上 下
23 / 414
一章 純愛…ルート

放課後は

しおりを挟む
僕はライアン様の部屋に自由に入れる…ライアン様は僕の部屋に自由に入れない。
ライアン様にも僕の部屋の登録して欲しいな…。
言ったらしてくれるかな?

「ライアン様…今日来てくれるかな?」

僕からライアン様の教室行ったら迷惑だよね?
食堂で会えたりしないかな?

「シャルマン」

名前を呼ばれ振り向けばライアン様が居た。
それだけで嬉しくて、ライアン様の元へ駆け寄った。

「一緒に食うか?」

嬉しくて頷きそうになるも耐えた。
何故なら、ライアン様の後ろには二人の友人がいたから。
僕でも知ってる、いつもライアン様と一緒にいる人達。

「ぁっ…お邪魔しちゃ悪いから、僕は…」

「誰?」

「本当にあのフィンコック様?」

ライアン様ではない声の方へ視線を送る。

「シャルマン、こっちがエドバルド、んでこっちがフレデリック」

エドバルドさんはライアン様と同じくらいの体格で髪と瞳の色がグレーな人。
フレデリックさんはライアン様達より五センチ程低く、髪はグリーンで瞳はブラウンだった。
それでも僕より二十センチ程は高い。

「一緒でいいな?」

「…俺は構わない。」

「うん、僕も…フィンコック様が宜しいのであれば…。」

ライアン様の言葉に否定しないのは三人が仲が良いからで、そこに僕が混ざって良いのかな?
僕と一緒じゃ色々と迷惑が…。

「………。」

「シャルマンは嫌なのかよ?」

「えっ、僕は嫌じゃないの…ただ…僕と一緒だと…」

変な噂されちゃうから…。

「コイツらも良いって言っただろ?」

ライアン様を疑っている訳じゃない。
ただ、信じられないというか…図々しくないかな?
ここは遠慮するべきところなんじゃないかな?

「本当に良いの?」

僕は二人を見ながら首を傾げた。

「………」

「………」

無言の二人、やっぱり嫌なんだ。

「おいっ嫌なのかよ?」

「いやっ、嫌じゃないって…それよりも、本当にフィンコック様?」

「うん、僕も同意見。別人じゃないよね?」

…ヤバいバレた。
二人は僕と一緒に食事を取る以前に僕がシャルマンじゃないことに気付いてしまった。

「ぁっあのっ僕…」

「ペアでここまで変わるんだな」

「ライアンって凄かったんだね」

「ああ゛?」

「あっあの」

遠慮しようとするも頭上で交わされる三人の会話に入っていけずにいた。

「もう、行くぞ。」

ライアン様は僕の肩を抱き寄せ歩き出した。
良いのかな?と混乱しながら素直に従った。

「「マジ?」」

信じられないという声を後方で聞きながら、二人も僕たちの後を着いてくる。
四人で食事を取っている間、どこを見ても誰かと視線が合いそうになるもすぐに逸らされた。

「来週祭りがあるみたいだな、俺たち行こうと思うけど…フィンコック様もどうです?」

エドバルド様からお祭りに誘ってくれた。
とても僕に気を使っているように感じるのは、シャルマンが公爵家だからかそれともワガママシャルマンだからかな?
それでもこちらの世界に来てから学園の外に出たことがなかったから気になる。
しかもお祭り。

「お祭り?」

「平民の祭り…無理にとは言わないですよ。」

僕が聞き返せば「平民」と強調しているようだった。
フレデリック様は僕…シャルマンなら断ると思ってるみたい。
僕もシャルマンなら断ると思う…だけど僕は…。

「…ぃ、行って…みたぃ…」

僕の言葉にエドバルド様もフレデリック様も驚いた表情をした。

「あぁなら、一緒に行くか?」

「…ぃいの?」

「あぁ」

僕はライアン様の優しさに付け入っているのかな?
誰かに誘われたのは人生で初めて…日本の時にも無かった事で嬉しくて行きたいって言っちゃった…。
お祭りは家族としか行ったこと無かったから…友達?と行ってみたかった。

