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二章 ハーレムルート

一生徒

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「なぁ、やっぱりフィンコックって獣人なんかな?」

久しぶりのフィンコックの登校に話題は彼一色だった。

「見た目じゃわかんねぇよな。」

遠目からフィンコックの様子を探っていた。

「始業式でぶっ倒れたってだけだもんな。」

「病気って可能性もあるよな…。」

「もし獣人ならかなり貴重だが…。」

「…それでもフィンコックだしな…。」

「誰も近づかねぇよ。」

「…だな。」

「顔はいいんだけどな~。」

見た目は最高級だった。
この国ではフィンコック家しか持たない黒髪黒目。
どうしても目を引いてしまう。

「よく行けたよな、あいつら。」

あいつらとはフィンコックに婚約を申し込んだ四人の事だ。

「今じゃ四人が婚約者なんだろ?」

「らしいな。」

「…そうなるとやっぱ獣人か?」

「ん~相手が公爵家ってのもあるよな。」

「フィンコック公爵は有力者だからな、ドミニク様が公爵になっても安泰だろう。」

「フィンコック自身FクラスだからAクラスや魔力が高いって言われる奴数人と婚約しても不思議じゃないよな…ギノフォード先生だって魔力が高いのは有名だし…」

「それって子供が生みやすい身体って分かってからだろ?」

「そなるとやっぱ獣人って事になるんじゃないか?」

「獣人かぁ。」

「…あの気性の荒さがなければな…。」

「性格がなぁ。」

誰もが獣人だが、フィンコック自身に問題があるという結論で終わった。
だが、ここに居る全員が一つ話していないことがあった。

公爵家で見た目だけはとても美しいフィンコック、そこに獣人ではないかという噂が付いた事で多くの者が先手を打っていた。

先手とは、婚約の事だった。

フィンコックの噂話で盛り上がっていた全員がシャルマン フィンコックに婚約を申し出ていた。
獣人になり婚約を申し込んだが、フィンコックに対しては以前から興味があった。
性格が悪いキツイと言っていたが、サンチェスターと居るフィンコックは素直で可愛らしく恥ずかしがりやで快楽に弱く見えた。
薬の授業でのフィンコックを目撃してから頭が離れない者も多数存在していた。
あのフィンコックが甘えたようにキスを強請り、口から食べ物を食べる姿には目を離せなかった。

もし相手が俺だったらと多くの者が妄想を膨らませていた。

三年になると、ペアの奴にはない恥じらいがフィンコックにはあった。
偶然気付くと、その後は些細な事でもフィンコックを目で追ってしまう。
自身を否定しながらも、フィンコックを目で追うことを止めることが出来ない。

ペアには悪いがどうしてもフィンコックと比べてしまっていた。

慣れた仕草で恥じらうこともなく受け入れていくペアの姿に物足りなさを感じていた。
面倒なことなど一つもない、流れるように行為を進めることが出来てしまう。
考え事していても、三年間で培った動きを身体が覚えてしまっている。
相手が変わろうと問題なく行え、相手も演技ではないものの本気で感じているかというとそこまで興奮することはなかった。
フィンコックはキスだけでも気持ち良さそうな顔をする。

俺としたらどんな風に…。

フィンコックの五番目の婚約者を狙う者は少なからず存在していた。
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