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二章 ハーレムルート
お兄様の腕の中は安心する
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お兄様に肩を抱かれながら僕の部屋を目指した。
能天気な僕は突き刺すような皆の視線に気付く事がなく、満面な笑顔をお兄様に向けていた。
当然のように僕の部屋のソファに皆が座っていた。
僕の隣にはお兄様がいて、向かいにはリック、ライ、エドの順番だった。
お兄様と座る位置がいつもより近いようにも感じたけど、嬉しくて頭をお兄様の身体の方へ傾けていた。
「シャルは見ての通り人肌を恋しがり、一人の時間はあまり好きではないようだ。」
「あっ…僕平気だよっ。」
お兄様に心配された?僕一人でも頑張れるよっ。
「誰かしらシャルの側にいて欲しい。それは守るという意味でもある。」
お兄様の言葉で僕の言葉は消え去り、三人も先程とは違い真剣な表情に変わった。
「三人は嫡男で後継者なのだろう?」
「「「はい」」」
「忙しいからといって、シャルを蔑ろにされては困る。」
「そんなことは決してない。」
「俺もしません。」
「僕も誓えます。」
三人はお兄様に宣言してくれた。
その光景だけですごく嬉しかった。
「実際問題、当主になるとは簡単なことじゃない。仕事で何日も屋敷を離れることもあれば、思うようにいかずシャルを突き放す事もあるかもしれない。」
「「「………」」」
「その時は夫同士で密に連絡を取り合ってほしい。俺がシャルを独り占めし嫉妬してしまうのは分かるが、自身が側にいられない悔しさから誰かにとられるくらいならシャルを一人に~なんて考えは棄ててくれ。シャルには伝えていなかったが、婚約志願の手紙は既に五十通を越えている。」
「えっ?」
真剣な話をするお兄様を疑うわけではないが、僕に婚約志願?
しかも五十通も?そんなの信じられないっ。
「本当だ。バルデモア様とグレモンド様との婚約が決まる前から急に増えだしたな。」
「………」
「今は手順を踏んでいるが、暴走する奴が現れないとは言いきれない。なので、極力シャルを一人きりにはしないでくれ。それは結婚してからもだ。何処に嫁ぐのかは分からないが、使用人も人間で何かしらの弱味もあるだろう。そんな人間が現れるかどうかは分からないが注意はしてくれ。シャルは能天気で流されやすい。」
「えっ?」
最後の悪口?
「素直で可愛い、人を信じやすく誘拐するのも簡単だろう。」
あれ?
言葉が変わった。
それでもなんだか僕は単純で騙されやすいって聞こえる…。
「なので、必ず誰かがシャルの側にいて欲しいというのが俺の希望だ。昼はともかく夜は必ず。だからと言って、その為には後継者を辞退するなんて考えは辞めてくれ。権力がなければ守れないこともある。俺としては当主の座に着きながらシャルの側にいてくれ。もし誰か一人でも都合がつかない場合は俺に連絡してくれ、必ずシャルを守る。」
お兄様…。
「はい、必ず当主となりシャルを守ります。」
「俺も約束します。」
「はい、必ず守ることを誓います。」
「…シャルを頼む。」
お兄様は三人に頭を下げた。
その光景に勝手に流れる涙を止めることが出来なかった。
「シャル、そんな泣き虫でどうする?アドルフの母親だろ?」
「う゛~はい゛ぃ」
頭をあげたお兄様に泣き止むように促されたけど、簡単に涙は止まってくれなかった。
大きいお兄様の身体に抱き締められポンポンと幼い子供にするようにあやされた。
まるでアドルフみたいに。
こんなに大きくなっても僕はまだまだ子供だった。
本当にアドルフのように落ち着くまで泣いていたら眠くなり、お兄様の腕の中で眠っていた。
「にゃむん…ん…んゃ?」
「…起きたか?」
目覚めるとお兄様の手が額にあった。
「んふふ…うん…起きたぁ…あれ?皆は?」
「いるよ。」
起き上がると、皆がソファから立ち上がり歩いてくる。
僕が寝てしまいベッドに移動してくれたみたい。
眠ってしまったのは三十分程らしく起き上がりソファで皆の会話に混じった。
話していると夕食の時間となり、食堂へ着くと大人数でなんだかパーティーみたいで楽しかった。
お正月やお盆に親戚の人が集まったような…って僕の婚約者の家族だから、皆家族になるんだった。
楽しい時間はあっという間で、その後は部屋でまったりの時間になる。
それでも眠る時は、約束通り僕はお兄様の部屋に移動した。
婚約者の誰かを選ぶより、公平だと信じている。
お兄様のベッドに入るのも軽く抱き締められることも抵抗なく受け入れ、安心して眠ることが出来る。
お兄様が誰かと婚約・結婚したらこんなこと出来ないんだよね?
