【完結】ハーレムルートには重要な手掛かりが隠されています

天冨七緒

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一章 純愛…ルート

迷惑…掛けてばかりですよね…

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目覚めるとベッドに横になっていた。

あぁ、またしてもギノフォード先生に迷惑をかけてしまったんだと思った。
魔法を使う度に部屋まで運んでもらっていたら、訓練以上に迷惑掛けているのでは?
これからは気を付けないと。

普段通り学園に行くも何だか皆に見られているというより睨まれている気がする。

また僕は何かしちゃったのかな?

…噛み痕?
最近漸く薄くなったと思ったけど…僕の知らないところにあったりするのかな?急いでお手洗いに行き首を確認した。
目立った痕は見られなかった。

なら、何で見られてたのかな?

僕の勘違い?
自意識過剰だったのかな?

「フィンコック」

振り返らなくてもギノフォード先生だって分かった。
香水でもない先生の香りで。
先生って大人で良い香りがするの、ちょっとエッチ。

「ギノフォード先生っ」

嬉しくて笑顔になってしまう。
たった一度の訓練で僕は先生が好きになった。
…先生として好きって意味です。

「身体は大丈夫ですか?」

昨日は先生に止めないと言われたのに続け倒れてしまい反省した。
こういうのって僕が悪いのに監督責任を問われ先生が悪く言われたりするから…。
僕が悪いのに…続けるのは迷惑になるんじゃ…。

「…はぃ……センセ?」

「何でしょう?」

「迷惑じゃないですか?」

「ん?何がです?」

「…僕…先生に運んでもらちゃってばかりで…。」

「構いませんよ、真面目に頑張っている生徒の為ですから。」

…真面目に…。
今まで不真面目だったと聞いたし、先生もきっとそう思っていたはず。
なのに、今は真面目にやっていると評価してくれた。

嬉しい。

「…本当に?」

「本当です……訓練、辛いですか?」

先生の問いに首を振った。
辛くない…魔法は楽しいから。

「訓練辞めますか?」

ヤダっ…。
…ヤダって言いたいのに、言えなかった。

「そんな泣きそうな顔しないでください。」

泣きそうな顔?
僕はそんな顔しちゃってるの?

「魔法は好きですか?」

「………はぃ」

泣きそうなんだと自覚した途端涙がこぼれそうだった。
耐えるのに歯を食いしばっていた。

「訓練は無理にしなくて良いですよ、したい時に声掛けてくださいね。」

「あっ」

去っていってしまう先生の服の裾を無意識に掴んでいた。

「どうしました?」

「…く、訓練…したいです。」

廊下ということを忘れて発声した僕の声は結構響いてしまい、廊下にいた他の人達が振り向き僕に視線を向けた。
僕は慌て口を覆った。

「焦らなくて良いんですよ。」

先生は僕を諭すように言うも僕には「諦めなさい」と聞こえた。

「うんん、訓練したいんです…先生の迷惑じゃなければ。」

今度は静かに周囲を気にして伝えた。

「…分かりました、次はいつにしますか?」

「…きょっ、今日…はダメ?ですか?」

先生の方が諦めてくれて、僕は急いで次の約束をした。
日にちを伸ばすと、冷静になり断られるのでは?と考え一番早い日を言った。

「分かりました、では昨日と同じ場所で。」

僕に対して穏やかな笑みのギノフォード先生に見惚れてしまった。

「はいっ」

嬉しくて僕も笑顔で返した。
放課後は楽しみだったが、試験の時にまた苦労してしまうのを知ったので気を引き締めて授業に望んだ。

ふふん、放課後となれば魔法の訓練。
お昼はライアン様に会えず一人で済ませ、その後は図書室でいつもの本を借りなおした。

「初心者のための魔法の本」

今では僕の本なんじゃないかと勘違いしてしまいそうだった。

放課後になり普段通りにしているつもりでも周囲の人間には僕が浮かれているのは一目瞭然だった。

ギノフォード先生と約束の場所。
秘密の訓練、ワクワクする。

訓練は昨日と同じ二つの属性を同時に発動させること。
だけど、疲れてるのかな?
昨日より魔力が安定しなくなっているように思える。
集中してるのに、真剣にやってるのに何で?

「フィンコック、焦ることはないんですよ。」

僕の焦りはギノフォード先生にも伝わる。

「…はぃ」

どうしてだろう…昨日と同じようにしているのに上手く出来ない。

「少し休憩しましょうか?」

「………はぃ」

なんてか今日は上手くいかない。
上達した気がしない。
昨日あんなにやってコツを掴んだと思ったのに…。

「焦ってはいけませんよ、今まで連日魔力を使いきるなんてしたことなんじゃないですか?」

「…はぃ」

「きっと、身体が驚いているんですよ。すぐに魔力量は増えません、地道に努力するしかないんですよ。」

先生の優しい言葉に涙が溢れそうになる。
こんなことで泣きたくなんかないのに。

「…はぃ………先生?」

「なんです?」

「…僕は…Fクラスでは普通ですか?」

「魔力量の事ですか?」

「はい」

「そうですね…平均…ですかね。」

「…そう、なんですね。」

期待していた訳じゃない。
…けど、ちょっとだけ残念だった。
転生者の特別の何かは僕には無いみたい…。

「今日は、ここまでにしましょう。」

「ぇっ……はぃ……。」

昨日の事もあり先生が決めたことは逆らわないことにした。
魔法の本と同じ、注意事項は必ず守る。
今の注意事項は先生の言葉だった。

「ゆっくり、行きましょう。」

「はぃ」

少しだけ涙が出て、先生も気付かない振りをしてくれた。
続きは後日となり、今日の訓練はもう終わってしまった。
ギノフォード先生は励ましてくれたが、落ち込んでしまう。
魔力量は本人の努力次第で多少は変動はするものの、実際は生まれもっての器で決まるらしい。
僕の器はとても小さいんだと知った。
ギノフォード先生と別れ、一人部屋に向かう。
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