上 下
133 / 414
二章 ハーレムルート

エドバルド グレモンド

しおりを挟む
真っ黒で強気な目を見るとフィンコックだと分かる。
頭を撫でようとするとバシッと叩かれた。
その仕草全てがフィンコックらしく愛おしかった。
俺にはそんな態度でもライアンには甘えている。
それどころか、フレデリックにも撫でられていた。
ライアンは分かるがフレデリックにも許すのが納得いかない。
フレデリックを許すなら俺も許せよ、もしくはフレデリックの手も叩けよ。
どうにかフィンコックの気を引きたくて、ハンカチを風魔法で飛ばした。

猫の習性はフィンコックにも通用し、ハンカチを目の前でヒラヒラさせると、視線で追い尻尾の動きも変わりだした。
姿勢を引くし今にでも飛びかかろうとしていた。
その姿が面白く、ハンカチを渡したくないとこちらも熱くなってしまった。
一度目のジャンプでは失敗するものの二度目でハンカチを取られてしまった。
ハンカチを返しに来る時の挑発的な視線は「もう一度勝負して上げるよ」と言わんばかりの表情だった。
その後も何度か勝負する頃には、俺の膝に躊躇いなく乗るようになっていた。
試しに頭を撫でると先程と違い叩かれることはなく、喉元を擽ればゴロゴロと鳴き気持ち良さそうな顔をしていた。
俺に気を許したのか、懐いてくる。
次第に背伸びをして俺の顔に近づいてくる。
喩え猫であってもフィンコックからのキスは嬉しいと待ち構えた。

「シャル」

フィンコックはライアンの声に振り向き、俺の足から降りライアンの元へ飛び出していた。

猫になったシャルマンのキスさえ許さないライアンの独占欲に少し驚いた。
俺の知らないライアンだったから…。

ライアンの元へ行き唇を求めに行くと、甘い香りに包まれた。
香りが気になりゆっくりと深呼吸してしまった途端、脳が蕩けるような甘美な誘惑に抗えなくなった。
性の対象を探せば、猫が人間に変わる瞬間を目撃した。
黒髪でしなやかな手足を惜しげもなく晒し、ライアンに覆い被さっていた。

俺はフィンコックの綺麗な背中に吸い付いていた。
フレデリックもフィンコックに引き寄せられていた。
冷静でフィンコックには今でも一線を引いていたあのフレデリックさえもフィンコックの体に手を伸ばしていた。

その後の記憶は曖昧だったが覚えていることもある。
フィンコックの中に放ったりモノを口にしたりと、ライアンとフレデリックと代わる代わるフィンコックを貪り夢のような時間だった。
夢の中のフィンコックは妖艶でいて、俺達を何度も受け入れていた。
快楽に流され朦朧とする中、俺の手を口に含み舐めていたと思えば噛みだした。
猫の甘噛みにしては強かったが、傷として残れば今日の出来事が夢ではないと思える。

今日の事で子供が出来てしまえば良いのに…。

俺はフィンコックに子供が出来ることを望みながら、フィンコックの中にだした。
どのくらいフィンコックを抱いたのかは覚えていない。
俺が気絶する前にフレデリックも意識を失っていた。
今まで意識を失う程の経験はなかった。
精力も体力も使い果たし気持ちの良い眠りに付いた。
目覚めるとライアンとフィンコックが抱き締めあって眠っている姿を目撃した。

二人の絆の強さを感じる。

全員裸で行為の痕跡が至るところにあり、まずは部屋全体に洗浄魔法を掛けたが、体力が完全に戻っていなく膝を付いてしまった。

「んん゛」

ライアンが起きた。

「悪い片付けてくれたのか?」

「あぁ、洗浄魔法を掛けただけだ。」

裸だったので俺達は服を着て、フレデリックには布団を掛けフィンコックはベッドに寝かせた。

「…あれはなんだったんだ?」

俺は自身に何が起きたのかライアンに尋ねた。

「あれは…獣人のフェロモンだ。」

「フェロモン?」

「あぁ、獣人特有で魔力の高いもの程効いてしまい逆らうことが出来なくなる。」

「…確かにそうだった。」

逆らうなんて気持ちすら生まれなかった。

「フェロモンを出している間はフィンコック自身も記憶が曖昧らしい…目覚めたら覚えてない可能性もある。」

あいつは覚えてないのか…。

「…そうなのか…」

「んん゛っ」

唸り声の方を振り向けばフレデリックも起きたようだった。
ライアンはフレデリックにもフェロモンの事を伝え俺達は各々部屋で休むことにした。
部屋で一人になると曖昧になった記憶を必死に呼び覚ました。
あれは夢ではなく現実で俺はフィンコックを抱いた。
この記憶が確かなら俺は…

