26 / 74
1章 棄てられたテイマー
26話:報告 ~ダークエルフ・シーリアの受難~
しおりを挟む「――ということで、族長、キョータローという人族は非常に危険な存在ですが、村に滞在させる価値はあります」
カシウスによってゴブリンキングに囚われたところからここまでのことを、族長であるお父様に説明したけれど、どうしてこんなことになっているの……。
「シーリアよ、カシウスの件はのちほど取り調べる。して、その人族は本当に信用できるのか?」
「は、はい。我らダークエルフ族のみならず、獣人族の娘たちにも分け隔てなく食料を分け与え、自由な振る舞いを許すなどの、寛容な様子を見せていることからも、族長たちが不安視する人族の面影はないかと……」
どうしてこんなときに限って、各氏族の族長様たちがいるのよ……。
お父様一人に報告するのだって辛いのに、他の族長さんたちにすっごい睨まれちゃってるし、早くこの場から出て行きたいわね……。
「あのウンディーネ様が共に行動し、ヴリトラをも従魔にした人族です。ここで追い払ってしまうと、逆に我らの身に危険が及ぶかもしれません……」
ベルカがフォローしてくれたけど、それはフォローになってないんじゃないかしら……。
ここで無下に追いやって、キョータローの恨みを買っちゃうのは避けたいわよね。
「別に大将はそんな怖い人族じゃないぜ! オレだって気安く話しかけられるし、悪い人族じゃねーよ!」
ジェニスちゃんは気楽でいいわよね……。
こっちの気も知らずにあんなズカズカと失礼な態度で話すなんて、私たちは生きた心地がしなかったわ……。
「ウンディーネ様と天災のヴリトラを従魔にしたとはとても信じられん。見間違いではないのか?」
ヴェルン氏族のラウ族長……。
そう思うなら是非自分で見てきて欲しいものだわ。
私だって未だに信じられないもの。是非その目で確認して、私たちと同じ目に遭ってもらいたいものね。
「だがもし事実であるなら、憑き物退治に利用できるのでは?」
チャイル氏族のペペ族長はキョータローを利用するつもりなのね。
ノーム様を崇拝する一族だけあって、ウンディーネ様のことは考えていないようね……。
ペペ族長、彼は油断できないわ。彼のせいでキョータローやウンディーネ様を怒らせて、この村が無くなっちゃったらどう責任を取るつもりなのかしら。
「おい! 大将を危険なことに利用するつもりか!?」
「ジェニス!」
「放せよベルカ!」
「憑き物のゴブリンキングを倒したのだろう? ならばその男に戦ってもらうのが、我らダークエルフ族にとって一番良いのではないかね?」
キョータローならやってくれるかもしれない……けれど彼を利用するような真似は絶対に避けるべきよ。
キョータローがよくても、ウンディーネ様がそれを良しとするかは別なんだから、そんな危ない賭けはできないわ。
「お言葉ですがペペ族長様、ウンディーネ様はキョータロー様を利用することを、決して許しはしないでしょう。ですので彼を利用するというお考えは改めて頂けますよう、お願い申し上げます」
私もベルカから聞いてなかったら、憑き物退治に利用するのもアリだと思ってたけど、ウンディーネ様がそれを許さないなら、やるべきじゃない最悪の手だわ。
「ではどうやって憑き物に対抗するか、代案はあるのかね?」
「そ、それは……」
あるわけないじゃない、そんな話……!
でもだからってキョータローを利用すれば、この村がウンディーネ様の怒りを買って滅ぶかもしれないのよ……!
