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二章 ハーレムルート

思い込み…勘違い…何も分かっていなかったのは俺の方 エイダン グレモンド

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「フィンコック様は獣人だ。」

父さんの口から聞くと、知っていても衝撃が強かった。

「「………。」」

「始業式に受けた獣人検査で倒れたのは演技でもなく、フィンコック様の身体が獣人に変化した為に起きた事態だ。目立ちたい等のくだらない理由からではない。」

「………。」

父さんは先程俺が一方的な思い込みでフィンコック様を罵倒したことを静かに憤慨していた。
噂だけを聞いて見極めることなく、恰も事実だと受け取りフィンコック様に失礼な態度を取り続けていた俺の過ちだ。

「なら、どうして…」

父さんはあの時はっきりと教えてくれなかった?
事前に聞いていれば俺だって…。

「百年ぶりの獣人だ、なんの対策も取らずに公表だけしてしまえばどうなると思う?」

百年ぶり…そうだ獣人は珍しいなんてものではなく伝説に近い存在だ。
実際目にした人間は、この世にはいない。
そうなると、興味本意や物珍しさ金目の匂いで不埒な輩が近付いてくるに違いない。
そうなればフィンコック様は…。

「危険がっ…及ぶ…。」

「あぁ。フィンコック様は公爵家、どの家門より狙われる可能性は高いのに獣人という価値が加われば貴族でさえ犯罪に手を染めるものも多発するだろう。そうなる前に地盤を固める必要がある。なので多重婚を選択し我が家も名乗りを挙げた。」

「…だったら、なおさら俺達にじゃなく王族に…獣人だと話せば婚約だって…」

高位貴族が複数集まるより王族に囲われた方が安全なようにも…。

「フィンコック様が望めば叶うだろうな。」

そうだ、獣人と公表してしまえば婚約者になることは簡単なはず。
王族だって百年ぶりの獣人の存在を易々手放そうとはしないだろうし、運命というべきかフィンコック様と王子は年齢も一緒であり王子の婚約者として家柄も申し分ない。

誰もが認める婚約者に成れる、王子を追いかけ続けたあの人なら…。

「……なら…なんで…」

「なんの先入観無く冷静に考えてみなさい。フィンコック様はエドバルトを利用しているように見えたか?」

「…それ…は…。」

見えなかった。
兄さんに抱かれるフィンコック様は幸せそうに見えた。

「王族も始業式については報告を受けているだろう。何度か登城を求めていたそうだがフィンコック様の体調不良や様々なことが重なり先伸ばしにされている。王族も今のところは了察しているが、いつ強制するからはわからない。登城しその後フィンコック様に何を望むのかも…。それでもフィンコック様はエドバルトと婚約をし続けている。」

「………。」

「エイダンには、それらは全て王子と婚約するための演技に見えるか?」

「……ぃえ…」

もし本当に婚約したければ、こんな回りくどいことをせずとも出来たはず…。
それをしないと言うことは、フィンコック様は王子との婚約を望んでいない?
王子ではなく、兄さんを選んだということ…か?

「俺…」

「先に伝えいなかったことは私の失態だ。だがエイダンはエドバルトを心配していたことも事実、私としては嬉しく思う。今後エドバルトには色んな障害が発生するだろうし学園でも良くない噂は蔓延している。フィンコック様には多くの人間が注目している。現に噂の裏で多くの貴族がフィンコック様に婚約を申し込んでいる。」

「えっ?」

婚約を申し込んでいる?

「そう言うことだ。全ての人間がとは言わないが、敢えて悪評を流しフィンコック様に近付き婚約者に入り込もうと画策している貴族は存在している。」

「…まさか…そんな…。」

「エイダンはのそのまっすぐな性格は私も好ましく思うが、全ての人間が潔癖で裏表がないわけではない。周囲の人間に惑わされず真実を見極める力を養って欲しい。」

「…はぃ、すみません。」

「謝罪はフィンコック様にしなさい。」

「はぃ」
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