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二章 ハーレムルート
退学について
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ギノフォード先生から直接、婚約が決定したことが報告された。
両親からの手紙のやり取りで決まったことを知っていても現実的ではなかった。
今日、ギノフォード先生は僕の部屋に泊まる。
そういうことをするかどうかはわからないけど、婚約者となり初めての顔合わせになる。
「婚約者」という言葉が、僕を緊張させた。
僕の部屋にギノフォード先生がやってきてソファに座るも何だか隣に座ることが出来ず向かいに座ってしまった。
「…フィンコック、聞いていますか?」
「ふぇっ」
「聞いてなかったのですね?」
ギノフォード先生は笑顔でいるのにとても恐怖を感じた。
最近は皆の笑顔に恐怖を感じているのは良くないよね…。
何かで聞いたが子供が暗闇を恐れるのは問題ない、大人が光を恐れる事のが悲劇…。
人の笑顔を恐れる僕も?
ここでは使い方が違うのかな?
だけど…。
どうにか逃げないと…。
「にゃん」
「誤魔化されませんよ。」
………だめだった。
なんの話してたのかな?
「貴方の獣耳と尻尾が人間化出来、フェロモンを制御出来たら学園に復帰出来ます。と言ったんです。」
僕、戻れるだ…。
「にんげんか?」
「耳と尻尾が仕舞えるようになると文献に記述がありましたから、それがわかりやすい学園復帰の条件になります。」
「みみとしっぽ。」
体を捻り、自身のお尻を見た。
お尻からは黒いのものがウネウネしてる。
これさえ仕舞えれば僕は学園に戻り普通の学生になれる。
話すのもゆっくりではあるが喋れるようになった。
これなら、学園復帰も近いかも…一番の問題は今は見ない振りをした。
だってフェロモンなんて見えないもんっ。
「せんせっ、にんげんかするにはどうしたらいいんですか?」
「分かりません。」
…急に突き放された。
びっくり…先生、怒ってます?
「………」
「百年ぶりの獣人なので、分からないことだらけです。人間化も実際に見た人間は既に存在してません…百年も前の事なので。」
そうですよね…百年前の事ですから…。
今日のギノフォード先生をイジワルに感じるのは、先程話を聞いていなかった僕の後ろめたさからかな?
なんだか、僕の周りにいる人は次第に意地悪な人になっていく気がする。
「…学園…退学しますか?」
「へぇ?」
退学?なんで急に?
先生は僕に辞めて欲しいってこと?
「サンチェスターと結婚したら、すぐにでも辺境で暮らせますよ。」
「たい…がく?」
「えぇ、そうすれば耳や尻尾を隠す必要有りません。」
「たいがくすれば、ライアン様といっしょにいられる?」
「はい」
「………」
「サンチェスターもその方が嬉しいかもしれませんね、ずっと一緒にいられるんですから。」
「せんせいは?」
「私の事は気にしなくていいんですよ。」
「ぅんん、だめ…せんせいもいっしょでしょ?」
「大丈夫ですよ、どこにいても私は貴方を守りますから。」
それだと本当に僕は先生を利用しているだけな気がする。
先生は本当にそれでいいの?
婚約者なのに?
