上 下
267 / 414
二章 ハーレムルート

誘い方が恐ろしい

しおりを挟む
「フィンコックしゃま?」

お風呂上がりのポカポカな格好で談話室まで天使が迎えに来てくれた。

「アデルバード様ちゃんと暖まりましたか?」

「はいっ」

「なら、お部屋に行きましょうか?風邪を引いたら大変です。」

「フィンコックしゃまは僕のお部屋にお泊まりでしゅか?」

「…っん…僕は…別のお部屋かな?」

ビックリした。
アレックスの予言のような質問をされた。

「僕のお部屋に泊まって良いでしゅよ?」

予言だった。

「…ん~僕はまだ少し皆とお話ししなきゃいけないから…。」

「なら、フィンコックしゃま…」

「ん?」

屈んで耳を寄せると、物凄い誘惑があった。

「こっそり僕のベッドに来ても良いでしゅよ。」

この子…魔性だ。
危険すぎる。
天使じゃなかったの?

「…あっありがとっ」

としか言えなかった。

ちらっと後ろのアレックスを確認すると、笑顔で怒っていた。
願わくば、婚約者になりたい宣言だけはしないで貰いたい。

手を繋いだままアデルバード様の部屋についた。
子供部屋なのに子供らしいものが見受けられず、少し冷たい印象があった。
僕達ぐらいの年齢なら分かるが、アデルバード様はまだ五歳なのに…。

そういう教育なのかな?

ベッドまで移動してアデルバード様は自然と布団に潜っていった。

「フィンコックしゃまも。」

布団を少し捲って招いてくれる姿に拒否できない…。
僕はお風呂も洗浄魔法もまだなので入るのを躊躇っているが、もし清潔な状態ならばこの誘惑に勝てることはなかったと思う。

「お布団に入ったら眠っちゃって皆を待たせちゃうからここで。」

ごめんねアデルバード様。
捲られた布団を戻し、その上に手をついてアデルバード様の頭を撫でた。

「フィンコックしゃま、僕早く大きくなりましゅね。」

「んふふ、焦らなくて良いんですよ?」

「早く大きくなってフィンコックしゃまを守ってあげましゅ。」

「本物の勇者様ですね。」

「んふー僕はフィンコックしゃまの勇者だよ。」

「僕だけの?」

「はいっ」

可愛い。

「僕だけのなんて贅沢ですね。」

「嬉しい?」

「とっても嬉しいです。」

「んふふ」

「さぁ、もうそろそろ眠りましょ?」

「…フィンコックしゃまはしゃみしくないでしゅか?手…繋ぎましょうか?」

言いながら小さな手が差し出された。

誘い方がスマート。
そんなことをされてしまえば興奮して眠れないよ?

「お願いします。」

「はいっ」

僕の方に横向きになりながら僕の片手を小さな両手で包むように繋いでいた。
祈りにも似た体勢で目を閉じられると、その姿はマリア様にしかみえないよ。
アデルバード様が眠りにつき寝顔を見ていると僕も癒され瞼が落ちてしまう。

眠っちゃダメなのに…。

「ルゥ…ルゥ…」

誰かに呼ばれてるけど、起きたくない。

「全く、遅いと思い見に来てみれば。」

暖かい手が引き抜かれ、身体が宙に浮いた。

「んにゃぁん」

温もりに抱き付いて今度は失くさないように力を込め。
この香り大好き、鼻を擦り付けて幸せな夢に浸っていた。
柔らかい何かに下ろされるも、この香りは離したくない。

「やん…」

離れちゃダメと夢の中では必死に伝えていた。
だけど唇が塞がれ「離れちゃダメ」と言う言葉を伝えるよりキスに夢中になっていた。

「私の服を着ていても幼い子供には通用しませんね。」

誰かがなにかいっているけど、眠くて意味が理解出来なかった。
それでもキスはしていたかった。

「むにゅんにゃぁん…キス…止めちゃダメ…」

再び唇が重なり舌を絡めた。

次第に瞼が開き、思考がはっきりとしてくる。

僕にエッチなキスをしているのはアレックスだった。

唇から移動し首を舐められる。

「アレックス…んふぅんん」

気持ちいい声が出ちゃう。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

公爵家の五男坊はあきらめない

三矢由巳
BL
ローテンエルデ王国のレームブルック公爵の妾腹の五男グスタフは公爵領で領民と交流し、気ままに日々を過ごしていた。 生母と生き別れ、父に放任されて育った彼は誰にも期待なんかしない、将来のことはあきらめていると乳兄弟のエルンストに語っていた。 冬至の祭の夜に暴漢に襲われ二人の運命は急変する。 負傷し意識のないエルンストの枕元でグスタフは叫ぶ。 「俺はおまえなしでは生きていけないんだ」 都では次の王位をめぐる政争が繰り広げられていた。 知らぬ間に巻き込まれていたことを知るグスタフ。 生き延びるため、グスタフはエルンストとともに都へ向かう。 あきらめたら待つのは死のみ。

