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二章 ハーレムルート

アレッサンドロ ギノフォード

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フィンコックは急いで隔離棟に移された。
魔法省による結界や保護を掛けられている棟で、寮から目と鼻の先ではあるが確認できないようになっている。
検査で倒れただけでなく、フィンコックの容姿を確認し学者達も獣人と認めるしかなかった。

百年ぶりの獣人。

隠したいことだが、学園の教師と三年生全員がフィンコックが倒れたのを目撃している。
生徒達の噂は獣人検査で「倒れただけ」という意見と「獣人では?」と二分していた。
百年ぶりの獣人が現れたという事実を皆、半信半疑で受け止めていた。
これがシャルマン フィンコックとなれば目立つ為に倒れ、それを切っ掛けに王子との婚約をもぎ取ろうとしているのでは?との噂も出始めた。
そんな事をしてしまえば真実が明るみになった時どんな罰が下るか分からないことをするはずがないと思いながら、やはりそれ以上に「獣人が現れた」というのは信じがたいことだった。

今後生徒から親へ話が伝わり色々と動き出し、獣人研究家達にも伝わることだろう。

屋敷に戻すのが最善か認識できない棟に一人隔離するのが最善か判断できずにいた。
話し合いの結果、何の準備もしていない今の状態の公爵家は安全とはいいきれないので棟で隔離することになった。
今の学園の規則では護衛を置くことは王族以外許されていなかった。
王族の騎士も敷地には立ち入ることは出来ても校舎内に入ることはない。
何処にいても貴族が誘拐される可能性はゼロではないが、学園内で誘拐されるとは考えていなかった為、騎士などは置いていないでいたが今回のことで考える必要があった、早急に。

フィンコックは貴族の中でも爵位の高い公爵家であり、元々体力も魔法も弱く誘拐の対象になりやすかったのが「獣人」になったことで更に狙われるようになってしまったのは明白だ。
今後は何処にいても誘拐されるだろう。
例え学園であっても。
教師が誘拐しないとも限らない。
全てを疑っていくしかない。
唯一信用できるのは、婚約者のサンチェスターのみだ。
彼はいいタイミングで婚約してくれた。

フィンコックの家族にも早馬で知らせた。
公爵家という立場上、直ぐには無理だろうと考えていたが予想とは違い家族三人血相変えてやって来た。
その光景をみただけで、フィンコックは家族に愛されているのが分かる。

「シャルッ」

「んっんっはぁっん゛っはぁっん゛ん゛ん゛んあ゛あ゛あ゛」

フィンコックは家族の呼び掛けにも反応できない程魘されていた。

「シャッシャルゥ」

涙を流しフィンコックの手を取る夫人。
苦悶の表情を浮かべ汗をかくフィンコックを励ましながらハンカチで拭っていた。

「シャルは?もう完全に?」

フィンコック公爵が私に詰め寄る。
冷静に見えてかなり動揺しているのが、私との近すぎる距離で伝わってくる。

「シャルマン フィンコックは始業式の検査で獣人だと判断しました。詳しくは目覚めてからになります。」

「獣人…。」

「………。」

フィンコックの兄は学生の頃から口数は少なかったな。

「大丈夫だよ、獣人になってもシャルは私達の家族だ。この耳もシャルに似合っているよ。」

優しく頭を撫でる仕草は親の愛情を感じる。
家族だけにするべく、私は部屋を出た。
フィンコックはこれから大変になるな。
百年前の獣人は旦那を何人も取り、愛人もいたと文献に合った。
これから、多くの貴族も獣人について調査し始めるだろう。
そして、第二、第三の夫になるべく婚約を申し込むはず…。
どうするべきか…。
フィンコック抜きで決めることではないな。
これから、貴族の腹の探りあいになる。
それまではゆっくり休んでほしい。

フィンコックには幸せであってほしい。
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