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一章 純愛…ルート

混乱する

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お昼になってもあまり食欲が湧かなかった。
先程の彼らの会話が頭から離れなくて…。
申し訳ないと思いながら、ほとんど口を付けずに席を立った。
トレーを手に振り返れば目の前にはライアン様がいて驚いた。
ライアン様と偶然会うことなんて今までに無かったから。

「全然食ってねぇじゃん。」

「ぁっ…ぅん、あんまり食欲無くて…。」

ライアン様は僕の残ったトレーを見て、おもむろに僕のトレーに残っている果物に手を伸ばした。
一つを手にし、僕の方へ差し出す。

「食べろ…。」

「えっ?」

「食えって。」

ライアン様が僕の口元に果物を差し出していた。
確認を込めて見上げ視線が合うも諦めてくれる雰囲気はなかったので僕が諦め、ライアン様の指を食べないように果物だけを口にした。
その瞬間、カフェテリアがざわついた。
僕はシャルマンを知らないが、シャルマンを知っている者にとっては信じられない光景だった。
高位貴族でプライドの高いシャルマンが他人の手すがら食べ物を頂くなんて。
しかも、直接手にしたものを。
カフェテリアに居る人達は彼らから視線を外すことが出来ず、ひたすら次何するのかを見続けていた。
一つ食べ終えれば、別の果物を差し出される。
親鳥が雛鳥に餌を口移しで与えるように餌付けされていた。
気を付けながら食べていたが、ライアン様の指に唇か当たってしまい「あっ」と思いライアン様を見ても彼は無反応だった。
僕だけがライアン様を意識していた事実に少し胸に痛みが走る。
その後、何度も繰り返しトレーにあった果物を全て食べきっていた。

「よく、食ったな。」

ライアン様は僕の頭をポンポンと撫でてくれた。
なんだか扱いが幼い子を相手にしているようだったけど、それでも僕は少し嬉しくてライアン様を見上げれば驚いた。
笑顔のライアン様を初めてみた、それどころか僕に対して笑ってくれる人が初めてだった。
ライアン様の笑顔から目が離せなくて、彼が近づいてくるのがまるで画面を見ているような感覚だった。
僕の身長に合わせ、耳元で囁いてくる。
ライアン様にはそんな気がないかもしれないが、少しエッチな気分になる。

「今日、行くからな。」

今日、行くからな?行くからな?どこに?僕の所に?
えっ?十日後じゃないの?今日来てくれるの?

「ぅ、うん」

頷いて足早にその場を離れた。
多くの人の視線など全く気にならないほど、ライアン様の言葉が頭を駆け巡る。
えっ今日来てくれるの?
だってエッチの練習は一週間から十日のペースでいいって、最後にしたのは昨日なのに?
良いのかな?
本当に来るの?
…さっき…あの人が…。
僕は待ってて良いのかな?
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