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二章 ハーレムルート
全部僕が悪いのに
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お父様から魔力を受け取り、次第に楽になりだすと途端に睡魔に襲われる。
皆に魔力を貰うだけ貰って眠っちゃうなんて自分勝手過ぎるのに睡魔に抗えなかった。
「お父様ぁ…ん…にゃん」
眠っちゃった。
目覚めた時には沢山の人が僕の周囲を囲んでいた。
…これは…一体どういう状況でしょうか?
「シャル」
え?
どうしてここに?
「ライ?」
「心配した。」
「えっえっえっえっえっ?」
言葉を忘れたように「えっ」しか出てこなかった。
「シャルの体調について話があると報せを受けて急いで来たんだ。大丈夫か?」
「…ぅん、今は大分楽になった。」
「そうか、良かった。」
周囲を見渡すと家族とお医者様、ライにアレックスの姿もあった。
僕は起き上がろと身を起こすとライが身体を支えてくれた。
「大丈夫か?」
「…うん」
僕は今がどんな状況なのかお父様に視線を送った。
「容態は落ち着いたみたいだな?なら二人に話しても良いか?」
「…はぃ」
僕達の会話や雰囲気で只事ではないと察した二人から緊張が伝わってくる。
…これから話すことで二人との関係が崩れるのが怖い。
側に居るライの服を握りしめていた。
お願い…僕を捨てないで…。
「今朝シャルマンが体調不良を訴えて医師に観てもらった結果……。」
お父様は普段僕をシャルと呼ぶが、こういう状況ではシャルマンと呼んだ。
それだけで気持ちが引き締まった。
重々しい雰囲気でお父様はたっぷりと焦らしながら話を進めていく。
二人は早く診断名を知りたいという不安の中で、少し身体が前のめりになっているように見えた。
「シャルは……妊娠していた。」
「「………」」
お父様は溜めに溜め、事実を告げた。
僕の容態を聞く前の二人の頭の中には色んな病気を思い浮かべていただろう。
治らないような不治の病とか…。
二人は僕の病気が何なのか心配なように、僕は二人が僕の赤ちゃんを受け入れてくれるのか心配だった。
「………っ」
勢い良く振り向くライに驚いて硬直してしまった。
なんて言われるのか…。
ライを見つめる僕の表情はきっと誰が観ても情けないものだったと思う。
頬から伝わるライの手の温もりに安心してしまう。
頬に気を取られていたらライがとても近くにいて唇が触れていた。
ライを信じていなかった訳じゃない…ただ不安で怖かったので、僕は簡単にキスに夢中になっていた。
「んん゛んっ」
お父様の咳払いで部屋には二人きりではなくアレックスに家族と更にはお医者様が居たのを思い出した。
は…恥ずかしい…。
僕はキスに夢中になりすぎて、いつの間にかライの首に腕を回していた。
皆の視線から逃れたくて布団を引き寄せ顔を隠してしまう。
「シャルによれば父親はライアン様だと話したがそれは確かか?」
「はい、俺です。シャルが学園を出る直前まで一緒にいました。」
「では、なぜ洗浄魔法をしなかった?」
「それは…」
僕の過ちの所為でライが悪いように責められてしまった。
「僕なの、お父様っ僕がしないでって我が儘を言ったんです。ライは悪くありません。ごめんなさいお父様、僕が安易に考えていた所為で大事に…ライは悪くないです。」
僕はお父様に必死に訴えた。
「シャル…」
「全ては俺の責任です。シャルには魔法が使えないとわかっていたのに、しませんでした。シャルの身体を一番に考えるべきでした。」
お父様の言葉を遮るようにライが告げるも、自らを悪者にしているように聞こえた。
「…ライの所為じゃ…」
ないのに…。
ライは洗浄魔法を掛けようとしていた…けど、僕が逃げた。
ライから逃げるように馬車に乗ったのは僕だ。
誰が悪いかと尋ねられれば誰が観ても僕なのに…。
どうしてライが責められちゃうの?