先生の考えていることが全くわからないよ。
目の前の先生は完璧な笑顔で僕を見つめている。
綺麗な笑顔過ぎで先生の本当の気持ちが見えない…。
今更ながら僕は先生の隣に座らなかったことを後悔した。
「……せんせい。」
「はい。」
「わからないんです…。」
「なにがです?」
「だんなさまがたくさんいてもゆるされることが…だって、ライアン様もせんせいもぼくだけなのにぼくはちがうから…ふたりをうらぎってる…。」
僕が獣人だから仕方がないことなのかもしれない…けど…。
「…そんな風に考えていたんてすか?」
「よくないこと…イケナイことでしょ?」
「フィンコック公爵夫妻は素敵な夫妻ですね…ですが、世の中の人皆がそうであるわけではないんです。好きな人と結婚しても子を生めない可能性もあります、そうなれば第二夫人・第二夫がいるのは当然です。子を生む為だけに愛人を何人も囲う貴族もいます。それが当然の考えてあり、当たり前に受け入れていたのでフィンコックが悩んでいることに気付けませんでした…フィンコックは私やサンチェスターに悪いと思っていたのですか?」
「…はぃ。」
素敵な人を二人も手に入れちゃうなんて欲張りだよ。
うんん、欲張りとかじゃなくて二人に対して失礼。
僕は僕だけをみて欲しいって思っちゃうもん。
「フィンコックは優しいんですね。確かに…誰かの一番になりたいと思いますが、私はフィンコックの夫の一人になれるだけで幸せですよ。」
夫の一人…。
「…だめ…だって、だれかはせんせいをいちばんにおもってるのに…ぼくはせんせいをいちばんにできない。せんせいはせんせいをいちばんにおもっているひとといっしょになったほうがしあわせに…。」
「フィンコック、私はフィンコックを愛しています。フィンコックは私の事が嫌いですか?」
「ぅんん…すきです…でも、いちばんじゃないです。」
ごめんなさい。
「私はそれで充分ですよ。」
だめだよ…。
自分の事大事にして。
「………」
「…フィンコック。隣座ってもいいですか?」
「…はぃ」
小さく頷いた。
先生は隣に座り僕の方を向いたので、僕も真似して先生の方へ向いた。
「私がフィンコックに触れてもいいですか?」
「へ?ふれる?」
「嫌なら止めます、嫌でなければ私はフィンコックに触れ続けます。」
「…は、はい」
先生は僕の手に触れ、頬に触れ唇をなぞられた。
そこまでは嫌悪を感じたりはしなかった。
「キス…しても良いですか?」
キス…キスってキスだよね?
断ったら先生は傷つく?
受け入れたらライアン様が傷つく…。
どうしたらいいんだろうか…。
両親からの手紙のやり取りで決まったことを知っていても現実的ではなかった。
今日、ギノフォード先生は僕の部屋に泊まる。
そういうことをするかどうかはわからないけど、婚約者となり初めての顔合わせになる。
「婚約者」という言葉が、僕を緊張させた。
僕の部屋にギノフォード先生がやってきてソファに座るも何だか隣に座ることが出来ず向かいに座ってしまった。
「…フィンコック、聞いていますか?」
「ふぇっ」
「聞いてなかったのですね?」
ギノフォード先生は笑顔でいるのにとても恐怖を感じた。
最近は皆の笑顔に恐怖を感じているのは良くないよね…。
何かで聞いたが子供が暗闇を恐れるのは問題ない、大人が光を恐れる事のが悲劇…。
人の笑顔を恐れる僕も?
ここでは使い方が違うのかな?
だけど…。
どうにか逃げないと…。
「にゃん」
「誤魔化されませんよ。」
………だめだった。
なんの話してたのかな?
「貴方の獣耳と尻尾が人間化出来、フェロモンを制御出来たら学園に復帰出来ます。と言ったんです。」
僕、戻れるだ…。
「にんげんか?」
「耳と尻尾が仕舞えるようになると文献に記述がありましたから、それがわかりやすい学園復帰の条件になります。」
「みみとしっぽ。」
体を捻り、自身のお尻を見た。
お尻からは黒いのものがウネウネしてる。
これさえ仕舞えれば僕は学園に戻り普通の学生になれる。
話すのもゆっくりではあるが喋れるようになった。
これなら、学園復帰も近いかも…一番の問題は今は見ない振りをした。
だってフェロモンなんて見えないもんっ。
「せんせっ、にんげんかするにはどうしたらいいんですか?」
「分かりません。」
…急に突き放された。
びっくり…先生、怒ってます?
