【完結】ハーレムルートには重要な手掛かりが隠されています

天冨七緒

文字の大きさ
上 下
151 / 414
二章 ハーレムルート

この猫は普通の猫…ではないですよね? アレサンドロ ギノフォード

しおりを挟む
授業を終え与えられた自室に向かう。
授業中は真面目な教師を演じることが出来るが、集中が切れるとルゥの事が甦る。
私が部屋を出る時、キスを求めていたが知らぬ不利をして避けると分かりやすく不貞腐れていた。
子供のように表情豊かでついつい意地悪をしたくなる。
だが、あそこでキスをしたら私の方が我慢できなくなりそうだった。

あの子はそれを狙っているのか天然か。

どちらにしても恐ろしい。
あの見た目に性格、そして獣人が合わさり欲望を掻き立てられ押さえられなくなる。
自分の意思で留まらないと流されてしまう程私はあの子に夢中になっている。
私だけのものにしたい、独占したい、共有などしたくない…と…。

私が後から割り込んでおきながら勝手なものだ。

婚約を発表してからは侯爵家次男という繋がり欲しさに寄ってくる生徒はいなくなった。
相手が公爵家のワガママ坊っちゃんだと知ると何をされるかと怯んだのだろう。

今のところ私ばかり利益を得てしまった。

学園から隔離され不自由な生活を送り婚約者だけの世界にさせておき、更に独占したいなんて…。
自由にさせてやりたい思いはある。
だが、百年ぶりの獣人を無防備にすることは危険で彼のためにもならない。
何が正解なのか…。
隔離することが正解か、多少の危険を承知で自由を与えるか…。
ルゥの事は守る…守るが…危険を避けられるのであればしておきたい。
それはルゥの為というよりも私の心の安定剤だ。

「ん?」

私の部屋に着いたが、扉が開いている。
私は神経質な人間ではないが、扉はちゃんと閉めるタイプだ。
警戒しながら部屋の中を確認するが、どこも変わったところは見当たらない。
私の考え過ぎなのかと席へ移動すると黒い塊が既に我が物顔で鎮座していた。
教師として許されないが言っても良いだろうか?

この野郎。

様々な事を考えた結果。

この野郎。

教師の部屋に勝手に立ち入ることもだが、あれ程部屋から出るなと注意もした。
常に緊張感を持てとは言わないが、一切警戒もせず呑気に眠っていやがる。
猫と思えば可愛いが、中身が人間だと思うと怒りまでとは言わないが何かが込み上げてくる。
だからと言って気持ち良さそうに眠っているので怒鳴ることも出来ない。
ただただ燻る何かを私の中で消化するしかなかった。
教科書を静かに机に置き、起こさないように注意した。

全くこの子は…小さな猫の姿で来られると説教なんて出来る訳がない。

次の授業の準備をしながら猫が起きるのを待った。
もうそろそろ次の授業に向かわなければならないが、この呑気な猫はまだまだ起きそうにもなかった。
頭を撫で喉に移るとゴロゴロと鳴らし始めた。
気持ち良さそうで余計起こしにくくなってしまった。
それどころか、頭を乗せられ手が抜けなくなった。
眠っている無意識の行動なので邪険にも出来ない。

起きていても眠っていても恐ろしい子だ。

少しずつ少しずつ手を抜いていく。
強制的に参加させられた猫に気付かれないで手を抜くゲームをクリアすると授業に遅刻してしまうギリギリの時間だった。

急いで部屋を出てちゃんと扉を閉めた。

試験前以外は扉に鍵を掛けることはしないが、今回は鍵を閉めた。
眠っている猫が獣人とは思わないだろうが念のため。
誘拐される心配もあるが、部屋から抜け出しフラフラと彷徨う恐れの方が強かった。
なので内側から開かないようにしておいた。
今回ばかりはルゥが猫と言うことで力が弱く、さらに獣人に魔力がなくて良かった。

後ろ髪を引かれつつも授業へ向かった。

今日ほど気もそぞろな授業は初めてだった。
冷静さを保ってはいたものの、察しの良い生徒は私の様子に気付いていたようだ。
早く戻りたくて普段より僅かに授業ペースが早かった。
私の機嫌が悪いと思ったのか、いつも以上に生徒の方も真剣だった。
目の前の生徒には悪いと感じつつも、あの子が大人しく待っているのか不安で仕方がなかった。
しおりを挟む
感想 195

あなたにおすすめの小説

美形×平凡の子供の話

めちゅう
BL
 美形公爵アーノルドとその妻で平凡顔のエーリンの間に生まれた双子はエリック、エラと名付けられた。エリックはアーノルドに似た美形、エラはエーリンに似た平凡顔。平凡なエラに幸せはあるのか? ────────────────── お読みくださりありがとうございます。 お楽しみいただけましたら幸いです。

