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二章 ハーレムルート

信じがたい事実 エイダン グレモンド

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残された談話室。

父さんもなんで二人を行かせたんだっ。
二人きりになんてしたら兄さんが余計洗脳されてしまう。

「…冷静になったか?」

「父さんは本当に兄さんとあの人が婚約していいのかよ?」

「婚約は決まったことだ。」

「今なら解消できるだろ?」

「エイダンは何故そこまで婚約解消させたがるんだ?」

「そんなの兄さんが不幸になるからに決まってるからだ。父さん達はいいのかよ相手があんな人で…俺達は公爵家に利用されるだけって本当は分かってるだろっ。」

こんなこと父さんに言いたくない…けど今言わないと後悔する。

「私には二人は思いあっているように見えるが。」

騙されないでくれよ。

「あんなもん演技だろ?父さん確りしてくれよ。」

「演技か…。」

「そうだよ、あの人は注目されたいだけなんだよ。始業式の検査だって大袈裟に倒れたし…あんな人が獣人な訳がない。そんな人に騙されて婚約してしまったって噂されていい笑いもんだよ。」

「学園ではそんな風に噂されてるのか?」

「あぁ、そうだよっ。」

「フィンコック様は口下手で誤解されやすい人なのかもしれないな…。」

なんであの人の味方なんてするんだよっ。
 
「嘘だろ…なに言ってんだよっ誤解じゃなくで事実だろ?」

「エイダン、少し冷静になってフィンコック様と話してみなさい。」

「話さなくても分かるよ、あの人は学園でも有名人で下級貴族にも当たりがキツイ貴族の中の貴族って言われてる。自分の相手は王族しかあり得ないって考えの持ち主なのは学園に通ってる奴らなら皆が知ってることだ。」

「それは直接聞いたのか?」
 
「…それは…違うけど…ペアについて苦情だしているのは見たことがある。」

「先入観無く直接フィンコック様と話してみなさい、判断するのはその後でも遅くないだろ?」

「…はぃ。」

なんで俺が悪いみたいになってるんだよ…。

俺は渋々兄さんの部屋に向かった…。
あんな人と話したくないが噂を実証するには本人と直接対決するしかない。
部屋に着き中の様子が気になり、ノックをする前に耳を付け中の二人を伺った。
…驚くことに、二人は既にヤっていた…あっ、えーっと婚約者の甘い時間に突入していた。
艶かしい声と兄さんの優しいのに意地悪さを含んだ声が聞こえる。

兄弟のそんな行為は気まずい…。

だがこれではっきりした。
あの人は兄さんとのエッチが気に入って婚約したんだ。

「尻尾と耳、出ちまったな。」

ん?今なんて?

兄さんの言葉に思考が停止した。
尻尾と耳って言ったのか?
まさか…そんなはず…俺の聞き間違えだやよな?
もしかして、動物になりきってしているとか?
なんか、そんなプレイを好む人間もいるって聞いたがある…。
兄さんはそんな特殊性癖の人だったのか?
兄弟でそんな話しないから知らなかったが…兄さんってそういう人だったの?

「にゃぁん」

フィンコック様もなりきってる…。

もしかして特殊性癖で結ばれた二人とか?
フィンコック様はとても慣れているのか、鳴き声はまるで本物のように聞こえる。
これは興味本意ではなく、事実確認だと言い聞かせた。
どんな状況下で二人が何をしているのか確認するため扉を少し開け中を覗き見た。
覗いてもソファと兄さんしか見えず肝心のフィンコック様が見えない
背伸びをしてみたり、徐々に扉を開いたがフィンコック様が見えない。

「そんなに気持ち良かったか?」

「にゃんん…にゃんんっにゃっあぁんん」

我慢できずフラフラと部屋に入り、二人に近づきフィンコック様の姿を確認すると耳が黒い毛に覆われていた。

「あぁん…エド…動いてぇ…んっん」

「あぁ」

「………耳だ…」

呆然と何も考ず、思ったことを口にしていた。

これは本物なのか?
二人で作ったのか?

「にゃっ?」

突然の俺の存在を見つけても、フィンコック様は猫に成りきっていた。

もしかして、この性癖の為にフィンコック様はペアに問題が続いたのか?

隠れることもなく堂々と二人の前で考え出す俺の存在に気付き、フィンコック様は慌てふためき出した。

俺は今、見てはいけないフィンコック様の性的な秘密を目撃してしまったのか?