「婚約を立候補したら婚約者に慣れるだろうか?」
しおりを挟む
感想 195

あなたにおすすめの小説

鬼上司と秘密の同居

なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳 幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ… そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた… いったい?…どうして?…こうなった? 「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」 スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか… 性描写には※を付けております。

目が覚めたら囲まれてました

るんぱっぱ
BL
燈和(トウワ)は、いつも独りぼっちだった。 燈和の母は愛人で、すでに亡くなっている。愛人の子として虐げられてきた燈和は、ある日家から飛び出し街へ。でも、そこで不良とぶつかりボコボコにされてしまう。 そして、目が覚めると、3人の男が燈和を囲んでいて…話を聞くと、チカという男が燈和を拾ってくれたらしい。 チカに気に入られた燈和は3人と共に行動するようになる。 不思議な3人は、闇医者、若頭、ハッカー、と異色な人達で! 独りぼっちだった燈和が非日常な幸せを勝ち取る話。

婚約者に会いに行ったらば

龍の御寮さん
BL
王都で暮らす婚約者レオンのもとへと会いに行ったミシェル。 そこで見たのは、レオンをお父さんと呼ぶ子供と仲良さそうに並ぶ女性の姿。 ショックでその場を逃げ出したミシェルは―― 何とか弁解しようするレオンとなぜか記憶を失ったミシェル。 そこには何やら事件も絡んできて? 傷つけられたミシェルが幸せになるまでのお話です。

俺は勇者のお友だち

むぎごはん
BL
俺は王都の隅にある宿屋でバイトをして暮らしている。たまに訪ねてきてくれる騎士のイゼルさんに会えることが、唯一の心の支えとなっている。 2年前、突然この世界に転移してきてしまった主人公が、頑張って生きていくお話。

完結·助けた犬は騎士団長でした

BL
母を亡くしたクレムは王都を見下ろす丘の森に一人で暮らしていた。 ある日、森の中で傷を負った犬を見つけて介抱する。犬との生活は穏やかで温かく、クレムの孤独を癒していった。 しかし、犬は突然いなくなり、ふたたび孤独な日々に寂しさを覚えていると、城から迎えが現れた。 強引に連れて行かれた王城でクレムの出生の秘密が明かされ…… ※完結まで毎日投稿します

婚約破棄されたから能力隠すのやめまーすw

ミクリ21
BL
婚約破棄されたエドワードは、実は秘密をもっていた。それを知らない転生ヒロインは見事に王太子をゲットした。しかし、のちにこれが王太子とヒロインのざまぁに繋がる。 軽く説明 ★シンシア…乙女ゲームに転生したヒロイン。自分が主人公だと思っている。 ★エドワード…転生者だけど乙女ゲームの世界だとは知らない。本当の主人公です。

【書籍化確定、完結】私だけが知らない

綾雅(要らない悪役令嬢1/7発売)
ファンタジー
書籍化確定です。詳細はしばらくお待ちください(o´-ω-)o)ペコッ 目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。 優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。 やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。 記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。 【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ 2024/12/26……書籍化確定、公表 2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位 2023/12/19……番外編完結 2023/12/11……本編完結(番外編、12/12) 2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位 2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」 2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位 2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位 2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位 2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位 2023/08/14……連載開始

運悪く放課後に屯してる不良たちと一緒に転移に巻き込まれた俺、到底馴染めそうにないのでソロで無双する事に決めました。~なのに何故かついて来る…

こまの ととと
BL
『申し訳ございませんが、皆様には今からこちらへと来て頂きます。強制となってしまった事、改めて非礼申し上げます』  ある日、教室中に響いた声だ。  ……この言い方には語弊があった。  正確には、頭の中に響いた声だ。何故なら、耳から聞こえて来た感覚は無く、直接頭を揺らされたという感覚に襲われたからだ。  テレパシーというものが実際にあったなら、確かにこういうものなのかも知れない。  問題はいくつかあるが、最大の問題は……俺はただその教室近くの廊下を歩いていただけという事だ。 *当作品はカクヨム様でも掲載しております。

処理中です...