「…本当に誰だ?」

「さぁ?わかんない。」

二人は今までのシャルマンと僕の違いを受け入れられない様子だった。
当然だと思う…。
シャルマンと僕は違いすぎるから、受け入れるには時間かかるよね…。
まさか別人がシャルマンの身体を乗っ取ったなんて思わないはず…。
お願い…本物のシャルマンを見付けないで。
僕…良い子にするから、このままで居させて。

「ライアン様。」

食事を終え教室に戻る時にライアン様を小声で呼び止めた。

「ライアン様、今日は…」

「あぁ、…来るか?」

「んん、来て。」

「わかった。」

僕たちは別々の教室に向かった。
エドバルド様もフレデリック様もやはり今の僕に慣れないのか、面白い顔でずっと見ていた。
その後は授業を真面目に浮けたいのに、気持ちが僕の部屋を訪れるライアン様に向かってしまう。
放課後までの時間が永遠のように長く感じた。
今の僕は誰がどう見ても浮かれすぎている。
自分でも止められない程に。

長い長い授業が終わり急いで部屋に向かった。
部屋の掃除をして急いでお風呂に入りライアン様が来るのを待った。

コンコンコン

ライアン様だと疑うこと無く急いで扉を開ければ、目の前には大好きな彼の姿があった。
扉を開けてライアン様が中に入るのを早送りしたいほど待ち、部屋に入れば彼を閉じ込めた。
ライアン様の腕を取り操作盤の前まで導いた。

…どうやってやるんだろう?

ライアン様の部屋で僕のを登録した時は何がなんだか分からずライアン様の背中を見つめていた。
なので操作の仕方全く見てなかった。

どうしたら良いんだろう?
ここは潔くライアン様に振り返った。

「ライアン様の登録してっ。」

自分でするのは諦めてライアン様に全てをお願いした。

「俺のしたら、自由に入れんだぞ。良いのか?」

「ライアン様なら、いつでも来て欲しい。」

「…そうか。なら、まずシャルマンの…。」

ライアン様の指示通りにして登録は完了した。
今日からライアン様はいつでも僕のところに来る事が出きる。
いつ来てくれるかな?
今目の前に本人がいるのに、次に来るライアン様を待ってしまう。
登録しただけでこんなに嬉しいなんて…恋人に鍵を渡すってこんな感じなのかな?
これで一度も使われなかったりしたら僕は…。

「ライアン様、いっぱい来てね?」

ライアン様からの返事はキスだった。
キスしたままベッドまで移動して、僕って本当にライアン様のキスが好きなんだと思いながらベッドに座っていた。
しおりを挟む
感想 195

あなたにおすすめの小説

俺は勇者のお友だち

むぎごはん
BL
俺は王都の隅にある宿屋でバイトをして暮らしている。たまに訪ねてきてくれる騎士のイゼルさんに会えることが、唯一の心の支えとなっている。 2年前、突然この世界に転移してきてしまった主人公が、頑張って生きていくお話。

完結·助けた犬は騎士団長でした

BL
母を亡くしたクレムは王都を見下ろす丘の森に一人で暮らしていた。 ある日、森の中で傷を負った犬を見つけて介抱する。犬との生活は穏やかで温かく、クレムの孤独を癒していった。 しかし、犬は突然いなくなり、ふたたび孤独な日々に寂しさを覚えていると、城から迎えが現れた。 強引に連れて行かれた王城でクレムの出生の秘密が明かされ…… ※完結まで毎日投稿します

婚約破棄されたから能力隠すのやめまーすw

ミクリ21
BL
婚約破棄されたエドワードは、実は秘密をもっていた。それを知らない転生ヒロインは見事に王太子をゲットした。しかし、のちにこれが王太子とヒロインのざまぁに繋がる。 軽く説明 ★シンシア…乙女ゲームに転生したヒロイン。自分が主人公だと思っている。 ★エドワード…転生者だけど乙女ゲームの世界だとは知らない。本当の主人公です。

【書籍化確定、完結】私だけが知らない

綾雅(要らない悪役令嬢1/7発売)
ファンタジー
書籍化確定です。詳細はしばらくお待ちください(o´-ω-)o)ペコッ 目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。 優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。 やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。 記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。 【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ 2024/12/26……書籍化確定、公表 2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位 2023/12/19……番外編完結 2023/12/11……本編完結(番外編、12/12) 2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位 2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」 2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位 2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位 2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位 2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位 2023/08/14……連載開始

【第1章完結】悪役令息に転生して絶望していたら王国至宝のエルフ様にヨシヨシしてもらえるので、頑張って生きたいと思います!

