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二章 ハーレムルート

ごかい…にゃん

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目覚める前からなんだか体調が悪かった。

「ん゛ーん゛ーん゛ー」

「シャルどうした?具合悪いのか?」

「ん゛ーお腹…」

「お腹痛いのか?医者を呼ぼう。」

お腹が熱いのか押さえ付けられているような圧迫感、初めて感じる苦しさだった。

「お兄様…お兄様…ん゛ー…お兄様…」

部屋を出ていってしまったお兄様を朦朧としながら呼んでいた。

「…ル……ル…シャル…シャル?大丈夫か?」

「…ふぇ…お…様?」

「熱は無いみたいだな。」

「シャル大丈夫?」

目の前にはお父様やお母様もいた。

「今、医者に観てもらうからな。」

「…はぃ」

緊張する…僕、何か悪い病気なのかな?怖いよ…。
僕はベッドから起き上がるがなんだか身体が重くて動きが鈍かった。
お医者様に診察され診断を待つ間も、不安で押し潰されそうなほどの緊張で気分が悪くなる。

視線でお兄様に助けを求めた。

「シャル俺達が側にいる。」

「…ぅん」

呼吸してるのに息苦しい、これは病気なの?
早く教えて欲しいのに、怖くて聞けない。
スローモーションのようにお医者様の口が動いた。

「シャルマン様は…」

怖いよ…。

「ご懐妊されてますね。」

「「「………」」」

「ご…かいにゃん…?」

ごかいにゃん…ってなんだっけ?
お父様達も僕と同じように忘れちゃってるみたいだった。

「おめでとうございます。」

「…ありがとうございます?」

おめでとうございますと言われ、反射的にありがとうございますと言ってみた。
…ごかいにゃん…。

「シャルおめでとう。」

お母様が笑顔で抱きしめてくれる。
ごかいにゃん…ごかいにん…ご懐妊…ご懐妊? 
僕…もしかして…赤ちゃん出来たの?

「赤ちゃん?」

「そうだよ、シャルのお腹には赤ちゃんが居るんだって。」

「赤ちゃん…僕の子?」

「そうだよ、シャルの子。因みに相手は誰かな?」

「相手は…ライっライアン様です…えへへ」

病気じゃなくで妊娠したと聞いて安心して顔がニヤけちゃう。
そう言えば学園を出る前ライとした時に、洗浄魔法しないでって言って逃げるように馬車に乗ったんだった。

三日…?僕は三日で妊娠しちゃったの?

獣人の身体って僕が思っているよりも妊娠しやすかった。
だから皆すぐに洗浄魔法掛けてたんだ…。
ふと見渡すとお父様とお兄様はなんだか困った顔をしていた。

喜んでくれないのかな?

「お父様?お兄様?」

「あっ…あぁ、おめでとうシャル。」

「……おめでとう。」

どうしたの二人とも…あっ…僕はまだ学生なんだ。
学生が妊娠だなんて大問題だよね…。
卒業まで残り数ヵ月とはいえ妊娠だなんて…。
学園は退学?もしかしたらお父様やお母様、お兄様にも迷惑が掛かっちゃう?
公爵家の者が学園在籍中に妊娠ってなったら、貴族社会では噂の的…餌食になっちゃう?

ど…どうしよう。

「シャル、そんな不安な顔しないの。大丈夫、皆が付いてるよ。」

「…はぃ」

お母様が僕を安心させるために背中を擦ってくれた。
お父様やお兄様でも困惑なのにライが聞いたら…。
若いうちにデキちゃうと別れちゃうことが多いって聞いた事がある…。

どうしよう…婚約解消されたら…。

「婚約解消したくないよ…。」

「どうしたのシャル?」

僕の情けない声にお母様が身体を離して目を合わせた。

「赤ちゃんデキたって言ったら、ライ困って婚約解消って言っちゃうかな?」

「………」

「そんな事あるわけ無いだろう。」

「そんな事言いやがったらアイツはシャルに相応しくない、俺が叩き斬ってやる。」

お父様とお兄様が声を荒げて宣言した。
二人は赤ちゃんを認めてくれるの?

