてくれていたんでしゅか?」

「ふふ、アデルバード様を離したくなかったから…苦しかったですか?」

「…ぅんん、んふふ。フィンコックしゃまは僕の事大しゅきでしゅね。」

「うん、大好きだよ。」

「ふふ、僕もフィンコックしゃまの事大しゅきでしゅよ。」

「わぁ嬉しいっんふふ…ん?」

反省したとは言え嫉妬から複雑な表情をした隣の人の存在が気になった。

「アデルバード様?アレッサンドロ様は?」

「叔父様でしゅか?叔父様も大しゅきでしゅよ。」

「そうですか。」

アレックスは先ほどの事もあり気まずそうだった。

「…叔父様は僕の事しゅきでしゅか?」

「…えぇ、もちろん…好きですよ。」

「んふふ」

やっぱりアデルバード様は天使だ。

「叔父様、僕と手繋ぎたいでしゅか?」

「…えぇ」

「いいでしゅよ。」

僕達は悟った。
アデルバード様には敵わないことを。
拒否する気を起こさせない提案を受け入れ、アレックスはアデルバード様と手を繋いでいた。

そんな三人で夕食の為食堂に向かうと「誰か家族か分からないな」と言われてしまった。お義兄様やルパード様はアデルバード様を抱き締めたり抱き上げたりはしないのかな?アデルバード様はきっとスキンシップ大好きなように感じるのに…。

人様の家庭の事情に踏みいるのは良くないよね…。

夕食は和やかで緊張することは一切なくなった。
明日の朝には僕はフィンコック邸に帰るのが悲しくて考えたくなかった。
アデルバード様は悲しんでくれるかな?数日で忘れられたりしたら淋しすぎる。
食後はアレックスとアデルバード様の三人でソファに座り絵本を読んだ。
今日はお昼寝をしてしまったのでアデルバード様はまだ眠くはないみたい。

なにか無いかな?

と探していたときに、ふとプレゼントの包み紙が目に入った。昨日のお茶会の時に帰り際プレゼントを貰ったとかで、先程中身を確認したらしい。

「あの包み紙を貰っても良いですか?」

「ん?いいでしゅよ?」

アデルバード様もアレックスも僕が何をするのか不思議なようだった。

僕はまず紙を正方形に整えるところから始めた。
まぁ、この時点で察しの良い方は気付いたであろう僕が何を作っているのか。
正方形にした紙を三角形に折って更に三角形に折る。パカッと開いて小さな正方形に折る…反対側も折る…ここで重要なのが後を付けること。ガイドラインとなる両脇を内側に折ってから鋭い嘴のように開く…反対側も同じように折る…ここで上下を間違うと翼がペターンとなってしまうので注意が必要。間違えても命に関わることではないのでやり直せば良いんだけど、アデルバート様には綺麗なものを見せてあげたくて丁寧に折った。頭と尻尾になる部分を内側に折り細くする。全体が細長くなった所で上下半分に折りページを捲るように次のページへ、そして頭を作り羽を開けば鶴の完成だぁ。

「出来たっ」

僕一人盛り上がってしまい二人の反応が予想と違った。

「「………」」

「あれ?えっと…鳥…のつもりなんだけど…だめ?」

「…しゅ…しゅごいです…フィンコックしゃまはしゅごいです…鳥が出来ました。」

「…紙が鳥になった…」

良かった…日本伝統の遊びが通じた。

時代や学校によるけど僕が通っていた小学校では平和への祈りってことで、学年ごとに色分けされた千羽鶴を折るって事をしたから今でも折り方覚えてるんだ。

「んふふ」

僕が折り方を考えたわけではないのに自慢気に見せびらかしてしまった。

「はい、どうぞ」

「僕に?」

「貰っていただけますか?」

「はいっ…うわぁ…しゅごい…」

そんなに喜んで貰えるなんて嬉しいっ。

その後は皆で折り紙勉強会になり、鶴を折り続けた。
集中して折るのでアデルバート様も折り終わった頃には眠気に襲われていた。
ベッドへの移動はアレックスがしてくれて、布団に入れば眠ってしまっていた。

…可愛すぎて困る。

「私たちも部屋に戻りますか?」

「はいっ」 


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本日もありがとうございました。
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