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二章 ハーレムルート

本当の僕は…

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怖くて顔をあげることが出来なかった。
膝の上で拳を強く握り瞳が潤んでも、溢れることがないよう堪えた。

「僕は…シャルマン…じゃ…ありません。」

「「「「………」」」」

「ごめんなさい………。」

「どう言うことですか?」

皆を代表するようにギノフォード先生が当然の質問をして来た。

「…僕は…死ぬはずだったんです…。」

「「「「………」」」」

「僕は…事故…に巻き込まれて死んだんです…だけど目覚めたらシャルマン フィンコックという人の身体で目覚めました…。」

「…それは…夢などではなく?」

「違うと思います…。」

ギノフォード先生の問いには顔を伏せたが、フレデリック様に視線を移した。

「フレデリック様…溺れた時の話をしてくれましたよね?」

「ん?あっあぁ」

フレデリック様は何故今、自分の溺れた話をされたのか理解できない表情だった。

「あれが僕です…。」

「…ん?えっ?…ん?」

「僕が居たのは、この国とは違って魔法等はありませんでした。獣人という種族もいません。その代わりに科学が発展した国です。大きな建物や馬の要らない馬車等が有ります。あの国の大半の人は黒髪黒目でした、今の僕みたいに。あの日、僕は学校…学園の帰りに車…馬車に跳ねられました。僕以外にも沢山の人が跳ねられて地面に叩き付けられました。一人で死んでいくのかな?と思った時、僕の国では珍しい茶色い瞳の緑色の髪の男の子が手を繋いでくれました。その子が居てくれたおかげで僕は寂しくなかった…怖かったけど、一人ではありませんでした。ずっと死ぬ瞬間に見た妄想だと思ってました。だけど僕…覚えてました、あの子の手の甲に三つ並んだ黒子があったのを。フレデリック様、あの時手を繋いでくれてありがとうございました。」

「…ぃやっ…」

僕の荒唐無稽な話を理解できない様子だった。
それはフレデリック様だけでなく、他の皆も。

「そう言えば、子供の頃溺れた時夢見たって言ってたな…。」

エドバルド様もフレデリック様が溺れたのを知っていたようだった。
エドバルド様とフレデリック様は子供の頃から仲が良かったんだ…良いな。

「…あの子供が…貴方だったんですか?」

「はい…子供って言いますが、あの時僕は十五歳でしたからねっ。」

「え?」

そこは驚くところじゃないんですけど。

「僕が居たあの国は童顔の人が多くて、身長もこの国の人達の平均より十五から二十センチは小さいんですっ。」

世界に比べて日本人は童顔小柄だし、この国の人達は皆大人っぽくて身長も高い人が大半で日本人とは真逆な感じですもんね。

「それは前世ではないんですか?」

「前世…僕が死ぬ時、フレデリック様とお会いしてますよ?」

「…う~ん」

ギノフォード先生を困らせてしまった。

「フィンコックにはいつなったんだ?」

「あっ…ぇっと…ラ…ライアン様とペアになった辺りからです。」

「俺と…」

詳しくは言えなかった。
エッチの最中にフィンコックになりました、なんて…。

「もしかして、ヤってる時か?」

「ひゃっ…ぁっ…ぇっと…その……はぃ。」

ラ、ライアン様の口から「ヤってる」なんて言葉が出たことに驚いた。

「なんだよ、思い当たることあんのかよ?」

エドバルド様っ、そんなに聞かないでっ。
ライアン様が僕を確認したので首を振った。
「言わないで」という意味を込めて。

「急に喘ぎ出したよな?」

「ひゃっ」

なんで?なんで言うの?
それになんかライアン様ニヤついてる?

「急に?」

エドバルド様っ、もう良いでしょっ。
深く聞かないでっ。

「それまで全く感じてなかったのに…」

「うわぁあん、もう言わないで…だめぇ。」

急いでライアン様に身をのりだし、口を塞いだ。
じゃないと、全部話してしまいそうだったから。

「そう言えばフィンコックは薬の授業でサンチェスター以外知らないって。」

「薬?」

薬ってなんの事?

「あっいえなんでもありません。」

何だろう?ギノフォード先生は目を背け、皆も気まずそう?
聞いちゃまずい事だったのかな?

「前世ではしてなかったのか?」

エドバルド様によって話が戻された。

「してないって何を?」

「セックス」

「にゃっ十五歳だよっ」

当たり前じゃないっ。
あっそれは僕だけなのかな?

「授業があんだろ?」

「そ、そ、そんな授業ないよっ。」

「授業無いのかよ…なら経験は?」

「………」

皆の前でそんな事聞かないでよっエドバルド様のバカっ。
顔を伏せて皆からの視線を避けた。

「なら、ライアンが初めての相手かよ?」

「…んっ」

もう、顔が熱いよぉ。

「うわぁっそれ本当かよっ羨ましいっ。」

腕で顔を隠しながら、皆を確認するとギノフォード先生とフレデリック様は普段通りに見えるけど…エドバルド様は悔しがっていて…ライアン様はなんだか嬉しそう?