僕が悪いことしたなら僕を叱ってほしい…。
「ライは悪くないのに…」
涙が溢れ布団に染みをつくってしまった。
「シャル、私たちは彼を責めている訳じゃない。事実を確認しているだけだ。」
「…はぃ」
「ライアン様、シャルは妊娠している。お腹の子はライアン様で間違いないと言うことが判った。シャルはその事で怯えている、君から別れを告げられるのではと…」
「なっ…俺は別れたりしませんっ…シャルなんでそんな事を?」
「…ぁっ…あっ…そのっ…僕…。」
あっとうしよう…ほんの一瞬でも疑ってしまったと言われたらライは…。
「ライアン様、あまりシャルを責めないでくれ。妊娠ともなれば情緒不安定になるものなんだ。今まで思ったことの無い感情が生まれたり疑心暗鬼になるもので、学生の身でありながら妊娠ともなれば心の負担は計り知れない。」
「…すまん。」
お母様がフォローしてくれたのは嬉しいが、再びライが悪者になってしまった。
「うんん、ライごめんなさい。全部僕の我が儘がいけなかったのに…。」
「シャルの所為じゃない、それに俺は嬉しいよ。今シャルのお腹には俺の子が居るんだろ?」
「うん」
「俺が守るから、シャルもお腹の子も。」
「…ぅん」
ライの言葉に涙が…。
妊娠すると涙もろくなるのかな…。
ライの言葉や支えてくれる腕の強さに不安は消え心が満たされていく。
「学園には私から報告しておきます。」
言葉の主に視線を送ればそこにはライと共に来ていたであろうアレックスが居た。
「アレックス…」
「安心してあなたは出産に備えてください。」
「……はぃ」
優しく笑うアレックス…。
アレックスは今どんな気持ちなんだろうか…。
僕は皆に我が儘を言い自分の事しか考えておらず、皆の子供が欲しいと告げながらライの子供を身籠った。
この場でアレックスはどんな気持ち?なんて聞けない。
アレックスの優しい表情もなんだか胸を締め付けられた。
僕は皆を傷付けてることしかしてない…。
「大丈夫ですよ。始めての事で不安かもしれませんが、私も出来る限りの事はします。側に居ますから安心してください。」
「…はぃ」
アレックスの赤ちゃんが欲しいと言ったのは嘘じゃない。
皆と居ると赤ちゃん欲しくなっちゃう。
獣人だから?
「ライアン様とギノフォード先生に伝えておかないといけないことがあります。」
お父様の声に現実に戻った。
「シャルマンは獣人です、魔力がありません。」
「「はい」」
「それが今回シャルマンの体調不良の原因でした。」
「「…?」」
「お腹の子は魔力を欲し、シャルマンには魔力がない。魔力の無いシャルマンから無理に魔力を得ようとした結果シャルマンの体調不良を引き起こしました。」
「…どうやって治療を?」
「私達家族の魔力を流し続けました。」
「………」
「魔力は家族と子供の親のみなら拒絶無く受け入れるようです。」
「俺ですね…」
「えぇ、ですのでこれから出産までライアン様にはシャルマンの側にいて頂きたい。」
「もちろんです。」
ライの力強い言葉に安堵した。
皆に魔力を貰うだけ貰って眠っちゃうなんて自分勝手過ぎるのに睡魔に抗えなかった。
「お父様ぁ…ん…にゃん」
眠っちゃった。
目覚めた時には沢山の人が僕の周囲を囲んでいた。
…これは…一体どういう状況でしょうか?
「シャル」
え?
どうしてここに?
「ライ?」
「心配した。」
「えっえっえっえっえっ?」
言葉を忘れたように「えっ」しか出てこなかった。
「シャルの体調について話があると報せを受けて急いで来たんだ。大丈夫か?」
「…ぅん、今は大分楽になった。」
「そうか、良かった。」
周囲を見渡すと家族とお医者様、ライにアレックスの姿もあった。
僕は起き上がろと身を起こすとライが身体を支えてくれた。
「大丈夫か?」
「…うん」
僕は今がどんな状況なのかお父様に視線を送った。
「容態は落ち着いたみたいだな?なら二人に話しても良いか?」
「…はぃ」
僕達の会話や雰囲気で只事ではないと察した二人から緊張が伝わってくる。
…これから話すことで二人との関係が崩れるのが怖い。
側に居るライの服を握りしめていた。
お願い…僕を捨てないで…。
「今朝シャルマンが体調不良を訴えて医師に観てもらった結果……。」
お父様は普段僕をシャルと呼ぶが、こういう状況ではシャルマンと呼んだ。
それだけで気持ちが引き締まった。
重々しい雰囲気でお父様はたっぷりと焦らしながら話を進めていく。
二人は早く診断名を知りたいという不安の中で、少し身体が前のめりになっているように見えた。
「シャルは……妊娠していた。」
「「………」」
お父様は溜めに溜め、事実を告げた。
僕の容態を聞く前の二人の頭の中には色んな病気を思い浮かべていただろう。
治らないような不治の病とか…。
二人は僕の病気が何なのか心配なように、僕は二人が僕の赤ちゃんを受け入れてくれるのか心配だった。
