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二章 ハーレムルート

言わなければ良かった

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ギノフォード先生に伝える時は「俺も一緒に」ってライアン様が言ってくれた。
三人で話せるのは放課後しかなかったので食事を運んでくれた時に「きょうにょほうかこ、こんにゃくにょけんねはにゃしたいてす」(今日の放課後婚約の件で話したいです)とギノフォード先生に伝えた。
僕は緊張して先生の顔を見ることが出来なかった。

「分かりました。」

頭上から先生の声が降ってきた。
その時、暖かい何かに包まれた感覚がしたのはなんだろう?
魔法なのかと先生を見上げると、綺麗な瞳に吸い込まれそうになった。
瞳がキラキラと青から紫に変わったように見える。
タンザナイトのように綺麗な瞳。

「…しぇんしぇいは、ほんちょーにびょくでいいにょ?」

「貴方しか欲しくありません。」

「………」

「私は魔法にしか興味のない独身主義だったんですが…全てを捨てても良いくらいの人に出会ってしまいました。」

「………」

「安心してください、本気で今の立場を捨てるつもりはありません…それだと貴方を守れませんから。」

守る…先生は何度も僕を守るって…。
獣人は僕が思っている以上に狙われる存在なの?
だから、ライアン様もあんな事を?

「………」

「こんなにも侯爵家次男で良かったと思ったことはありません。」

「………」

「昼食の時にまた来ます。お昼からは勉強を見ますので、前回の復習などしておくんですよ」

「…にゃん」

「寝るんじゃありませんよ」

「にゃ゛っ……にゃん」

寝ませんよっ。

「ではっ。」

先生は雰囲気を変えてから部屋を出ていった。
大人で優しくて…頼りになる男の人。

僕は考えることを止めて勉強することにした。
いくら考えても他の選択肢は浮かばないから…。
あっという間に昼食となり、ギノフォード先生がいつもと変わらない様子で現れた。
普段通り、何も変わらない…。
僕が休んでいる間の授業は沢山あって、逃げるように勉強すればあっという間に放課後になっていた。

先生と一緒にライアン様が現れた。
なんとなく気まずい。

先生は「一度職員室に戻り、再び来ます」といって出ていった。
多分、先生は一度僕達を二人きりにしてくれる為ではないかと思う。
婚約を申し出て、返事待ちの先生が不安なのに大人たがらと僕達を優先してくれた。

僕が二人いたら…。
二人いても僕はライアン様を選んだと思う…。

「シャル」

僕達は大人しくソファに座り、ライアン様とは向き合って離れて座っている。

「シャルの気持ちを聞かせてくれ。」

「…にゃ、にゃいあんさみゃはいいにょ?びょくが…ほかにょひちょちょ…」

ライアン様は良いの?僕が他の人と…。

「…これは、俺達の為でもある。それに、愛人を何人も持つのは普通だ。」

「ふちゅー…」

普通ってなに?
ライアン様一人で良いのに…。

「シャルを愛してる、守れるんならなんでもする。これが俺の答えだ。」

「にゃん、びょくもニャイアンさみゃちょいっちょにいちゃい」

僕もライアン様と一緒にいたい。

僕の何気ないをライアン様がどう受け取っていたのかは分からない。

「シャル」

「…にゃいあんさみゃ、びょくはしぇんしぇいちょもこんにゃくしゅゆ」

ライアン様、僕は先生とも婚約する。

…ライアン様が望んでいる答えを選んだ。
この世界の常識がない僕には獣人がどれ程貴重なのか分からない。
よく分からないけど、僕は狙われてるんだと思う…二人が…ライアン様が二人目の婚約者を望むくらいには危険なんだと思う。
…魔法も使えない僕は誰かに守ってもらうしかないんだ…それをライアン様一人に押し付けては…。

僕は悪い人間です。
ライアン様が大好きなのに先生とも婚約します…守ってもらうために…。

「……あぁ」

「びょくがにゃいあんさゃみゃがだいちゅきなのわしゅえないちぇにぇ」

僕がライアン様の事大好きなの忘れないでね。

お行儀が悪いが、テーブルを挟んで座っているライアン様に近づいた。
テーブルを越えて、ライアン様の膝に座り、首に腕を回して互いにキスを貪った。

もっとしたい。

ライアン様だけの僕になれなくてごめんなさい…。

「にゃんにゃんにゃん」

ライアン様の制服のボタンに触れ外していく。

「こらっ、これからギノフォード先生が来るだぞ。」

「にゃ゛っ…………ふにゃぁ」

そうだった。
このまま、ライアン様とは…。

「泣くな、今日は出来なくてもこれからいつでも出来るようになる。その為にギノフォード先生の力も借りる。それだけだ。」

「ふにゃぁ」

エッチしたかったのに…。
ライアン様の身体にしな垂れた。
尻尾でライアン様の太ももをパンパンと叩いてしまう。

「シャルはギノフォード先生の事どう思ってる?」

「んにゃ?」

「好きかどうか?」

「んーんーんー」

好きって好きだけど、今聞かれてる好きって…本気の好きかどうか?だよね?