「…まさか…キスもしたこと無かったり?」

「ああああっちの世界では十五歳でそういうの経験してるのは、早いのっ。幼い頃から婚約者がいるって人は珍しいし、結婚の平均年齢は三十歳前後なのっ。」

「………」

「三十…」

「随分…遅いんだな。」

「俺が全部初めてなのか?」

ライアン様なんて事聞くのっ。
腕を交差させて、手の甲で顔を隠しながら頷いた。

「そうかっ」

「んっんっふぅんっんっぁむっんっ……はぁはぁはぁ」

手を強引に引き剥がされ、強引にキスされた。
激しめのキスをライアン様がっ…。

皆居るのに…。

唇を離されると息が上がっていた。

「だめぇ…こっぃぅのはっ…皆がっ居るところでは…しないんです。」

視界がボヤけているので、多分僕は目が潤んでいるんだと思う。

「ライアン、ズリィだろっこいつの初めて全部お前なんだから、少しはこっちにも譲れよ。」

エドバルド様が怒ったように抗議してるけど、内容があれなので変に口を挟めば大変なことになりそうだと存在を消すという防衛本能が作動した。

「俺が最初の婚約者なんだから、当然の権利だ。」

「…ぁっ」

「おい゛っ。」

ライアン様に引っ張られ足の間に座らされ、逃げられないように後ろからしっかりと抱きしめられていた。

「ラッライアン様っ」

「ん~」

「ひゃっ…ぁん」

不意にうなじを吸われエッチな声が出てしまい皆に聞かれ、慌てて口を押さえても遅かった。

「ライアンッ」

「話を戻しますが…。」

ギノフォード先生の言葉でライアン様もエドバルド様も冷静になってくれた。
それでも僕はライアン様の膝の上に居た。

「フィンコックとしての記憶は有るんですか?」

「以前は夢で見ていたんですが、最近は全く見なくなりました。」

「それは、どのくらい覚えてますか?」

「ん~断片的に?顔は見たこと有るなぁ~って分かるんですけど、話した内容までは…日常生活は…なんとか?」

「いやっ部屋の解除登録とか忘れてただろ?」

「あっうん…」

「…王子の事は?」

エドバルド様の疑問に雰囲気が変わった。

「…全く…会っても分かりませんでした。」

四人とも以前のシャルマンを知っているので、王子を覚えてない発言で深刻になっていた。

「先生…これって記憶喪失とかですか?」

それは僕も気になった。
記憶を失いシャルマンの前世が僕なのか、僕の魂がシャルマンの身体に入っちゃったのか。

僕はいずれ消えちゃったりするのかな…。

「これは…私にも分かりません…このようなことは聞いたことがありません。」

「そっすか…。」

「「「………」」」

そう…だよね。
いくら先生でもなんでも知っている訳じゃない。
なんだか皆暗くなってしまった。

婚約…解消されちゃうのかな?

僕はまた一人ぼっち…。

「フィンコック様」

「おいっ泣いてんのか?」

フレデリック様とエドバルド様の言葉でギノフォード先生とライアン様が僕を確認してくるのが分かった。

「どうした?」

「ぼっ…僕…皆と…一緒に居たいです…だけど…解消ですか?」

「「「………」」」

「…するわけねぇだろ?」

僕を抱きしめるライアン様の手に力が込められた。

「私も解消する気はありませんよ。」

ギノフォード先生は僕の頭を優しく撫でてくれた。

「俺も絶対婚約するからっ。」

「僕も婚約をやめる気はありませんよ。」

エドバルド様もフレデリック様も一緒に居てくれる。

「ふっふぅぇん…ひっく…っくぅ…」

「泣くなよ。」

「そうですよ。」

「泣くこたぁねぇだろ?」

「そんなに不安だったんですか?」

「…ぅん…僕は皆にずっと…嘘を…嫌われたくなくて…一緒に居たくて…。」

「お前の側に居る。」

「私も貴方だから婚約者を希望したんですよ。」

「俺もこれからって時に消えたりしねぇよ。」

「僕も貴方ともっと一緒にいたいです。」

「…ふぇっん…ん…ひっく…皆…(大好き)」

僕が落ち着くまで皆優しかった。
ずっと騙していた卑怯な僕なのに。
ギノフォード先生は頭を撫でてくれて、フレデリック様は手を握ってくれた。
エドバルド様はキスしようとしたけど、ライアンがさせてくれなかった。

「…今日…皆は帰っちゃうの?」

「誰が良い?」

「…フィンコックが選んでください。」

「おぅ」

「大丈夫ですよ。」

ライアン様は一番なのに強要することはなく、ギノフォード先生もちゃんと僕に選ばせてくれる。
エドバルド様はどんな答えでも受け入れてくれ、フレデリック様は優しいのがわかる。

「……僕は…皆と居たい。」

僕は誰も選べなかった。

その日は皆、側に居てくれた。
エッチな事はなく、皆と時間を忘れて話した。
ライアン様とエドバルド様は僕を後ろから抱きしめるのを変われと言い争い、ギノフォード先生はあれから獣耳や尻尾は出てないかと体調面を心配してくれた。
フレデリック様とはあまり会話しなかったけど、ずっと手を離すことはなかった。

すごく幸せな時間で眠る勿体なくても、眠気がヤってきて僕は眠ってしまっていた。
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