梻メギ
BL
「あ…もう、駄目だ」プツリと糸が切れるように限界を迎え死に至ったブラック企業に勤める主人公は、目覚めると悪役令息になっていた。どのルートを辿っても断罪確定な悪役令息に生まれ変わったことに絶望した主人公は、頑張る意欲そして生きる気力を失い床に伏してしまう。そんな、人生の何もかもに絶望した主人公の元へ王国お抱えのエルフ様がやってきて───!? 【王国至宝のエルフ様×元社畜のお疲れ悪役令息】 ▼第2章2025年1月18日より投稿予定 ▼この作品と出会ってくださり、ありがとうございます!初投稿になります、どうか温かい目で見守っていただけますと幸いです。 ▼こちらの作品はムーンライトノベルズ様にも投稿しております。

トップアイドルα様は平凡βを運命にする

新羽梅衣
BL
ありきたりなベータらしい人生を送ってきた平凡な大学生・春崎陽は深夜のコンビニでアルバイトをしている。 ある夜、コンビニに訪れた男と目が合った瞬間、まるで炭酸が弾けるような胸の高鳴りを感じてしまう。どこかで見たことのある彼はトップアイドル・sui(深山翠)だった。 翠と陽の距離は急接近するが、ふたりはアルファとベータ。翠が運命の番に憧れて相手を探すために芸能界に入ったと知った陽は、どう足掻いても番にはなれない関係に思い悩む。そんなとき、翠のマネージャーに声をかけられた陽はある決心をする。 運命の番を探すトップアイドルα×自分に自信がない平凡βの切ない恋のお話。

運悪く放課後に屯してる不良たちと一緒に転移に巻き込まれた俺、到底馴染めそうにないのでソロで無双する事に決めました。~なのに何故かついて来る…

こまの ととと
BL
『申し訳ございませんが、皆様には今からこちらへと来て頂きます。強制となってしまった事、改めて非礼申し上げます』  ある日、教室中に響いた声だ。  ……この言い方には語弊があった。  正確には、頭の中に響いた声だ。何故なら、耳から聞こえて来た感覚は無く、直接頭を揺らされたという感覚に襲われたからだ。  テレパシーというものが実際にあったなら、確かにこういうものなのかも知れない。  問題はいくつかあるが、最大の問題は……俺はただその教室近くの廊下を歩いていただけという事だ。 *当作品はカクヨム様でも掲載しております。

【完結】薄幸文官志望は嘘をつく

七咲陸
BL
サシャ=ジルヴァールは伯爵家の長男として産まれるが、紫の瞳のせいで両親に疎まれ、弟からも蔑まれる日々を送っていた。 忌々しい紫眼と言う両親に幼い頃からサシャに魔道具の眼鏡を強要する。認識阻害がかかったメガネをかけている間は、サシャの顔や瞳、髪色までまるで別人だった。 学園に入学しても、サシャはあらぬ噂をされてどこにも居場所がない毎日。そんな中でもサシャのことを好きだと言ってくれたクラークと言う茶色の瞳を持つ騎士学生に惹かれ、お付き合いをする事に。 しかし、クラークにキスをせがまれ恥ずかしくて逃げ出したサシャは、アーヴィン=イブリックという翠眼を持つ騎士学生にぶつかってしまい、メガネが外れてしまったーーー… 認識阻害魔道具メガネのせいで2人の騎士の間で別人を演じることになった文官学生の恋の話。 全17話 2/28 番外編を更新しました

処理中です...