「お父様、お兄様…」

「シャル安心しなさい、ライアン様はそんな人じゃないでしょ?愛した人を信じなさい。」

「…はいっ……ふぁっ…」

「「「シャルっ?」」」

気が抜けたのか身体に力が…。

僕は倒れ、咄嗟にお母様が支えてくれた。

「失礼良いですか?」

再びお医者様が僕に触れる。
お腹に暖かい風が流れるも気持ち悪くなった。

「う゛やっ…ん゛ぁっ」

「これは…シャルマン様の魔力が子供に供給出来ず、お腹の子自ら魔力を無理にでも得ようとしています。」

「「「………」」」

「お相手との魔力の差が大きすぎると良くあることです。」

お腹の赤ちゃんが魔力を欲してるって事?
だけど僕には魔力が無い…。
赤ちゃんどうなっちゃうの…。

「どうすれば?」

震える声でお医者様に尋ねた。

「一番は相手の方に魔力を分けてもらうことです、いち早く。他には…」

「学園に早馬をっ」

お父様はお医者様の言葉を最後まで聞かず、執事に指示を出し部屋を出ていってしまった。

「俺達じゃだめなのか?」

お兄様がお医者様を責めるように尋ねると、お兄様の迫力に気圧され後退っていた。

「血縁者の魔力であれば拒絶反応も少ないでしょう、私の時よりは気分が悪くなることは無いはずです。」

「なら俺がっ」

お兄様が僕のお腹に両手を当て魔力を流し始める。
温かい空気の流れを感じるもお腹の奥の方の熱が治まっていく。

「はぁ…はぁっ…はぁっはぁっ…はぁ」

わかる、まだ全然足りていない。

僕のお腹に手を当て魔力を流しているお兄様の手に手を重ね、もっと欲しいと強請った。
お兄様の顔は次第に険しくなり始め、もしかしたら魔力を貰いすぎちゃったのかもしれない。

「…ぉにぃさまぁ?へぃき?」

「大丈夫だ、シャルは気にするな゛。」

心強い言葉だけど、お兄様の声は普段とは違い強張っていた。
その後も魔力を貰い続けるとお兄様の身体が揺れた。

「おにぃさま…」

名前を呼んでも僕を観てくれず、魔力をひたすら流し続けてくれる。

だけど、これって危険なんじゃ?
もうだめ、お兄様止めて。

「お兄さまっ」

僕は重ねていた手からお兄様の頬に触れた。
漸くお兄様と目があった時、焦点があっていなかった。

「お兄様っ」

その瞬間お兄様は床に座り込み体勢を崩した。
僕はお兄様を心配したいのに、お腹の赤ちゃんはまだ魔力を欲していた。

「シャル次は僕が。」

お兄様に代わり、お母様が僕のお腹に手を当て魔力を流し始めた。
お兄様の魔力は温かくて力強かったが、お母様の魔力は優しくて柔らかい。

「はぁあん…んっん…」

赤ちゃんはまだまだ魔力を食べ尽くしていくのは、僕が一滴の魔力もない獣人なのも原因かもしれない。
なにも出来ずお母様に視線をやると、お母様の表情も曇りだしていく。

「お母様…」

「まだ平気…あの人呼んできてっ。」

あの人とはお父様の事だろう。
やっぱりお母様も無理しているんだ…ごめんなさい。

ばたん

勢い良く扉が開き駆け寄って来たのはお父様だった。

「代わる。」

お父様の無駄の無い言葉に、僕が思っているよりも緊迫な状況だと知る。

赤ちゃん…大丈夫かな?

僕とライとの赤ちゃんなのに、なにも出来ない自分が嫌だ。
お母様はふらつきながら場所を開けお父様と変わった。

お父様の魔力が流れてくる。

お兄様とお母様とは違い身体がゾワゾワする。
なんだろう…お兄様とお母様は身体に沿って湾曲してくれるのに対して、お父様は直線直角に入ってくる。

僕も魔力を受けるだけではなく、受け取るように気を付けた。
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