美人に告白されたがまたいつもの嫌がらせかと思ったので適当にOKした

亜桜黄身
BL
俺の学校では俺に付き合ってほしいと言う罰ゲームが流行ってる。 カースト底辺の卑屈くんがカースト頂点の強気ド美人敬語攻めと付き合う話。 (悪役モブ♀が出てきます) (他サイトに2021年〜掲載済)

当て馬的ライバル役がメインヒーローに喰われる話

屑籠
BL
 サルヴァラ王国の公爵家に生まれたギルバート・ロードウィーグ。  彼は、物語のそう、悪役というか、小悪党のような性格をしている。  そんな彼と、彼を溺愛する、物語のヒーローみたいにキラキラ輝いている平民、アルベルト・グラーツのお話。  さらっと読めるようなそんな感じの短編です。

何も知らない人間兄は、竜弟の執愛に気付かない

てんつぶ
BL
 連峰の最も高い山の上、竜人ばかりの住む村。  その村の長である家で長男として育てられたノアだったが、肌の色や顔立ちも、体つきまで周囲とはまるで違い、華奢で儚げだ。自分はひょっとして拾われた子なのではないかと悩んでいたが、それを口に出すことすら躊躇っていた。  弟のコネハはノアを村の長にするべく奮闘しているが、ノアは竜体にもなれないし、人を癒す力しかもっていない。ひ弱な自分はその器ではないというのに、日々プレッシャーだけが重くのしかかる。  むしろ身体も大きく力も強く、雄々しく美しい弟ならば何の問題もなく長になれる。長男である自分さえいなければ……そんな感情が膨らみながらも、村から出たことのないノアは今日も一人山の麓を眺めていた。  だがある日、両親の会話を聞き、ノアは竜人ですらなく人間だった事を知ってしまう。人間の自分が長になれる訳もなく、またなって良いはずもない。周囲の竜人に人間だとバレてしまっては、家族の立場が悪くなる――そう自分に言い訳をして、ノアは村をこっそり飛び出して、人間の国へと旅立った。探さないでください、そう書置きをした、はずなのに。  人間嫌いの弟が、まさか自分を追って人間の国へ来てしまい――

【完】僕の弟と僕の護衛騎士は、赤い糸で繋がっている

たまとら
BL
赤い糸が見えるキリルは、自分には糸が無いのでやさぐれ気味です

身代わりになって推しの思い出の中で永遠になりたいんです!

冨士原のもち
BL
桜舞う王立学院の入学式、ヤマトはカイユー王子を見てここが前世でやったゲームの世界だと気付く。ヤマトが一番好きなキャラであるカイユー王子は、ゲーム内では非業の死を遂げる。 「そうだ!カイユーを助けて死んだら、忘れられない恩人として永遠になれるんじゃないか?」 前世の死に際のせいで人間不信と恋愛不信を拗らせていたヤマトは、推しの心の中で永遠になるために身代わりになろうと決意した。しかし、カイユー王子はゲームの時の印象と違っていて…… 演技チャラ男攻め×美人人間不信受け ※最終的にはハッピーエンドです ※何かしら地雷のある方にはお勧めしません ※ムーンライトノベルズにも投稿しています

【完結】愛執 ~愛されたい子供を拾って溺愛したのは邪神でした~

綾雅(ヤンデレ攻略対象、電子書籍化)
BL
「なんだ、お前。鎖で繋がれてるのかよ! ひでぇな」  洞窟の神殿に鎖で繋がれた子供は、愛情も温もりも知らずに育った。 子供が欲しかったのは、自分を抱き締めてくれる腕――誰も与えてくれない温もりをくれたのは、人間ではなくて邪神。人間に害をなすとされた破壊神は、純粋な子供に絆され、子供に名をつけて溺愛し始める。  人のフリを長く続けたが愛情を理解できなかった破壊神と、初めての愛情を貪欲に欲しがる物知らぬ子供。愛を知らぬ者同士が徐々に惹かれ合う、ひたすら甘くて切ない恋物語。 「僕ね、セティのこと大好きだよ」   【注意事項】BL、R15、性的描写あり(※印) 【重複投稿】アルファポリス、カクヨム、小説家になろう、エブリスタ 【完結】2021/9/13 ※2020/11/01  エブリスタ BLカテゴリー6位 ※2021/09/09  エブリスタ、BLカテゴリー2位

【完結】スキル「癒し」のみですがまだ生き残っています!

鏑木 うりこ
BL
 気がついたらチュートリアルもなく赤ん坊だった。スキルはたった一つ「癒し」しかないのにこの世界を生き残れるのか!俺!

処理中です...