【完結】ハーレムルートには重要な手掛かりが隠されています

天冨 七緒

文字の大きさ
上 下
43 / 414
一章 純愛…ルート

ライアン視点

しおりを挟む
「シャルマン、多分遅くなるけど行くから。」

「はいっ」

笑顔で頷く姿に、初対面の時の無愛想な感じは全く無かった。
人見知りが激しかったのを誤解され続けたのかもな。
俺だけしか知らないシャルマンは、俺だけのモノだ。
また一つシャルマンを知る為に遅くなると嘘をついた。
待ち構えているシャルマンではなく、突然訪れた俺に驚く姿のシャルマンが見たかったイタズラ心だ。
俺が遅いと分かるとシャルマンは何をしているんだろうか?
早く行きたいが、多少は遅くならないと普段のシャルマンを見ることが出来ない…葛藤だ。
耐えて耐えて二十分程してから向かった。

大分我慢したな。

シャルマンの部屋に着きロックを解除した。
解除の音でシャルマンは気付いただろう。
扉を開けシャルマンの姿を探したが見当たらなかった。

まだ、帰ってきてないのか?

机を見れば鞄は置いてあったので、一度は帰ってきたはず。
部屋以外にはクローゼット・風呂場・トイレだけだ。
クローゼットの中に隠れてるなんて事はないだろう、居るとしたら風呂場とトイレ二つとも可能性は低いがトイレは無理でも風呂場は確認することにした。
脱衣所の扉を開けると着替えがあった。
風呂にいるのは意外だった。
俺が風呂を使う時は魔力に問題のある時だけだ。
今日のシャルマンは体調悪いようには見えなかったので、本当に居るのか不安で確認することにした。

「ペアがずっと続けば良いのに…。」

扉を開ける直前にシャルマンの声を聞いた。
俺の願望のような言葉をだった。

かちゃ

泡を身に纏ったシャルマンが驚いた顔で俺を見ている。

「ぁっご、ごめんなさい。僕…」

綺麗だ。

「…いや、俺も入っていいか?」

「ぇっ、ぁっうん」

幻想的な光景を終わらせたくなく俺も一緒に入ると宣言し、シャルマンは状況が理解できないまま頷いたのが分かったが俺はそれを利用した。
普段は常に壁を作り相手を寄せ付けない分、突発的状況に弱いらしい。
裸で現れた俺を視線を逸らすことなく真っ直ぐに見つめてくる。
自分の裸が好きでも嫌いでも無いが、シャルマンに見られるのは気持ちがいい。
洗浄魔法をかけ軽くシャワーを全身で浴びた。
いつまでも視線を逸らさないシャルマンにキスをしてから向き合う体勢で浴槽に浸かった。

「風呂好きなのか?」

確認せずにはいられなかった。

「ん?はいっ」

「珍しいな。」

貴族で風呂好きなんて聞いた事がなかった。

「…めずらしぃ?」

「あぁ、大体の奴は洗浄魔法やって終わりだろ?貴族なら尚更効率の悪い風呂を好むのは珍しいからな。」

「効率…ライアン様もお風呂入らないの?」

「あぁ」

屋敷や部屋にも風呂場は有るが、魔力が枯渇した時ぐらいにしか使わない。
洗浄魔法の方が洗い残しもなく綺麗になる。
それに一番は楽で時間の短縮にもなる。

「そぅ…なんだ…。」

残念そうだな。

「この匂いだったんだな。」

「へぇ?」

「髪とか身体。」

「はい…嫌い…でしたか?」

「ん、嫌じゃないな。」

寧ろシャルマンに似合っていて良い。
甘すぎない香り、程よく空腹を刺激する。
かぶり付きたくなる。

風呂かぁ…俺の選択肢には掠りもしなかったな。
悪くないな。
風呂場でのエッチも興奮する。
俺がこんなことを考えているとも知らず、目の前のシャルマンは困惑気に視線を彷徨わせている。
そんな表情を見ると揶揄かったり、意地悪したくなる。
シャルマンといると新たな自分に出合う。

「んにゃっ」

デコピンするように泡を飛ばせば、シャルマンの顔に泡が着いた。

「はは」

んにゃってなんだよ、んにゃって。
俺が笑ったのを怒ったようにシャルマンは両手で泡を集め俺めがけ吹き飛ばした。
泡は宙を舞い、顔や頭についた。

「ふふ」

たかが泡を受けただけの俺に気を良くしたのかシャルマンは子供のように喜んでいた。

無邪気過ぎる。

これのどこが、ワガママで高慢・差別主義の手の付けられない令息なのか俺には分からない。
見えない泡の中で腕を掴み強引に引き寄せ、シャルマンとの距離をなくした。
泡の下にある細く滑らかなシャルマンの身体を想像している俺をよそに、泡で遊ぶ姿のシャルマンはなんの穢れもない清らかな存在だった。
泡で遊びながら安全と勘違いしたのか徐々に近付いてくる。
俺が無抵抗に受け入れていることが罠だとも知らずに。
このままなにも知らない獲物を骨も肉も一欠片も残らず食ってやろうかと獰猛な感情が姿を現した。
シャルマンは俺に抱かれると呼吸を荒くし身体全体に熱が…。
いつもより顔が赤い?

「顔が真っ赤だな、逆上せたか?」

腰を抱え立ち上がらせた時にはシャルマンの身体には力が入っていないことに気付く。
勢い良く冷たいシャワーで全身から熱を奪った。
シャルマンの身体を隠していた泡が消えていけば、普段よりピンク色の肌が現れた。

「一人で出れるか?」

「んっ」

「………。」

「へぇきだよぉ。」

返事からして平気そうには聞こえなかった。

「…いや、少しここで座ってろ。」

浴槽の縁に座らせ急いで泡を完全に流す。
洗浄魔法を掛ければ良いと後に気付くも、今の俺は冷静さを欠いていた。
シャワーを止め振り返れば、潤んだ瞳と少し口を開いたエロいシャルマンが俺を悩殺していた。
本人はそんな意図はないかもしれないが俺は簡単に誘惑されキスをした。
頬に触れればエロい考えをしていた事を反省した。

「まだ、熱いな。」

これ以上欲情しないよう理性で本能を押さえ浴室を出て、風魔法で一気に乾かした。
ソファに身を預けるシャルマンを見て、今日も反省することが出来てしまった。
しおりを挟む
感想 195

あなたにおすすめの小説

ギルド職員は高ランク冒険者の執愛に気づかない

Ayari(橋本彩里)
BL
王都東支部の冒険者ギルド職員として働いているノアは、本部ギルドの嫌がらせに腹を立て飲みすぎ、酔った勢いで見知らぬ男性と夜をともにしてしまう。 かなり戸惑ったが、一夜限りだし相手もそう望んでいるだろうと挨拶もせずその場を後にした。 後日、一夜の相手が有名な高ランク冒険者パーティの一人、美貌の魔剣士ブラムウェルだと知る。 群れることを嫌い他者を寄せ付けないと噂されるブラムウェルだがノアには態度が違って…… 冷淡冒険者(ノア限定で世話焼き甘えた)とマイペースギルド職員、周囲の思惑や過去が交差する。 表紙は友人絵師kouma.作です♪

普段「はい」しか言わない僕は、そばに人がいると怖いのに、元マスターが迫ってきて弄ばれている

迷路を跳ぶ狐
BL
全105話*六月十一日に完結する予定です。 読んでいただき、エールやお気に入り、しおりなど、ありがとうございました(*≧∀≦*)  魔法の名手が生み出した失敗作と言われていた僕の処分は、ある日突然決まった。これから捨てられる城に置き去りにされるらしい。  ずっと前から廃棄処分は決まっていたし、殺されるかと思っていたのに、そうならなかったのはよかったんだけど、なぜか僕を嫌っていたはずのマスターまでその城に残っている。  それだけならよかったんだけど、ずっとついてくる。たまにちょっと怖い。  それだけならよかったんだけど、なんだか距離が近い気がする。  勘弁してほしい。  僕は、この人と話すのが、ものすごく怖いんだ。

人気アイドルになった美形幼馴染みに溺愛されています

ミヅハ
BL
主人公の陽向(ひなた)には現在、アイドルとして活躍している二つ年上の幼馴染みがいる。 生まれた時から一緒にいる彼―真那(まな)はまるで王子様のような見た目をしているが、その実無気力無表情で陽向以外のほとんどの人は彼の笑顔を見た事がない。 デビューして一気に人気が出た真那といきなり疎遠になり、寂しさを感じた陽向は思わずその気持ちを吐露してしまったのだが、優しい真那は陽向の為に時間さえあれば会いに来てくれるようになった。 そんなある日、いつものように家に来てくれた真那からキスをされ「俺だけのヒナでいてよ」と言われてしまい───。 ダウナー系美形アイドル幼馴染み(攻)×しっかり者の一般人(受) 基本受視点でたまに攻や他キャラ視点あり。 ※印は性的描写ありです。

