【完結】ハーレムルートには重要な手掛かりが隠されています

天冨七緒

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二章 ハーレムルート

始業式

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基本ライアン様の部屋から出ないまま日々が過ぎていき、ついに始業式を向かえることになった。
ライアン様の部屋が僕の部屋なんじゃないかってくらい自然に出入りできてしまう。
一度部屋に戻ったが、自分の部屋なのに慣れなかった…ライアン様の部屋方が今では落ち着いてしまう。

制服を着てライアン様に会いに行く。
さっきまで一緒だったのに、姿を見るとドキドキする。

制服姿のライアン様、格好いい。

今日からまた手を繋いで二人で学園に向かう。
周囲の生徒も僕達が一緒に歩くことにもう慣れているはずなのに、数週間休暇を挟むと再び注目を浴びている気がする。

まさか…またっ首?

部屋を出る前に鏡で確認し噛み痕は無かったと判断した。

「よぉ、お二人さん。」

「あっエドバルドさまっおはようございます。」

「おぅ、フィンコック。」

「にゃぁんっ。」

エドバルド様に頬を触られたと思えばそのまま顔が近付き驚いた。
咄嗟にキスされると思い身体が反応し、手を突っぱね距離を取っていた。

び、吃驚した…キスされるかと思った。

「お前っ。」

「悪い悪いつい、可愛くて…それになんだよ、にゃぁんって」

ライアン様が、咄嗟に僕とエドバルド様の間に入った。
エドバルド様はどうしちゃったの?
それに…可愛いって言ったの?
エドバルド様はそんな人だったっけ?

「今、婚約の話で盛り上がってるらしい。」

「えっ?婚約。」

って、僕達の事?
それって自意識過剰かな?

「そっ、ライアンとフィンコック様の…それと…王子とオルセー侯爵令息の二組の婚約話。」

「…王子とオルセー様?」

オルセー様って誰だろう?
同じクラスにそんな人の名前はなかった。

ん?

二人が僕を見てる…なんで?
やっぱり噛み痕が?
両手で首を隠した。
二人は僕を見つめたまま何も言ってくれない。

何?何?何?

僕を置いて二人は歩きだした。
ねぇ、教えて僕の首には噛み痕付いてるの?
不安なままライアン様の後ろを付いていく。

「にゃ゛ん」

首の痕が気になっていると、急に立ち止まるライアン様にぶつかってしまった。

「シャルさっきからどうした?」

「ラ、ライアン様?僕の首に何か付いてるの?」

「あ?何かってなんもねぇだろ?」

「その…キスの痕とか噛んだ痕…。」

だから皆が僕の事を見てるんだよね?
恥ずかしい。

「…手、離して見せてみろ。」

ゆっくり手を離した。
顎を取られ、首を左右に振られじっくり確認してくれてる。
ライアン様の顔が凄く近い。

「にゃぁああん」

首を噛まれその後に吸われた。
今はクラス分けの掲示板に向かう途中、疎らとはいえ生徒もいない訳じゃない。
僕の喘ぎ声に多くの人が振り返り注目を浴びてしまった。

「これで付いたな。」

付いたな…?
付けちゃったの?
再び僕は首を覆った。

「そんなに恥ずかしいのかよ?」

「はっ恥ずかしい。」

「婚約ってだけじゃ足りないな…分かりやすくシャルは俺のだって印が欲しかったんだよ。」

ライアン様と目が合わなかった…。
なんだか…辛そう?
僕はライアン様のだよ。

「ぼ、僕もラ、ライアン様に…付けたい…です。」

「あぁ、付けろよ。」

優しいライアン様。

「あっここでじゃなくて、部屋でゆっくり…。」

「わかった、始業式終わったらな。」

「ぅん。」

あぁ、僕は今とっても幸せです。
神様、この世界に来させてくれてありがとうございます。

「…二人ってさぁ、ここがどこか分かってる?」

うわっ物語の終わりのように神様に感謝の言葉を告げていたのに、エドバルド様の声で現実に引き戻された。

現実は今日僕達は三年生になり、今はほぼ変わらないクラス分けの掲示板前に来ている。
当然そこには僕とライアン様以外にも沢山の人がいて、見渡せばいろんな人と目が合う。

また、やってしまった。

恥ずかしい。
注目されるの苦手なのに。

ライアン様の腕に隠れる仕草を取ってしまった。
頑張って何事もなかったように掲示板でクラスを確認し逃げるように立ち去った。
ライアン様達はAクラスで僕がFクラスのまま、例え変わったとしてもライアン様と同じクラスになるのは無理なことだって分かってる。
変わらないのは僕達のペアだけ。それだけ変わらないのであれば僕は頑張れる。

ふふ。

だって僕達は婚約者なんだから。

僕達は自分達の教室に入った。
二年の時と全く変わらない顔ぶれ…多分。
クラス皆の顔と名前を覚える前に三年生になっちゃった。
一年生の頃から変わらないのに今更名前なんて聞いたら失礼だよね?
それとなく、聞き耳立てながら覚えるしかないかな。
いつものように教室では一人で過ごす。
視界の隅で誰かの視線を感じる…。
そちらを向けば睨むように僕を見ている人物がいた。

あの時の彼だった。

ライアン様に婚約を持ちかけた人…。
謝るのも違うよね…謝ったら僕が立ち聞きしてたのを白状するもので、聞かれたなんて知られたくないよね。

どうしたら良いんだろう。

どうにも出来ないまま講堂に集まり、始業式が始まる。
獣人の検査もあり時間もかかるので椅子が用意されていた。
学園長の挨拶から始まり、担任の紹介に生徒会長である王子の挨拶に新たな生徒会の紹介。
初めて聞く名前ばかりで覚えるのが大変…というより、僕の頭は覚えるのを放棄していた。
壇上に上がった人達で知ってるのはギノフォード先生と王子の名前くらいだった。
王族って名前長いよね…レイモンド殿下?第一王子?なんて呼ぶのが正しいのかな?
シャルマンはレイモンド王子って呼んでたけど、名前を呼ぶ許可貰ってないって誰かが言ってたのは本当かな?
不敬罪で捕らえられたくないから、僕は王子を王子と呼ぶ。
それに僕は今はライアン様の婚約者だもん、他人の婚約者を軽々しく名前なんて呼べないよね。
もう近付かないし名前も呼ばないから、今までの罪が無くなったりしないかな?
僕はもうライアン様しか見ませんから、どうか許してください。
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