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一章 純愛…ルート

ライアン視点

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「シャルマン、多分遅くなるけど行くから。」

「はいっ」

笑顔で頷く姿に、初対面の時の無愛想な感じは全く無かった。
人見知りが激しかったのを誤解され続けたのかもな。
俺だけしか知らないシャルマンは、俺だけのモノだ。
また一つシャルマンを知る為に遅くなると嘘をついた。
待ち構えているシャルマンではなく、突然訪れた俺に驚く姿のシャルマンが見たかったイタズラ心だ。
俺が遅いと分かるとシャルマンは何をしているんだろうか?
早く行きたいが、多少は遅くならないと普段のシャルマンを見ることが出来ない…葛藤だ。
耐えて耐えて二十分程してから向かった。

大分我慢したな。

シャルマンの部屋に着きロックを解除した。
解除の音でシャルマンは気付いただろう。
扉を開けシャルマンの姿を探したが見当たらなかった。

まだ、帰ってきてないのか?

机を見れば鞄は置いてあったので、一度は帰ってきたはず。
部屋以外にはクローゼット・風呂場・トイレだけだ。
クローゼットの中に隠れてるなんて事はないだろう、居るとしたら風呂場とトイレ二つとも可能性は低いがトイレは無理でも風呂場は確認することにした。
脱衣所の扉を開けると着替えがあった。
風呂にいるのは意外だった。
俺が風呂を使う時は魔力に問題のある時だけだ。
今日のシャルマンは体調悪いようには見えなかったので、本当に居るのか不安で確認することにした。

「ペアがずっと続けば良いのに…。」

扉を開ける直前にシャルマンの声を聞いた。
俺の願望のような言葉をだった。

かちゃ

泡を身に纏ったシャルマンが驚いた顔で俺を見ている。

「ぁっご、ごめんなさい。僕…」

綺麗だ。

「…いや、俺も入っていいか?」

「ぇっ、ぁっうん」

幻想的な光景を終わらせたくなく俺も一緒に入ると宣言し、シャルマンは状況が理解できないまま頷いたのが分かったが俺はそれを利用した。
普段は常に壁を作り相手を寄せ付けない分、突発的状況に弱いらしい。
裸で現れた俺を視線を逸らすことなく真っ直ぐに見つめてくる。
自分の裸が好きでも嫌いでも無いが、シャルマンに見られるのは気持ちがいい。
洗浄魔法をかけ軽くシャワーを全身で浴びた。
いつまでも視線を逸らさないシャルマンにキスをしてから向き合う体勢で浴槽に浸かった。

「風呂好きなのか?」

確認せずにはいられなかった。

「ん?はいっ」

「珍しいな。」

貴族で風呂好きなんて聞いた事がなかった。

「…めずらしぃ?」

「あぁ、大体の奴は洗浄魔法やって終わりだろ?貴族なら尚更効率の悪い風呂を好むのは珍しいからな。」

「効率…ライアン様もお風呂入らないの?」

「あぁ」

屋敷や部屋にも風呂場は有るが、魔力が枯渇した時ぐらいにしか使わない。
洗浄魔法の方が洗い残しもなく綺麗になる。
それに一番は楽で時間の短縮にもなる。

「そぅ…なんだ…。」

残念そうだな。

「この匂いだったんだな。」

「へぇ?」

「髪とか身体。」

「はい…嫌い…でしたか?」

「ん、嫌じゃないな。」

寧ろシャルマンに似合っていて良い。
甘すぎない香り、程よく空腹を刺激する。
かぶり付きたくなる。

風呂かぁ…俺の選択肢には掠りもしなかったな。
悪くないな。
風呂場でのエッチも興奮する。
俺がこんなことを考えているとも知らず、目の前のシャルマンは困惑気に視線を彷徨わせている。
そんな表情を見ると揶揄かったり、意地悪したくなる。
シャルマンといると新たな自分に出合う。

「んにゃっ」

デコピンするように泡を飛ばせば、シャルマンの顔に泡が着いた。

「はは」

んにゃってなんだよ、んにゃって。
俺が笑ったのを怒ったようにシャルマンは両手で泡を集め俺めがけ吹き飛ばした。
泡は宙を舞い、顔や頭についた。

「ふふ」

たかが泡を受けただけの俺に気を良くしたのかシャルマンは子供のように喜んでいた。

無邪気過ぎる。

これのどこが、ワガママで高慢・差別主義の手の付けられない令息なのか俺には分からない。
見えない泡の中で腕を掴み強引に引き寄せ、シャルマンとの距離をなくした。
泡の下にある細く滑らかなシャルマンの身体を想像している俺をよそに、泡で遊ぶ姿のシャルマンはなんの穢れもない清らかな存在だった。
泡で遊びながら安全と勘違いしたのか徐々に近付いてくる。
俺が無抵抗に受け入れていることが罠だとも知らずに。
このままなにも知らない獲物を骨も肉も一欠片も残らず食ってやろうかと獰猛な感情が姿を現した。
シャルマンは俺に抱かれると呼吸を荒くし身体全体に熱が…。
いつもより顔が赤い?

「顔が真っ赤だな、逆上せたか?」

腰を抱え立ち上がらせた時にはシャルマンの身体には力が入っていないことに気付く。
勢い良く冷たいシャワーで全身から熱を奪った。
シャルマンの身体を隠していた泡が消えていけば、普段よりピンク色の肌が現れた。

「一人で出れるか?」

「んっ」

「………。」

「へぇきだよぉ。」

返事からして平気そうには聞こえなかった。

「…いや、少しここで座ってろ。」

浴槽の縁に座らせ急いで泡を完全に流す。
洗浄魔法を掛ければ良いと後に気付くも、今の俺は冷静さを欠いていた。
シャワーを止め振り返れば、潤んだ瞳と少し口を開いたエロいシャルマンが俺を悩殺していた。
本人はそんな意図はないかもしれないが俺は簡単に誘惑されキスをした。
頬に触れればエロい考えをしていた事を反省した。

「まだ、熱いな。」

これ以上欲情しないよう理性で本能を押さえ浴室を出て、風魔法で一気に乾かした。
ソファに身を預けるシャルマンを見て、今日も反省することが出来てしまった。
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