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二章 ハーレムルート

ふしだらな生活と新たなウワサ

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あれから僕達は始業式が始まるまでの残りの二日をほぼ繋がったまま過ごした。
食事等最低限離れることはあっても、起きている大半は裸で触れあっていた。
僕はずっとライアン様の部屋に入り浸っていれば、学園に戻りつつある生徒達がどんな噂をしているのか分かりそうなのに全く気にしていなかった。

僕は現実から離れ、文字通り「二人だけの世界」を堪能していた。

寮に戻ってからライアン様の身体が美味しくて舐めることを止められない。
キスが美味しくて唇を離したくなかったのに、今では美味しさを追いかけて身体中を舐め続ける。
どうしちゃったんだろう。

「擽ってぇよ。」

擽ってぇと言われてるのに舐めるのが止まらない。
ペロペロと唇を舐め首筋に移動し、逞しい胸を通り突起に辿り着く。
ライアン様がいつもしてくれるような「吸う」「噛む」などはせず、ひたすら舐め続けた。
腹筋の割れ目や臍に着くと舌先で遊ぶように舐め続けた。

僕は本当にどうしてしまったんだろうか?


学生寮では、戻ってきた生徒達による新たな情報や噂が広まっていた。

「聞いた?婚約の話。」

「聞いた聞いた、まさかだよな。」

「今までとペアとの雰囲気違うとは思ってたけど、本当に婚約するとはね。」

名前は出さなくても誰の事を話しているのかはすぐに見当がつき続々と人が加わってくる。

「いくら、ペアとの相性がよくても伯爵家でしょ?しかも辺境の。」

言葉や態度から嘲りが見える。

「あぁ、よく婚約したよな。王子しか見てなかったのに。」

「公爵家に婿入りって事はないよな?兄貴居たもんな?」

「やっぱり伯爵家の方だよね?」

「アイツが?」

「サンチェスターもよくあいつを躾たよな。」

「調教師の才能あるな。」

「まさにそれ、暴れ馬だったなっ」

会話から分かるように至るところでシャルマン フィンコックとライアン サンチェスターの婚約話で盛り上がっていた。
その中に、祝福を口にする者は居なかった。
酷いものは「卒業する前に婚約解消するかもな」とウワサする人間もいた。
それだけ、シャルマン フィンコックの辺境伯爵令息との婚約は衝撃だった。
ただの伯爵令息であれば婚約者志願は沢山いただろうが、辺境が着いただけで誰もが嫌煙していた。
それなのに貴族のトップである公爵家、しかも高慢で差別意識のある人間が嫁ごうとしていることに皆が信じられない様子だった。
家族すらも一緒にいたくなくて王都から追放したと聞かされた方が納得できる。
あれが辺境伯爵令息と婚約だなんて…。

バタバタと大きな足音を立て駆けて来る生徒が居た。

「おーい、聞いたか?婚約の話。」 

「もう、皆知ってるよ。」

既に婚約話で盛り上がっていた生徒達は駆けて来た生徒に対してマウントを取るように答えた。

「本当かよ?」

皆の反応にガッカリというか、物足りなさを感じていた。

「今、皆で話してたところ。」

「なら、これからは堂々と王子の婚約者に立候補出来るよね。」

「そうだな」

シャルマン フィンコックは本人の素養を抜きにすれば、一番の王子の婚約者の有力候補だったのだから。

「…ん?何言ってんだ?」

一人、話に付いていけない者がいた。
先程駆けてきた生徒だった。

「だから、フィンコックが婚約したから王子に堂々と近付けるって話。」

周囲の人間は彼を残し王子攻略に乗り出そうとしていた。

「ん?何言ってんだ?王子、婚約したろ?」

「「「「「「「「………え゛ーーーーーー」」」」」」」」

彼の衝撃的発言に全員の声が重なった。

「だ、だ、誰と?」

「ローレンド オルセー。」

「…侯爵家の?」

「そうだよ、その話じゃなかったのかよ?」

「いや…俺たちはフィンコックの…。」

マウントが逆転した。

「まぁ俺もついさっき父からの手紙で知ったんだ、王子とローレンド オルセーの婚約を。」

「………。」

「…もしかしてさぁ。」

「ん?」

「フィンコックが婚約したからじゃない?」

フィンコックが婚約すると王子も婚約する…彼が何を言っているのか理解できずにいた。

「…王子がフィンコックを意識しての当て付けってことか?」

「違う違う、フィンコックが暴れるから守るために今までは公表を避けてたんじゃないかってこと。」

「「「あぁ」」」

それなら納得できるという反応だった。

「それはあるな。」

「もしフィンコックが王子諦める前だったら、侯爵家とはいえ太刀打ちできないよな。」

高位貴族の侯爵家といえどもフィンコックは公爵家。
歴史も長く功績がある家門だ、公爵の中でも上。
彼らを相手に出来るのは王族のみ、侯爵家では太刀打ちできない…から公表を避けていた?

「性格的にもね…学園だと監視を付けるにも限界があるから…。」

「なら、以前から王子の婚約は決まってたって事?」

「そうなるな。」

想像で彼らの話は膨らんでいった。
まだ、王子が婚約したとしか情報が流れていないというのに。

「なぁんだ、残念。」

「王子もオルセーもよく隠してたね。」

「まぁ、アレが怖かったんでしょ。」

「なんか…それを考えるとさぁ、あんだけ必死に追いかけてて…ふふっ。」

「お前っそれ以上言うなっ笑っちまうだろ。」

「だってぇー、気付かずに王子追いかけるとかさぁ。」

「「「「「シャルマン フィンコック…可哀想。」」」」」

「「「「「「アハハハハ」」」」」」

彼らの中にフィンコックから被害を受けたものが本当に存在するのか。
彼らは噂のフィンコックだけで妄想し会話していた。
平民が貴族の無様な姿を目撃し喜ぶように、貴族は高位貴族が落ちぶれるのを楽しまずにはいられなかった。
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