「………」
「百年ぶりの獣人なので、分からないことだらけです。人間化も実際に見た人間は既に存在してません…百年も前の事なので。」
そうですよね…百年前の事ですから…。
今日のギノフォード先生をイジワルに感じるのは、先程話を聞いていなかった僕の後ろめたさからかな?
なんだか、僕の周りにいる人は次第に意地悪な人になっていく気がする。
「…学園…退学しますか?」
「へぇ?」
退学?なんで急に?
先生は僕に辞めて欲しいってこと?
「サンチェスターと結婚したら、すぐにでも辺境で暮らせますよ。」
「たい…がく?」
「えぇ、そうすれば耳や尻尾を隠す必要有りません。」
「たいがくすれば、ライアン様といっしょにいられる?」
「はい」
「………」
「サンチェスターもその方が嬉しいかもしれませんね、ずっと一緒にいられるんですから。」
「せんせいは?」
「私の事は気にしなくていいんですよ。」
「ぅんん、だめ…せんせいもいっしょでしょ?」
「大丈夫ですよ、どこにいても私は貴方を守りますから。」
それだと本当に僕は先生を利用しているだけな気がする。
先生は本当にそれでいいの?
婚約者なのに?
先生の考えていることが全くわからないよ。
目の前の先生は完璧な笑顔で僕を見つめている。
綺麗な笑顔過ぎで先生の本当の気持ちが見えない…。
今更ながら僕は先生の隣に座らなかったことを後悔した。
「……せんせい。」
「はい。」
「わからないんです…。」
「なにがです?」
「だんなさまがたくさんいてもゆるされることが…だって、ライアン様もせんせいもぼくだけなのにぼくはちがうから…ふたりをうらぎってる…。」
僕が獣人だから仕方がないことなのかもしれない…けど…。
「…そんな風に考えていたんてすか?」
「よくないこと…イケナイことでしょ?」
「フィンコック公爵夫妻は素敵な夫妻ですね…ですが、世の中の人皆がそうであるわけではないんです。好きな人と結婚しても子を生めない可能性もあります、そうなれば第二夫人・第二夫がいるのは当然です。子を生む為だけに愛人を何人も囲う貴族もいます。それが当然の考えてあり、当たり前に受け入れていたのでフィンコックが悩んでいることに気付けませんでした…フィンコックは私やサンチェスターに悪いと思っていたのですか?」
「…はぃ。」
素敵な人を二人も手に入れちゃうなんて欲張りだよ。
うんん、欲張りとかじゃなくて二人に対して失礼。
僕は僕だけをみて欲しいって思っちゃうもん。
「フィンコックは優しいんですね。確かに…誰かの一番になりたいと思いますが、私はフィンコックの夫の一人になれるだけで幸せですよ。」
夫の一人…。
「…だめ…だって、だれかはせんせいをいちばんにおもってるのに…ぼくはせんせいをいちばんにできない。せんせいはせんせいをいちばんにおもっているひとといっしょになったほうがしあわせに…。」
「フィンコック、私はフィンコックを愛しています。フィンコックは私の事が嫌いですか?」
「ぅんん…すきです…でも、いちばんじゃないです。」
ごめんなさい。
「私はそれで充分ですよ。」
だめだよ…。
自分の事大事にして。
「………」
「…フィンコック。隣座ってもいいですか?」
「…はぃ」
小さく頷いた。
先生は隣に座り僕の方を向いたので、僕も真似して先生の方へ向いた。
「私がフィンコックに触れてもいいですか?」
「へ?ふれる?」
「嫌なら止めます、嫌でなければ私はフィンコックに触れ続けます。」
「…は、はい」
先生は僕の手に触れ、頬に触れ唇をなぞられた。
そこまでは嫌悪を感じたりはしなかった。
「キス…しても良いですか?」
キス…キスってキスだよね?
断ったら先生は傷つく?
受け入れたらライアン様が傷つく…。
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