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二章 ハーレムルート

アレッサンドロ ギノフォード

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ペア初日の彼らは一目も憚らずイチャつきだした。
フィンコックがしていると思うと目が離せなかった。
サンチェスターの方は分かっていてやっているように見える。
それほどシャルマン フィンコックを囲いたいか。

「仲良くなるのは良いですが、やり過ぎはダメですよ。」

注意は彼ら二人を牽制するためにしたのであって、私自身が苦しみから逃れるためではない…。

周囲はあからさまに見る者や、盗み見する者達ばかりだった。
あっちも気にしてはいない素振りで、風魔法で二人の会話を聞いているのが分かる。
気になって仕方がないんだな…。

試験では驚くべきことが起きた。
三十八位には シャルマン フィンコック とあった。
魔法の実技でも、手を抜かずに本気で挑んでいた。
その後、倒れてしまう程に。
出会いで人は変わるというが、ここまで変わるものなのか?
別人だと言われた方が納得してしまう。
彼は君にそこまで影響を与えたのか?
抱き上げた彼はとても軽く抗議に来ていた時の彼は、もう少し大きな生徒だと思っていたが実際はこんなにも細く弱かったのだと知る。

何故あんなに頑張ったのか?
魔法を極限まで使えば魔力量が増し子を宿す時に影響が生まれることもある。
君は毎回、本気を出したことはなかったはず。
魔法の本もそうだ、君は魔法をどう思っているんだ?

「魔法を頑張ったら、もっと魔力増えますか?」「魔法をもっと勉強したいんです…」彼から信じられない言葉を聞いた。
魔法…嫌いだったんじゃないのか?

「…やっぱり、魔力の少ない人間がやっても…ムダ…ですかねっあはは…。」

悲しそうに必死に笑う姿が目に焼き付く。

「フィンコックは魔法に興味があったんですか?」

「はぃ、だけど…僕には魔力が少ししか…。」

だから、今まで…。
私は彼をちゃんと見ていなかったんだな。

「………私と訓練してみますか?」

私から誘った。

「いいんですかっ?」

彼の満面な笑顔…私に向けたことは、これが初めてですね。

「真面目にやるのであれば。」

「やります。」

真剣な眼差し。
この子もこんな目をするんですね。

「そうですかぁ…フィンコックは魔法が好きですか?」

「はいっ好きです。センセっ、よろしくお願いしまうっぁ」

はっきりと好きだと宣言し、最後に噛んだ。

「フフ、はい」

思わず笑ってしまった。

可愛い。

この感情を制御できる自信があったので、彼と一緒の時間を過ごすことにした…。
私は教師で彼は生徒…。
彼には彼を幸せにしてくれるペアがいる…。 
それは私ではない。

魔力を枯渇し立ち上がれない彼を抱き上げた。
とても軽く腕に収まるサイズの彼を抱きしめるのに力が込められた。

私は匂うのだろうか?

先程から彼が私を嗅いでいる。
常に清潔には気を付けているつもりだが、十代の彼らのが匂いには敏感だろう。
彼に合う時は、直前に洗浄魔法しなければ。
臭い人と思われたくない。

「その…いい匂いだなぁって…」

照れた姿も愛らしい。
自身の匂いは分からないが不快でないのならと安堵した。

「そうですか…フィンコックもいい香りですね、香水ですか?」

柑橘系の良い香りだ。
宿す側の人間は一度香水を付けだすと、加減が分からなくなりキツくなることが多い。
ペア要望欄にも匂いのキツくない奴と書いてあるぐらいだ。

「いえっ僕のは普通の石鹸です。」

石鹸と聞いて驚いた。
貴族がお風呂に入るのは珍しい。
大抵は洗浄魔法で済ます、時間と労力の節約に。
まさか、フィンコックは…。

「洗浄魔法使えないんですか?」

答えが返ってこなかった。
洗浄魔法は生活魔法であり基本魔法だ。
魔力が枯渇した場合や魔力拒否が起きた時に風呂を使用する。
フィンコックは常に魔法の授業を手を抜いていたのかと認識していたが実際は、私が思っているより魔力量や使い方に問題があるのでは?

「分かりました、基本魔法から訓練しましょう。」

「あ、あの違うんです…お風呂が好きです。」

「おふろがすき?」

「はい」

おふろがすき…おふろがすき…おふろがすきってどういう意味だったのか急に分からなくなった。

お風呂好き?

貴族意識が高い者ほど「風呂」と言うものを知らないだろう。
何年も昔に風呂が流行ったこともあったと聞いたが、今では廃れた。
その当時いた光属性の人間が風呂好きだったので、関心を引くために風呂好きが現れたとか…。
だが、光属性が居なくなると風呂好きも消えた。

噂に惑わされているとは思っていなかったが、フィンコックは意外性ばかりだ。

「上部だけでは分かりませんね。」

初めてフィンコックの部屋に入った。
生徒の部屋には、体調不良になった者を運んだ時に何度か入ったが…。

フィンコックの部屋は緊張した。

当然緊張を悟られないように平静を保った。
ベッドまで運ぶ…ただそれだけだ。
私に邪な感情は無い…。
安心しきったように身体を私に預けている姿は私の事を信用している…。
私が生徒の思いを裏切るわけにはいかない。

「ギノフォード先生ありがとうございます。」
 
力無くも笑顔を作ろうとする健気な姿に心を持っていかれた…。
私は教師だ。
生徒にこのような感情は…。

…首の噛み痕が目障りだな。
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