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1章 棄てられたテイマー

41話:凶報

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 ジェニスが作った料理は、焼いた鶏肉にジンジャーとガーリックで味付けした物だった。
 
 要はショウガとニンニクの味付けなんだが、なかなかイケる味だったな。
 付け合わせにサッパリした味のレンズ豆とイモのスープも悪くなかった。
 腹は膨れたが、やはり白米が欲しくなるな……。



 ▽   ▽   ▽



 食後に風呂に入って、久しぶりにスッキリサッパリした。

 体を拭くだけでは物足りなかったからな。やっぱり風呂は偉大だ。
 ジェニスも風呂から上がって満足しているようだな。

「いやー大将! あれいいな!」

「温かいお湯に浸かることでリラックスできるからな。感謝ならお湯を入れてくれた霞にするといい」

「霞様、ありがとうございます!」

「ああ。どれ、私も入ってこようか」

「霞は別に入らなくても問題なさそうだが?」

「何事も経験だ、主」

「そうか。気に入るといいな」

「楽しみだ」
 そう言って霞も風呂場へ向かっていった。
 精霊の括りであるウンディーネの霞が風呂に入るというのは、なんとも不思議な感じだ。
 もしかして<万物進化>のスキルの影響を既に受けているのか?
 
 人型に進化か……。

 エリザベスは既に人型に進化しているが、アトラ、アル、アスラはどういった風になるんだろうか。

 アトラは上半身裸の女姿であるアラクネを経由するのか?

 ベヒーモスはオスみたいだし、厳つくゴツイ筋肉マッチョマンを想像してしまった。

 アルは羽の生えた人になりそうだな。翼有人? 有翼人?

 アスラは……アトラと同じように、ラミアやナーガといった風に変わっていくのだろうか?

 進化は楽しみでもあるが不安だ。

「大将、何難しい顔してるんだ?」

「……ああ、アトラたちの進化についてな」
 ジェニスに<万物進化>のスキルの説明をした。ゴブリンと同じ祖を持つことについては触れていない。余計なことは言わなくてもいいだろう。いつかベルカから聞くかもしれないしな。

「へー、魔物が人型に進化するのか。凄いスキルだな!」
 このスキルについてはあまり公言するべきではないと思っているが、ジェニスくらいならいいだろ。だが一応念は押しておこう。

「そうだ、凄いスキルだ。だから俺を捕まえて、これを悪用させようとする輩が出るかもしれないから、秘密にしておいてくれ」

「わ、わかったぜ……」
 素直に理解してくれたようで何よりだ。

「ふぁ~あ……」
 風呂に入って血行が良くなったおかげか、眠くなってきたな……。
 霞は風呂に入ったばかりだが、先に寝させてもらうとするか。

「悪い、料理の話をしようと思ってたが眠くなってきた。先に寝させてもらうぞ」

「おう! おやすみ大将!」
 夜だってのに元気の有り余ってるやつだな……。ジェニスのうるさい声も気にならないほど眠い……これならすぐに眠れそうだ…………。



 ▽   ▽   ▽



 朝――

「キョータロー様!!!!」

「うぅん……」
 ドンドンドンドンと扉を叩く音で起こされた……。
 乱暴に起こされたイラ立ちと、ただならぬ雰囲気から嫌な予感がして、朝から最悪な気分だ。起きたくない。
 同じベッドで霞が横で寝ていたようだが……平静を保つ努力をして気にしないでおこう。

「主?」
 驚いた……寝起きを感じさせない目の開き具合、今までずっと起きてたんじゃないか?

「キョータロー様!! 起きてください!!!!」
 この声はベルカだな。とにかく出よう。
 これだけうるさいのにジェニスはアホ面で寝ているが、大したもんだ。

「今開ける!」
 扉を叩く音に対抗して大声を出したが、委縮させてなきゃいいけどな。それだけ叩く音が大きいんだから仕方ない。
 
 とりあえず叩く音は止んだ。

「ん……? 大将どうしたぁ?」
 ジェニスを起こしてしまったか。だが丁度良い、恐らくジェニスにも他人事ではない気がするからな。

「どうし――」

「キョータロー様! カシウスが村を!!」

「……!!」

「ベルカ! 何があったんだよ!」
 状況は把握した。ジェニスやベルカ達を罠にかけたダークエルフが、村を襲撃したようだが……一人で襲撃したのか?
 ベルカはかなり取り乱している様子だな、自体は一刻を争う状態かもしれないな。

 まだ外は暗い。空気の匂いからして早朝か?

「まず落ち着け、一体何があった?」

「憑き物を取り込んだカシウスが村を焼き払い、村が……結界が……」

「族長たちは無事なのか……?」

「オ、オヤジたちは……?!」

「…………分からない」
 ベルカの悲痛な顔が惨状を物語っているようだ。なるほどな。相当ヤバイ状況なのは理解した。
 あの厄介な憑き物を取り込んで、あのツインテウンディーネと霞の新しい結界を突破したやつだ、その強さは未知数過ぎる。
 総力戦で行くしかないだろうな……。

「大将……!」

「キ」
 ジェニスは待っていろ、と言ってもついてきそうだな。
 アトラたちは既に準備ができている。全員で行くか。

「よし、全員で村に向かうぞ!」
 カシウス……一体どんな奴なんだ?
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