もうどうすればいいのよ……。
「……」
「……」
お父様は黙ってるだけだし、ラウ族長もこっちを見てるし、もう誰か助けて……。
「だったら大将に頭下げてお願いすればいいだろ!」
「ジェニスッ、でもそれは……!」
「なんだよシーリア、こっちから心を込めてお願いすれば、きっと大将なら聞いてくれるぜ! それにオレだって一緒に戦うつもりだからな! 族長たちみたいに一方的に利用するわけじゃないし、きっと一緒に戦ってくれるはずだぜ!」
純粋なジェニスちゃんの頭には困るわね。結局言ってることはペペ族長と同じなのに、気づいていないのかしら。
私たちがキョータローを利用しようとすれば、ウンディーネ様はきっと見抜いてくるはずよ。
やっぱり彼に戦わせようとするのは危険過ぎるわ……。
「ジェニスの言う通り、こちらか誠心誠意お願いすれば、キョータロー様は話を聞いてくれるかもしれません。しかしウンディーネ様はそれをお見抜きになられるでしょう」
ベルカが代弁してくれたけど、空気は重いままだわ。
「ふぅむ……シーリア、そのキョータローという男は村に滞在したいのだろう?」
「は、はい、族長」
あまりキョータローたちを待たせるのも心苦しいし、早く決めてくれないかしら……。
「であれば、滞在を認め、様子を伺っていこうではないか」
「おとうっ……族長、よろしいのですね?」
「まずは会って話しを聞き、キョータローという人族を見定めたい」
「横から失礼。この地にきてから人族とは関りを持たなくなったが、この地に来る前のことをお忘れではないか? それに、もし従魔の件が事実であれば、余計に危険な存在であろう。その点をどうお考えか?」
「ラウ族長、我が娘シーリアたちが、人柄は問題ないと判断をした人族ですぞ。それに異世界の人族だと言うではないか。この世界の人族とは違うのかもしれないだろうし、あのウンディーネ様がお認めになった人族だ。儂は是非会ってみたいと考えている」
「「……」」
良かった、お父様は好意的な感じだわ。だけどラウ族長とペペ族長は難色を示してるわね……。
私たちは知らないけれど、過去にダークエルフ族と人族は、人族に騙され大勢のダークエルフの命を失い、大きな争いになったと聞いたことがあったわ。そしてその根は未だ深く残っているらしいけれど……。
だから人族を憎むペペ族長は、人族であるキョータローを使い潰すようなことを言い出したのでしょうね。
過去に人族と争ったと言っても、キョータローはこの世界の人族じゃないのよ。だから憑き物の話だって彼には関係ない話……だけど、私もキョータローの力はできれば借りたいと思ってる。
でもウンディーネ様の後ろ盾がある以上、迂闊にお願いなんてできないし……。
私たちはウンディーネ様を崇めている一族。
だからウンディーネ様を利用したり、ましてや欺くなんて真似、絶対にできないわ。
「いつまでも彼を危険な森の外で待たせる訳にもいくまい。呼んできてくれるか」
「分かったぜ! オレが呼んでくる!!」
「ちょっとジェニス!」
まだ話も終わってないのにあの子は……。そんなに彼が気に入ったのかしら?
私とベルカは……無理ね。確かに彼に興味はあるけど、どうしても恐怖が勝ってしまうわ。
ウンディーネ様もそうだけど、グラットンスパイダー、アサルトヒポポタマス、クイーンノーブルビー、アルゲンタヴィス、そしてトドメに天災のヴリトラ……これだけの魔物を従魔にした存在が、ただの人族なわけがない。異世界人はみんなこうなのかしら……。
ペペ族長の人族を憎んでいる問題もあるし、頭が痛くなってきたわ……。
はぁ……お気楽で怖い物知らずなジェニスちゃんが羨ましいわ。
あっ、そういえば、アレは大丈夫なのかしら……?
1
あなたにおすすめの小説
田舎娘、追放後に開いた小さな薬草店が国家レベルで大騒ぎになるほど大繁盛
タマ マコト
ファンタジー
【大好評につき21〜40話執筆決定!!】
田舎娘ミントは、王都の名門ローズ家で地味な使用人薬師として働いていたが、令嬢ローズマリーの嫉妬により濡れ衣を着せられ、理不尽に追放されてしまう。雨の中ひとり王都を去ったミントは、亡き祖母が残した田舎の小屋に戻り、そこで薬草店を開くことを決意。森で倒れていた謎の青年サフランを救ったことで、彼女の薬の“異常な効き目”が静かに広まりはじめ、村の小さな店《グリーンノート》へ、変化の風が吹き込み始める――。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる
竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。
評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。
身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。
男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。
転生したら脳筋魔法使い男爵の子供だった。見渡す限り荒野の領地でスローライフを目指します。
克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作。面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります!
辺境も辺境、水一滴手に入れるのも大変なマクネイア男爵家生まれた待望の男子には、誰にも言えない秘密があった。それは前世の記憶がある事だった。姉四人に続いてようやく生まれた嫡男フェルディナンドは、この世界の常識だった『魔法の才能は遺伝しない』を覆す存在だった。だが、五〇年戦争で大活躍したマクネイア男爵インマヌエルは、敵対していた旧教徒から怨敵扱いされ、味方だった新教徒達からも畏れられ、炎竜が砂漠にしてしまったと言う伝説がある地に押し込められたいた。そんな父親達を救うべく、前世の知識と魔法を駆使するのだった。
この度異世界に転生して貴族に生まれ変わりました
okiraku
ファンタジー
地球世界の日本の一般国民の息子に生まれた藤堂晴馬は、生まれつきのエスパーで透視能力者だった。彼は親から独立してアパートを借りて住みながら某有名国立大学にかよっていた。4年生の時、酔っ払いの無免許運転の車にはねられこの世を去り、異世界アールディアのバリアス王国貴族の子として転生した。幸せで平和な人生を今世で歩むかに見えたが、国内は王族派と貴族派、中立派に分かれそれに国王が王位継承者を定めぬまま重い病に倒れ王子たちによる王位継承争いが起こり国内は不安定な状態となった。そのため貴族間で領地争いが起こり転生した晴馬の家もまきこまれ領地を失うこととなるが、もともと転生者である晴馬は逞しく生き家族を支えて生き抜くのであった。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる