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一章 純愛…ルート

ライアン視点

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これでシャルマンはいつでも俺の部屋に来ることが出来る。
いつ来るのか楽しみで仕方がなく、廊下を歩いているだけでシャルマンの姿を探すようになってしまった。

「シャルマン」

食堂で見つければ自然と声をかけていた。
シャルマンも笑顔で駆け寄ってくる。

「今…フィンコック様の事シャルマンって呼んだよな?」

「うん、僕にもそう聞こえた。」

「あの二人って…。」

俺の後ろにいたエドバルドとフレデリックがヒソヒソと会話するも聞こえていた。
急に俺がフィンコックをシャルマンと呼んだ事に驚いている様子だった。
二人だけでなく、俺の声を聞いた数人の生徒も振り返っている。

「一緒に食うか?」

俺の誘いで更に周囲がザワついた。
シャルマンは嬉しそうな表情をするも頷くことは無かった。

「…お邪魔しちゃ悪いから、僕は…。」

シャルマンは俺の後ろにいる二人に遠慮していた。

「誰?」

「本当にあのフィンコック様?」

二人も噂と違いすぎるシャルマンに混乱し、いつもなら大体の事は受け入れるエトバルドもなにも言ってこなかった。
俺は徐々に受け入れたが、突然本当のシャルマンを受け入れろと言うのは難しい事だ。

「シャルマン、こっちがエドバルド、んでこっちがフレデリック。」

このままではシャルマンがいつまでも二人に遠慮し、俺と一緒に食事を取る事はないと予測出来たので俺が紹介した。

「一緒でいいな?」

半ば強引に食事する事を了承させた。

「ペアでここまで変わるんだな。」

俺が変えた訳じゃない。
シャルマンが無理に演じていたのを辞めただけで、その時俺が側に居たに過ぎない。
それでも俺は側に居ることが出来て良かった。

俺はここにいるすべての人間に見せつけるようシャルマンの肩を抱き寄せ歩いた。
恥ずかしそうにしながらもシャルマンも素直に従う。

「「マジ?」」

二人の反応は分かりやすくていい。

その後は四人で食事を取った。
エドバルドが祭りの話をした時、シャルマンは分かりやすく表情を変えたのを俺は見逃さなかった。

「お祭り?」

行きたいのが伝わる。
また、新たなシャルマンだな。

「…ぃ、行って…みたぃ…。」

遠慮しがちに言う姿は、ここが食堂でなければキスしていただろう。
エドバルドとフレデリックは素直なシャルマンに驚いている様子で、きっと噂が一人歩きした為に、シャルマンは素直になれず一人我慢し苦しんでいたに違いない。
新たなシャルマンを他の奴らに教えたくはないが、不名誉な噂や辛さからは解消されてほしい。

「あぁなら、一緒に行くか?」

「ぅん」

たかが祭りに行けるくらいでそんな笑顔をするのか?
これからは噂なんて気にせず好きなことをしたらいい。
俺がさせてやる。

「ライアン様。」

食事を終え教室に戻る時に小声で名を呼ばれた。

「「ライアン…様?」」

二人はそこに驚いたようだ。
名前を呼んだだけだ…シャルマンには俺が知らないだけで他にも色んな噂がありそうだな。

「ライアン様、今日は…」

「あぁ、…来るか?」

「んん、来て。」

「わかった。」

自らの意思で部屋に来てほしいと望まれた。
あんな可愛く「来て」なんて言われたら何がなんでも行くしかない。
今すぐにでも行きたくなる。
あんな上目遣いで不安気な顔をされては、どんな願いも叶え抱きしめたくなる。

その後俺たちのやり取りを目の当たりにしたエドバルドとフレデリックからは質問攻めにされたが全く聞こえなかった。
今すぐにでもシャルマンと二人きりになりたい…それだけだ。

早くシャルマンの部屋に向かいたいというのに、今日に限って教師に呼び出された。

「昨日の薬の効果についてペアの君に尋ねたい。君から見てフィンコックはどう見えた?」

昨日のシャルマンの様子を報告をしろと言うことか。

「どうとは?」

「先に言っておくが、私はシャルマン フィンコックを疑っているわけではない。以前、薬服用後にある理由から媚薬の反応が出たように装った者がいた。それ以後は、媚薬や自白の反応が出た者は確認しなければならなくなった。ペアの君から見てフィンコックの反応は本物か演技、どちらだと思う?」

媚薬?あれは媚薬と呼ばれていたのか…。
催淫じゃなかったのか?
どちらも似たようなもんか…?

「俺には、演技しているようには感じませんでした。」

「………そうか。因みにどのくらいの時間、薬の効果があった?大体で構わん。」

「翌日には抜けていました。」

「………わかった。」

「はい」

いち早くシャルマンの部屋に向かいたかったのだが、少々時間が取られた。
焦る気持ちを押さえ、走らずに早足でシャルマンの部屋まで向かった。
すれ違う人間は俺の様子に驚き、振り返る者はいたが声をかけてくる者は居なかった。
シャルマン以外の他人など気にせず、シャルマンの部屋を目指すことで頭が一杯でシャルマンの部屋の前に付けば、走ってきたことを隠すた為に大きく深呼吸をした。

コンコンコン

扉を開ける前に確認したのか?と疑問に思う程、間髪をいれずに扉が開いた。
愛くるしい笑顔に頬が緩みそだったのでシャルマンの前を歩いていたが、いつの間にかシャルマンに導かれ操作盤の前にいた。

「ライアン様の登録して。」

意味をちゃんとわかっているのか?

「俺のしたら、自由に入れんだぞ。良いのか?」

嬉しくない訳じゃない。
ただ俺に丸め込まれる形ではなく、シャルマンの意思で俺を受け入れて欲しい。

「ライアン様なら、いつでも来て欲しい。」

恥ずかしげに俯きながら言う姿…。
なぁ、俺の事どう思ってるんだ?
まだ…王子とペアになりたいとか考えてるか?

「…そうか。なら、まずシャルマンの…」

少しずつシャルマンとの距離が近づいているはずなのに、不安が明確になってきている気がする。
シャルマンが離れていくかもしれない恐怖から目を逸らし、目の前の現実を噛み締めた。

「ライアン様、いっぱい来てね?」

俺は弱い人間だ。
シャルマンの気持ちを聞くのを躊躇いキスで誤魔化した。
真実を聞くよりも、今は俺を受け入れて欲しかった。
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