侯爵令息セドリックの憂鬱な日

めちゅう
BL
 第二王子の婚約者候補侯爵令息セドリック・グランツはある日王子の婚約者が決定した事を聞いてしまう。しかし先に王子からお呼びがかかったのはもう一人の候補だった。候補落ちを確信し泣き腫らした次の日は憂鬱な気分で幕を開ける——— ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 初投稿で拙い文章ですが楽しんでいただけますと幸いです。

王命で第二王子と婚姻だそうです(王子目線追加)

かのこkanoko
BL
第二王子と婚姻せよ。 はい? 自分、末端貴族の冴えない魔法使いですが? しかも、男なんですが? BL初挑戦! ヌルイです。 王子目線追加しました。 沢山の方に読んでいただき、感謝します!! 6月3日、BL部門日間1位になりました。 ありがとうございます!!!

【完結】婚約破棄したのに幼馴染の執着がちょっと尋常じゃなかった。

天城
BL
子供の頃、天使のように可愛かった第三王子のハロルド。しかし今は令嬢達に熱い視線を向けられる美青年に成長していた。 成績優秀、眉目秀麗、騎士団の演習では負けなしの完璧な王子の姿が今のハロルドの現実だった。 まだ少女のように可愛かったころに求婚され、婚約した幼馴染のギルバートに申し訳なくなったハロルドは、婚約破棄を決意する。 黒髪黒目の無口な幼馴染(攻め)×金髪青瞳美形第三王子(受け)。前後編の2話完結。番外編を不定期更新中。

魔法学園の悪役令息ー替え玉を務めさせていただきます

オカメ颯記
BL
田舎の王国出身のランドルフ・コンラートは、小さいころに自分を養子に出した実家に呼び戻される。行方不明になった兄弟の身代わりとなって、魔道学園に通ってほしいというのだ。 魔法なんて全く使えない抗議したものの、丸め込まれたランドルフはデリン大公家の公子ローレンスとして学園に復学することになる。無口でおとなしいという触れ込みの兄弟は、学園では悪役令息としてわがままにふるまっていた。顔も名前も知らない知人たちに囲まれて、因縁をつけられたり、王族を殴り倒したり。同室の相棒には偽物であることをすぐに看破されてしまうし、どうやって学園生活をおくればいいのか。混乱の中で、何の情報もないまま、王子たちの勢力争いに巻き込まれていく。

婚約者に会いに行ったらば

龍の御寮さん
BL
王都で暮らす婚約者レオンのもとへと会いに行ったミシェル。 そこで見たのは、レオンをお父さんと呼ぶ子供と仲良さそうに並ぶ女性の姿。 ショックでその場を逃げ出したミシェルは―― 何とか弁解しようするレオンとなぜか記憶を失ったミシェル。 そこには何やら事件も絡んできて? 傷つけられたミシェルが幸せになるまでのお話です。

【完結】薄幸文官志望は嘘をつく

七咲陸
BL
サシャ=ジルヴァールは伯爵家の長男として産まれるが、紫の瞳のせいで両親に疎まれ、弟からも蔑まれる日々を送っていた。 忌々しい紫眼と言う両親に幼い頃からサシャに魔道具の眼鏡を強要する。認識阻害がかかったメガネをかけている間は、サシャの顔や瞳、髪色までまるで別人だった。 学園に入学しても、サシャはあらぬ噂をされてどこにも居場所がない毎日。そんな中でもサシャのことを好きだと言ってくれたクラークと言う茶色の瞳を持つ騎士学生に惹かれ、お付き合いをする事に。 しかし、クラークにキスをせがまれ恥ずかしくて逃げ出したサシャは、アーヴィン=イブリックという翠眼を持つ騎士学生にぶつかってしまい、メガネが外れてしまったーーー… 認識阻害魔道具メガネのせいで2人の騎士の間で別人を演じることになった文官学生の恋の話。 全17話 2/28 番外編を更新しました

偽物の僕は本物にはなれない。

15
BL
「僕は君を好きだけど、君は僕じゃない人が好きなんだね」 ネガティブ主人公。最後は分岐ルート有りのハピエン。

処理中です...