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二章 ハーレムルート

怪盗唇泥棒

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その日からライがずっと側にいてくれた。

エッチは出来ないけど常に身体が触れ唇を掠め取っていた。
この期間に僕はさらっと唇を盗むのが得意になってしまった。

名付けるなら、怪盗唇泥棒…恥ずかしいネーミング…。

だめ浮かれすぎて可笑しくなっちゃってる。
ライと一日中一緒に居ることが出来て幸せ過ぎる。
折角学園復帰出来たのに、僕は再び学園を長期間休むことになってしまった。
僕が魔力を欲して鈍くなるとライが魔力を流してくれて、ライが魔力切れを起こすと僕が介抱するのを繰り返した。
お兄様やお母様、お父様から魔力を貰った時は空だったので大分時間と魔力を必要としたが二回目以降は定期的に魔力を貰っていたので大量に必要とすることはなかった。
それにライはお腹の子の父なので一切の拒絶が無かったので、余すこと無く魔力を吸収していた。
それでも、たまにお兄様やお母様達にも魔力を貰うことはあった。
異世界で子供を産むって大変で、僕は皆から貰ってばかりだ。

こんな厄介なのに、どうして獣人は望まれているんだろ?

魔力も無く力が強いわけでもない僕にとっては、以前の僕のが良かったと思う…。
少量でも魔法が使えたし…魔法…使いたいと今でも思う…。

魔力を欲しがるということは、この子は魔法が使えるんだよね?そうだといいな。

そんな思いを抱きながら、お腹を擦った。
お腹が熱くなり返事を貰った気がして嬉しく、僕の子供は順調だと思う。
報せを受け辺境にいるサンチェスター伯爵夫妻もお見舞いに来てくれた。
婚約が決まった時に挨拶で対面した時以来だ。

二人は僕の早すぎる妊娠をとても喜んでくれた。

ライのお父様はライにそっくりで、未来のライに会ってるみたいでドキドキしちゃう。
僕があからさまに見惚れてしまい、二人きりになったライにちょっぴり意地悪された。
強引なキスに服の上から胸を摘ままれ噛まれたりと痛みを与えられたが、欲求不満だったのか痛みを気持ちいいと捉えてしまった自分が怖かった。

僕はそっちの趣味はない…はず…きっと…多分…ねっ。

あんなお仕置きのようにされたのに、ライのお父様を見るとときめいちゃうのを止められなかった。
多分、ライにエッチなお仕置きされちゃうって期待もあったのかも…。
妊娠してから側で触れてはいたものの、エッチが出来ない辛さを経験していた。
後ろから抱きしめられながらお腹に魔力を貰うのが好きだが、僕の身体はエッチなライを求めてしまっていた。
僕がエッチな事を考える度にお腹の子がエッチになっちゃったらどうしようと密かに心配するようになった。
だけど、ライの大きな身体に包まれると邪な気持ちが薄れていき浄化?されてしまう。
僅かな接触の方がエッチな気分になるみたい。

六日が経った頃からお腹が少し膨らんで熱が引かなくなりだす。
魔力を貰った直後は熱が上がり次第に引いていくのに対して、今は魔力を貰ってから大分経つというのに熱が籠ったままだった。

「ラ…ィ…」

「シャル?シャル…シャルッ」

あれ?
僕眠っちゃってるの?
頭は起きてるのに身体が重い…。
どうしちゃったの?
お腹が温かい、それに凄い勢いでぐるぐるしてる。
なんだろう…。
気を失いそうになる…。
どのくらいの時間かは分からなかったけど瞼を開けるとライだけでなくお母様とお兄様が居た。
お父様は朝から領地に向かいこの場には居なかった。

「出産が近いです。」

お医者様の言葉に驚いた。
おかしいな…僕の出産予定日は二・三日後と聞いていたし体調の変化もなかったから順調なんだと思ってた。
ライとイチャつく事ばかり考えていて油断していたのかもしれない。

早産って事?僕の赤ちゃん大丈夫?

いつの間にかベッドに横になっていた。
清潔な布を下半身に被されズボンとパンツを脱がされる。
お医者様の指示でライがしてくれていた。
僕がちゃんと出来れば良いのに、身体を起こすことさえ出来ず唸ってばかりいた。
そんな僕にお兄様が側で手を握ってくれた。
布の中に潜ったライにより膝を立たされ広げられる。
良く分からないけど、僕のモノとお尻の間が裂けそこから産まれるらしい。
お腹の熱いのがゆっくり下腹部へ移動していくのが分かる。
少し迷子になっているのか、臍下でぐるぐるし始めた。

「ん゛ん゛ーん゛っんっはっんん゛」

もうすぐ産まれるというのが本能で分かる。

「ゆっくり深呼吸して。」

お医者様に言われ、荒く浅い呼吸をしていたことを知る。
意識してゆっくり呼吸することを心がけると、お兄様が一緒に呼吸してくれた。
お兄様を見つめながら呼吸していくと、身体から余計な力が抜けていくのが分かった。
出口を見つけたのか赤ちゃんが移動していく。

「ん゛ん゛ぁああ゛あ゛あ゛」

熱が放出され身体から体温が無くなったような感覚で、少し寂しいと感じたが布の中からライが淡く光るモノを抱きしめて現れた。
ベッドに横になっている僕にはまだ光だけで人間の姿は見えなかった。
近づいてくるライに気付きお兄様の手がするりと抜け離れて行き、代わりに光を抱きしめたライが側まで来てしゃがみ込み僕の目線の高さに赤ちゃんを会わせてくれた。
元気に泣く、ブルーアッシュの髪の赤ちゃんだった。

「赤ちゃん…僕とライの?」

「あぁ、俺達の子だ。」

「へへへっ」

ちゃんとした笑顔を見せたいのに、上手く顔が作れない。

「ライの髪色…綺麗。」

指で優しく頬を撫で小さな手に触れると、きゅっと握る仕草に涙が溢れた。

「産まれてきてくれてありがとう。」

赤ちゃんをいつまでも眺めていられる気分だった。

「シャル良く頑張ったな。」

「ぅん」

ライの瞳もなんだか潤んでいるように見えた。
…良かった、この人を好きになって。

「少し休まれた方が良いでしょう。」

お医者様の言葉で皆が僕の側に来て一言交わしてから部屋を後にしていく。
ライは赤ちゃんをお母様に預けて少しの間僕達二人だけでいてくれた。

「疲れたろ?シャルが眠るまで側にいるから安心しろ。」

「ぁりがとぅ…」

出産は体力がいると聞いたことはあったがここまでとは予想できず、眠って良いという言葉が催眠のように眠りに落ちていった。
優しく頭を撫でてくれる手に幸せを感じながら意識を失った。

そうだ…眠る前にキスして欲しかったなぁぁぁ…。



ーーーーーーー
お付き合いくださりありがとうございます。
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