【完結】極貧イケメン学生は体を売らない。【番外編あります】

紫紺
BL
貧乏学生をスパダリが救済!?代償は『恋人のフリ』だった。 相模原涼(さがみはらりょう)は法学部の大学2年生。 超がつく貧乏学生なのに、突然居酒屋のバイトをクビになってしまった。 失意に沈む涼の前に現れたのは、ブランドスーツに身を包んだイケメン、大手法律事務所の副所長 城南晄矢(じょうなんみつや)。 彼は涼にバイトしないかと誘うのだが……。 ※番外編を公開しました(10/21) 生活に追われて恋とは無縁の極貧イケメンの涼と、何もかもに恵まれた晄矢のラブコメBL。二人の気持ちはどっちに向いていくのか。 ※本作品中の公判、判例、事件等は全て架空のものです。完全なフィクションであり、参考にした事件等もございません。拙い表現や現実との乖離はどうぞご容赦ください。 ※4月18日、完結しました。ありがとうございました。

【完結】ぎゅって抱っこして

かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。 でも、頼れる者は誰もいない。 自分で頑張らなきゃ。 本気なら何でもできるはず。 でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。

何も知らない人間兄は、竜弟の執愛に気付かない

てんつぶ
BL
 連峰の最も高い山の上、竜人ばかりの住む村。  その村の長である家で長男として育てられたノアだったが、肌の色や顔立ちも、体つきまで周囲とはまるで違い、華奢で儚げだ。自分はひょっとして拾われた子なのではないかと悩んでいたが、それを口に出すことすら躊躇っていた。  弟のコネハはノアを村の長にするべく奮闘しているが、ノアは竜体にもなれないし、人を癒す力しかもっていない。ひ弱な自分はその器ではないというのに、日々プレッシャーだけが重くのしかかる。  むしろ身体も大きく力も強く、雄々しく美しい弟ならば何の問題もなく長になれる。長男である自分さえいなければ……そんな感情が膨らみながらも、村から出たことのないノアは今日も一人山の麓を眺めていた。  だがある日、両親の会話を聞き、ノアは竜人ですらなく人間だった事を知ってしまう。人間の自分が長になれる訳もなく、またなって良いはずもない。周囲の竜人に人間だとバレてしまっては、家族の立場が悪くなる――そう自分に言い訳をして、ノアは村をこっそり飛び出して、人間の国へと旅立った。探さないでください、そう書置きをした、はずなのに。  人間嫌いの弟が、まさか自分を追って人間の国へ来てしまい――

僕の太客が義兄弟になるとか聞いてない

コプラ@貧乏令嬢〜コミカライズ12/26
BL
 没落名士の長男ノアゼットは日々困窮していく家族を支えるべく上級学校への進学を断念して仕送りのために王都で働き出す。しかし賢くても後見の無いノアゼットが仕送り出来るほど稼げはしなかった。  そんな時に声を掛けてきた高級娼家のマダムの引き抜きで、男娼のノアとして働き出したノアゼット。研究肌のノアはたちまち人気の男娼に躍り出る。懇意にしてくれる太客がついて仕送りは十分過ぎるほどだ。  そんな中、母親の再婚で仕送りの要らなくなったノアは、一念発起して自分の人生を始めようと決意する。順風満帆に滑り出した自分の生活に満ち足りていた頃、ノアは再婚相手の元に居る家族の元に二度目の帰省をする事になった。 そこで巻き起こる自分の過去との引き合わせに動揺するノア。ノアと太客の男との秘密の関係がまた動き出すのか?

平凡な俺が双子美形御曹司に溺愛されてます

ふくやまぴーす
BL
旧題:平凡な俺が双子美形御曹司に溺愛されてます〜利害一致の契約結婚じゃなかったの?〜 名前も見た目もザ・平凡な19歳佐藤翔はある日突然初対面の美形双子御曹司に「自分たちを助けると思って結婚して欲しい」と頼まれる。 愛のない形だけの結婚だと高を括ってOKしたら思ってたのと違う展開に… 「二人は別に俺のこと好きじゃないですよねっ?なんでいきなりこんなこと……!」 美形双子御曹司×健気、お人好し、ちょっぴり貧乏な愛され主人公のラブコメBLです。 🐶2024.2.15 アンダルシュノベルズ様より書籍発売🐶 応援していただいたみなさまのおかげです。 本当にありがとうございました!

処理中です...