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生まれた 「私」
埋まる なにか
しおりを挟むそうして わたしの中 は。
何か が 満たされていった。
足りなかったわけでは ない
確かに
身体 的には
穴は 空いていて しかし
それ は
入れなければ ピッタリと閉じていて
不自由は ないものなのだ
ただ 欲しい と
思ったならば
ぐっと 入れればいい
それだけのこと
しかし
何か なにか は 分からないが
確実に
わたし に なにか が 溜まっていて
それは 昼間の仕事の 澱 では無く
空いている場所に 入ったなにか
でも無く
きっと
無かったならば 気付かなかった もの
見つけて 感じて
初めて 認識するもの
それ が。
わたしの 中 に ある
その事に 気が ついたのだ
それが
なんなのか。
まだ 分からないが。
確実に わたしを 温かく
満たして くれるもの だった。
対して
男 も。
とても 回復して 滅多な事では
くすりも 切れなくなったし
いや 啜り過ぎているからか
ここでの 生活にも
大分 慣れてきたようだ
しかし たまに
わたし を 怒らせ
森の外に 飛ばしてしまう事は 何度か。
その度に 「私」は
迎えに出ているようだったけれど
そう どうやら 「私」は
まだ 甲斐甲斐しく 男の世話を しているようだ
少しだけ
一人の夜に 違和感を覚え
自分の ゆびに 満足できなくなるころには
いつも
男が 戻ってきた
そして 再び
要求する のだ
「 さあ やま へ 上ろうよ 」
「何度も もっと 高く 」
「 一緒に 上ろう ほら もう 」
「 もっと 奥へ もっと 上れる 」
飽くなき 探究
求める 至高の 領域
お互い が お互いを 赦し合い
お互いが お互い を 高め合う
そんな 二つの 絡み合い
それ が。
とてつもなく 楽しく 心地良く
何かに 満たされ
そうして 全てが。
輝き 始めて。
森の 緑
泉の 青
空の雲の 白
木の実の 赤
葉の 橙と 土の 赤茶
生き物たち の 目
昼間のものは 日の中 駆け回り
夜の帳が降りると
闇のものが 動き出す
混じり合う事なく 正常に まわる
世界は 整った
わたしが 満たされる こと で。
何故だ ろうか。
何が
埋まったのだ?
どう したのだ?
そうしてわたしは
考え 始めた。
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