「ギノフォード先生とエッチしたいって考えたことあるか?」

「ん゛にゃ゛っ」

エッチ?エッチ?先生と?
そんなこと考えたことないよ。
ブンブンと一生懸命首を振った。

「俺が初めてこの部屋に来た時、異様に近かったよな?先生との距離。なんか有ったんじゃねぇの?」

ん?
ライアン様が初めてこの部屋に来た時?

「にゃ゛っ……にゃんにゃん」

あ゛っ…にゃいにゃい。

「……明らかに怪しい…なんか有ったろ?」

「にゃにゃにゃにゃにゃにゃ」

「さっきから「にゃ」しか言ってねぇぞ。」

うん、悟られないように「にゃ」しか言ってません。

「………」

「素直に言え。」

「………」

言えない、言ったら怒られる。

だって…だって…。

あの時って確か、先生が寝ているソファに潜り込んで一緒に眠った。

でもねっでもね、あれは一人が怖くて…。

…だけど…僕が先生に泊まってって迫ったような…。
しかも、僕…ズボンもパンツも脱いじゃってた。

わざとじゃない…わざとじゃないんだけと、そうなってた。

こんなの僕が先生に夜這い?夜這いっ?僕、先生に夜這いかけちゃったの?
ふぇぇん、知らなかった。
こんなことライアン様に言えない。
ダメっ絶対バレないようにしないと。

「なんか有ったろ?」

ブンブンと先程よりも懸命に首を振った。

「にゃにゃにゃにゃ…にゃい…ょっ」

「怪しすぎんだよ、何があったのか正直に言え。」

「ふにゃぁん」

「誤魔化すなっ」

「……ぁっ……ぁ…にゃもにゃにゃにゃ」

「わかんねぇよ、紙に書け。」

態と「ねこ語」で話したのが却って逆鱗に?

「にゃぁん」

「ダメだ教えろ。」

逃げられなかった。

「………」

僕は素直に、一人が怖くて先生が眠るソファに潜り込んだ事を書いた。

「…先生、泊まったのか?」

「………」

…誤魔化そうと思ったけど…僕が淋しくなって、先生が泊まってくれたことを素直に白状した…。

「…他に隠し事無いよな?」

…そんな聞き方しないで。

「有るんだな?言え、今すぐ。」

「………」

字が震えていく。
寝ぼけて、ズボンとパンツ脱いじゃってた事を書いた。

「にゃにみょにゃい、にゃにみょっ」

(何もない、何もっ)

「………」

ライアン様?何か話して…。

「にゃ…にゃいあんさみゃ?」

(ラ…ライアン様?)

「ふふ」

笑顔のライアン様…なんだか怖い゛っ。
ぎゅっで腰を強く抱きしめられる。

「にゃ…にゃ…」

「シャルは縛られるの好きだったよなぁ、またやろうなぁ。シャルはそういうのが好きなんだよなぁ?俺は優しいからシャルの望みを叶えてやるよ。もちろん目隠しで。嬉しいだろ?」

「ぅにゃ…ぅにゃっ」

怖い…今のライアン様は怖い。
震えながら首を振ったけど、ライアン様…笑って…る。

「シャルは本当に可愛いなぁ。」

「………」

別の意味で「怖い」しかなかった。
言わない方が良かったのかな?
きっと先生もライアン様に話さなかったと思う…。
僕さえ黙っていれば…。
僕…失敗しちゃった?

にこっと笑うライアン様と目が合い、僕の首に沈んでいく。

「に゛ゃ゛ぁ゛っ」

首゛噛゛まれだっ…。

「先生、もう来る頃だな…隠すなよ。」

噛まれた首を手で押さえながら頷いた。
これは隠しているのではなくて、すっごく痛゛いよぉ。
噛まれたから僕はきっとゾンビになっちゃう…。
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