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一章 純愛…ルート

ライアン視点

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この日、始めて約束もなくフィンコックの部屋を訪れた。
俺とのペア解消とキスの件をいち早く確認したかった。
突然来た俺に対して、もてなそうとするフィンコックだったが俺は冷静ではいられなかった。
回りくどい会話はすっ飛ばし、ペアについて聞き出した。
フィンコックはいくら聞いても自身の気持ちは話さず、俺に従うと。

俺はフィンコックがどうしたいかが知りたいんだ。
ペア継続か解消か。

それの意思表示をキスにした。
キスしたいという言葉は真実なのか嘘なのかを確かめたかった。
ゆっくり近付き俺の肩に優しく触れ、瞼を閉じる姿から目を離すことが出来なかった。
触れるだけのキスだが、フィンコックからだと思うと幸福で満たされる。
真っ赤な顔で俺を見つめてくる。
そんな顔すれば悪い奴に騙される、俺みたいな奴に。

「今のはなんだ?…今のはキスか?」

意地悪すれば、フィンコックは震え出した。
俺は自身の性格が悪かった事を知る。
なにも知らないフィンコックが嬉しくて強引にキスをした。
逃げられないようにフィンコックの頭を抱え、唇や舌を堪能した。
フィンコックの反応からして、キスが慣れていないのではなく初めてであると確信した。
俺に捕まるフィンコックの手に力が入った。
舞い上がってしまいフィンコックの舌を離せなくなり、長いキスをしていたら息遣いが荒くなっているのを感じた。
唇が離れても薄く開き舌を覗かせるのは明らかに俺を誘っている。
キスしたばかりだというのに再びフィンコックの唇を感じたかった、一度では満足できない。

「これがキスだ、さっきのはキスじゃない。やり直し。」

フィンコックからのキスを再度求めた。

「ペア解消したいのかよ?」

不安が無かったわけではないが、浮かれすぎて当然解消したくないよな?と強気に聞いてしまった…相手は公爵令息だと言うのに。
俺の無礼な言動に対しても何も咎めること無く、「解消」という言葉に頭を振る姿は嬉しすぎて堪らない。

「なら、フィンコックからちゃんとしたキスをしろ。」

俺の唇から視線を外さないフィンコックを本能が暴走し押し倒さないよう、理性を総動員した。
少し頭を傾ける仕草は誘惑でしかなかった。
焦らすように俺の唇に触れた。
意地悪に口を閉じ続ければ舌で唇をなぞられた。
その舌を捕らえたくて口を開けば、罠だとも知らずに獲物が飛び込んできた。
初めはフィンコックの舌を待ち構えていたが徐々に立場は逆転していき、フィンコックの腰に腕を回し引き寄せ俺の上に座らせた。
フィンコックは抵抗することなく、俺に跨がった。

「はぁはぁはぁはぁはぁはぁはぁはぁ」

唇が離れれば、ひたすら呼吸を繰り返していた。
口を開けている姿は艶かしかった。

「フィンコックの気持ちはわかった、これが俺の答えだ。」

「ぇ?」

当然、フィンコックの唇を塞いだ。
強く抱きしめ、フィンコックの全てを俺のものにする為に激しいキスをした。
俺の肩を掴んでいた手の力が弱くなりフィンコックは酸欠で気を失った。
それで漸くやり過ぎたと反省した。
あのキス嫌いのフィンコックからキスを求められてしまえば浮かれるのは仕方がない。
これ以上はフィンコックを壊しかねないと理性が勝ち、大人しくベッドへ運ぶことが出来た。
フィンコックを寝かせると枕が硬い事に気付いた。
不審に思い確認すると、本が隠されていた。

「騎士様に奪われたい」

これは何年か前に流行った純愛ものらしき本だ。
何故「らしき」なのかと言えば、続編が出た時にはエロ物語になっていたからだ。
大人な騎士による性愛が激しく綴られた物語だ。
観劇の演目にもなったが、その時はあまりにも情熱的で刺激的で魅力的な為に役者全員が目元を隠す仮面劇だったと聞いた。
その手の話に疎い俺でも知っている。
内容が過激すぎるのではと話題となり、議論され一時は上演中止になったとか。
そんな話をフィンコックが?
隠されていた本は、まだ出会い編の健全な頃の話だ。
まさか、あの観劇を見たことがあるのか?
なんでもその観劇を恋人や夫婦で見れば妊娠の確率が上がると、おかしな噂話が上がるほどだったのに。

エロを望んでいるのか?

こんな顔も性格も綺麗でキスも今日知ったような清純な奴がエロを?
もしそうなら、俺が叶えてやる。

「してほしいことは何でも俺に言えよ。」

眠っているフィンコックに告げ、おやすみのキスを贈った。
舌は絡ませなかったが唇を何度も食べるようなキスは眠る相手に贈るキスではなかった。
本当なら離れたくなかったが、離れないと眠っている相手に何をするか分からない自分が怖かった。
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