「………っ」
勢い良く振り向くライに驚いて硬直してしまった。
なんて言われるのか…。
ライを見つめる僕の表情はきっと誰が観ても情けないものだったと思う。
頬から伝わるライの手の温もりに安心してしまう。
頬に気を取られていたらライがとても近くにいて唇が触れていた。
ライを信じていなかった訳じゃない…ただ不安で怖かったので、僕は簡単にキスに夢中になっていた。
「んん゛んっ」
お父様の咳払いで部屋には二人きりではなくアレックスに家族と更にはお医者様が居たのを思い出した。
は…恥ずかしい…。
僕はキスに夢中になりすぎて、いつの間にかライの首に腕を回していた。
皆の視線から逃れたくて布団を引き寄せ顔を隠してしまう。
「シャルによれば父親はライアン様だと話したがそれは確かか?」
「はい、俺です。シャルが学園を出る直前まで一緒にいました。」
「では、なぜ洗浄魔法をしなかった?」
「それは…」
僕の過ちの所為でライが悪いように責められてしまった。
「僕なの、お父様っ僕がしないでって我が儘を言ったんです。ライは悪くありません。ごめんなさいお父様、僕が安易に考えていた所為で大事に…ライは悪くないです。」
僕はお父様に必死に訴えた。
「シャル…」
「全ては俺の責任です。シャルには魔法が使えないとわかっていたのに、しませんでした。シャルの身体を一番に考えるべきでした。」
お父様の言葉を遮るようにライが告げるも、自らを悪者にしているように聞こえた。
「…ライの所為じゃ…」
ないのに…。
ライは洗浄魔法を掛けようとしていた…けど、僕が逃げた。
ライから逃げるように馬車に乗ったのは僕だ。
誰が悪いかと尋ねられれば誰が観ても僕なのに…。
どうしてライが責められちゃうの?
僕が悪いことしたなら僕を叱ってほしい…。
「ライは悪くないのに…」
涙が溢れ布団に染みをつくってしまった。
「シャル、私たちは彼を責めている訳じゃない。事実を確認しているだけだ。」
「…はぃ」
「ライアン様、シャルは妊娠している。お腹の子はライアン様で間違いないと言うことが判った。シャルはその事で怯えている、君から別れを告げられるのではと…」
「なっ…俺は別れたりしませんっ…シャルなんでそんな事を?」
「…ぁっ…あっ…そのっ…僕…。」
あっとうしよう…ほんの一瞬でも疑ってしまったと言われたらライは…。
「ライアン様、あまりシャルを責めないでくれ。妊娠ともなれば情緒不安定になるものなんだ。今まで思ったことの無い感情が生まれたり疑心暗鬼になるもので、学生の身でありながら妊娠ともなれば心の負担は計り知れない。」
「…すまん。」
お母様がフォローしてくれたのは嬉しいが、再びライが悪者になってしまった。
「うんん、ライごめんなさい。全部僕の我が儘がいけなかったのに…。」
「シャルの所為じゃない、それに俺は嬉しいよ。今シャルのお腹には俺の子が居るんだろ?」
「うん」
「俺が守るから、シャルもお腹の子も。」
「…ぅん」
ライの言葉に涙が…。
妊娠すると涙もろくなるのかな…。
ライの言葉や支えてくれる腕の強さに不安は消え心が満たされていく。
「学園には私から報告しておきます。」
言葉の主に視線を送ればそこにはライと共に来ていたであろうアレックスが居た。
「アレックス…」
「安心してあなたは出産に備えてください。」
「……はぃ」
優しく笑うアレックス…。
アレックスは今どんな気持ちなんだろうか…。
僕は皆に我が儘を言い自分の事しか考えておらず、皆の子供が欲しいと告げながらライの子供を身籠った。
この場でアレックスはどんな気持ち?なんて聞けない。
アレックスの優しい表情もなんだか胸を締め付けられた。
僕は皆を傷付けてることしかしてない…。
「大丈夫ですよ。始めての事で不安かもしれませんが、私も出来る限りの事はします。側に居ますから安心してください。」
「…はぃ」
アレックスの赤ちゃんが欲しいと言ったのは嘘じゃない。
皆と居ると赤ちゃん欲しくなっちゃう。
獣人だから?
「ライアン様とギノフォード先生に伝えておかないといけないことがあります。」
お父様の声に現実に戻った。
「シャルマンは獣人です、魔力がありません。」
「「はい」」
「それが今回シャルマンの体調不良の原因でした。」
「「…?」」
「お腹の子は魔力を欲し、シャルマンには魔力がない。魔力の無いシャルマンから無理に魔力を得ようとした結果シャルマンの体調不良を引き起こしました。」
「…どうやって治療を?」
「私達家族の魔力を流し続けました。」
「………」
「魔力は家族と子供の親のみなら拒絶無く受け入れるようです。」
「俺ですね…」
「えぇ、ですのでこれから出産までライアン様にはシャルマンの側にいて頂きたい。」
「もちろんです。」
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