「…ゃ…やぁあん…エドォオ」

兄さんも俺に気付き体勢を起こし俺と向き合うように座り、フィンコック様の趣味というか性癖を見せつけられた。
毛むくじゃらの耳に、尾てい骨辺りにくっついている黒い尻尾。
尻尾は器用に動いていた。

やはりフィンコック様はそういった趣味の持ち主で、猫に成りたい願望がかなり強いのか耳や尻尾に対して精巧に作られているようだ。

「耳…尻尾…。」

身に付けているだけなのに、まるで本当に生えているように見える。

「耳…尻尾」

余りにも本物のようで「耳…尻尾」と繰り返していた。
どうなっているのか好奇心が押さえられず、フィンコック様の耳に触れていた。
何かを被せたり、くっ付けている様子はなく本物のフィンコック様の耳に思えた。
耳がこんなにも精巧であると、もうひとつの尻尾も触って確認せずにはいられなかった。
滑な肌に触れ、背骨を辿って尾てい骨にある尻尾に触れた。
尻尾はくっついているというより「生えている」だった。
付け根を何度も確認しても繋ぎ目が見えることはなく、引っ張ってもお尻がくいっと動いた。
強力な何かでくっ付けているのか、強く引っ張っても取れる気配がなかった。

「はぁんっんあぁんんっあんだめぇんっ強くしないでぇ」

フィンコック様は尻尾を取られたくないのか、婀娜めいた声で抗議してきた。

本当にそういう趣味なんだ…。

「エイダン分かったろ?ルマンは獣人だ。」

「はぃ…へっ?…獣…人?」

今、兄さんは獣人って言ったの?

「あぁ、耳も尻尾も本物だ。」

「ほんもの?」

何が?

「何度も触って分かったろ?」

「ほんもの…獣人…」

「………」

「え゛っ獣゛人゛?」

獣人?獣人?獣人?

「ルマンは獣人だ。」

「…ぁっ…ぁっ…ぁっ」

俺は突然声の出し方を忘れてしまった。

獣人?獣人って、あの獣人?
人と動物が奇跡的に融合したという、百年も前に絶滅したと言われている…あの獣人?
フィンコック様が?
なら、この尻尾も耳も本物?
俺、ぐいぐいって容赦なく引っ張っちゃってたけど…。

「はっはぁんっんはぁっん…エド…」

「エイダン、そろそろ放せ。獣人にとって耳も尻尾も性感帯だ。」

「えっ?あっはい…」

「放せ」と言われ放したが、まだ思考が戻ってきていないのか「性感帯」と言われるも意味が理解できていなかった。

「これで充分分かったろ?」

「…はぃ」

分かっていなかったが「はい」と言うしか出来なかった。

「なら、そろそろ出てけ。俺の婚約者、今裸なんだよ。」

婚約者…裸…。
婚約者…裸…。
婚約者…裸…。

えっ?婚約者が裸と言ったのか?
再度確かめるように、兄さんの上に座るフィンコック様を眺めだ。
妖美な後ろ姿に心を奪われ、目を離すことが出来ずに何秒間も見続けていた。

「…えっ?うわぁっはいっすみませんっ」

状況を理解した途端に、俺は何ていう現場に踏み込んでしまったんだと頭が真っ白になった。
確かにフィンコック様は兄さんの言う通り何一つ身に付けておらず、光輝くような白い肌を晒していた。
俺は急いで部屋を出て談話室へと走り、その勢いのまま部屋へ突撃した。
ソファで寛いでいた両親と弟が驚いた顔で俺をみた。

「どうしたの?そんなに慌てて。」

「あっいや…」

弟のエヴァンに尋ねられても、まともに答えられなかった。
そりゃそうだろ?兄さんとフィンコック様のエッチを目撃して来たなんて説明できない。

…それに、フィンコック様の体質も…。

「どうした?」

父さんは知っていたのか?フィンコック様の事…。
俺は怪訝な表情で父さんを睨み…見つめ続けた。

「……父さんは…フィンコック様の事知ってたのか?」

「なんの事だ?」

「フィンコック様の身体…獣人だって事…。」

「…あぁ」

「じゃあなんで先に教えてくれなかったんだっ。」

「えっ?フィンコック様って獣人なんですか?」

俺達の会話にエヴァンも驚き、声を荒げて入ってきた。
獣人なんて聞いたら、そんな反応になってしまうのは仕方がない。
今はエヴァンではなく父さんだ。

「あぁ、お前達には言っていなかったな。」

父さんは知っていて敢えて俺達に言わなかったようだ。    
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