淋しいな…。
お兄様にそんな人が出来ないことを祈るような人間にはなっちゃだめだと自分に言い聞かせた。
言い聞かせないと願ってしまいそうだったから…。
お兄様の相手の人が素敵な人で僕とも家族のようになってくれたら良いなぁ。
理想はお母様みたいな人でお願いします。
僕の身体の上にあったお兄様の大きな腕を取り、向き合う体勢から自ら後ろから抱き締められているような体勢に変え、手を恋人のように繋いだ。
お兄様の温もりを背中に感じながら眠りについた。
能天気な僕は突き刺すような皆の視線に気付く事がなく、満面な笑顔をお兄様に向けていた。
当然のように僕の部屋のソファに皆が座っていた。
僕の隣にはお兄様がいて、向かいにはリック、ライ、エドの順番だった。
お兄様と座る位置がいつもより近いようにも感じたけど、嬉しくて頭をお兄様の身体の方へ傾けていた。
「シャルは見ての通り人肌を恋しがり、一人の時間はあまり好きではないようだ。」
「あっ…僕平気だよっ。」
お兄様に心配された?僕一人でも頑張れるよっ。
「誰かしらシャルの側にいて欲しい。それは守るという意味でもある。」
お兄様の言葉で僕の言葉は消え去り、三人も先程とは違い真剣な表情に変わった。
「三人は嫡男で後継者なのだろう?」
「「「はい」」」
「忙しいからといって、シャルを蔑ろにされては困る。」
「そんなことは決してない。」
「俺もしません。」
「僕も誓えます。」
三人はお兄様に宣言してくれた。
その光景だけですごく嬉しかった。
「実際問題、当主になるとは簡単なことじゃない。仕事で何日も屋敷を離れることもあれば、思うようにいかずシャルを突き放す事もあるかもしれない。」
「「「………」」」
「その時は夫同士で密に連絡を取り合ってほしい。俺がシャルを独り占めし嫉妬してしまうのは分かるが、自身が側にいられない悔しさから誰かにとられるくらいならシャルを一人に~なんて考えは棄ててくれ。シャルには伝えていなかったが、婚約志願の手紙は既に五十通を越えている。」
「えっ?」
真剣な話をするお兄様を疑うわけではないが、僕に婚約志願?
しかも五十通も?そんなの信じられないっ。
「本当だ。バルデモア様とグレモンド様との婚約が決まる前から急に増えだしたな。」
「………」
「今は手順を踏んでいるが、暴走する奴が現れないとは言いきれない。なので、極力シャルを一人きりにはしないでくれ。それは結婚してからもだ。何処に嫁ぐのかは分からないが、使用人も人間で何かしらの弱味もあるだろう。そんな人間が現れるかどうかは分からないが注意はしてくれ。シャルは能天気で流されやすい。」
「えっ?」
最後の悪口?
「素直で可愛い、人を信じやすく誘拐するのも簡単だろう。」
あれ?
言葉が変わった。
それでもなんだか僕は単純で騙されやすいって聞こえる…。
「なので、必ず誰かがシャルの側にいて欲しいというのが俺の希望だ。昼はともかく夜は必ず。だからと言って、その為には後継者を辞退するなんて考えは辞めてくれ。権力がなければ守れないこともある。俺としては当主の座に着きながらシャルの側にいてくれ。もし誰か一人でも都合がつかない場合は俺に連絡してくれ、必ずシャルを守る。」
お兄様…。
「はい、必ず当主となりシャルを守ります。」
「俺も約束します。」
「はい、必ず守ることを誓います。」
「…シャルを頼む。」
お兄様は三人に頭を下げた。
その光景に勝手に流れる涙を止めることが出来なかった。
「シャル、そんな泣き虫でどうする?アドルフの母親だろ?」
「う゛~はい゛ぃ」
頭をあげたお兄様に泣き止むように促されたけど、簡単に涙は止まってくれなかった。
大きいお兄様の身体に抱き締められポンポンと幼い子供にするようにあやされた。
まるでアドルフみたいに。
こんなに大きくなっても僕はまだまだ子供だった。
本当にアドルフのように落ち着くまで泣いていたら眠くなり、お兄様の腕の中で眠っていた。
「にゃむん…ん…んゃ?」
「…起きたか?」
目覚めるとお兄様の手が額にあった。
「んふふ…うん…起きたぁ…あれ?皆は?」
「いるよ。」
起き上がると、皆がソファから立ち上がり歩いてくる。
僕が寝てしまいベッドに移動してくれたみたい。
眠ってしまったのは三十分程らしく起き上がりソファで皆の会話に混じった。
話していると夕食の時間となり、食堂へ着くと大人数でなんだかパーティーみたいで楽しかった。
お正月やお盆に親戚の人が集まったような…って僕の婚約者の家族だから、皆家族になるんだった。
楽しい時間はあっという間で、その後は部屋でまったりの時間になる。
それでも眠る時は、約束通り僕はお兄様の部屋に移動した。
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お兄様のベッドに入るのも軽く抱き締められることも抵抗なく受け入れ、安心して眠ることが出来る。
お兄様が誰かと婚約・結婚したらこんなこと出来ないんだよね?
淋しいな…。
お兄様にそんな人が出来ないことを祈るような人間にはなっちゃだめだと自分に言い聞かせた。
言い聞かせないと願ってしまいそうだったから…。
お兄様の相手の人が素敵な人で僕とも家族のようになってくれたら良いなぁ。
理想はお母様みたいな人でお願いします。
僕の身体の上にあったお兄様の大きな腕を取り、向き合う体勢から自ら後ろから抱き締められているような体勢に変え、手を恋人のように繋いだ。
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