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生まれた 「私」
開いた 目
しおりを挟むある日 あの子が言った。
「ひらいた よ ふたつ とも」
それが 意味するものは。
「私」が、見られてしまうという事だ。
大丈夫、練習してきた。
あの、夜の目も使って色々見てきた。
多分、大丈夫。真似、すればいいもの。
「私」はそう考え、胸を抑えると
1つ、息を吐いて 寝室の扉を開けた。
……………………………………………
見て いる。
目が 合ってしまった。
その、男は。
所謂、普通の「男」というものだろうと 思う。
「見て」きたものと、そう違いのないその身体と
髪、目、鼻と口も手も足も付いて
そう、紛れもない 「人間の男」で ある。
子供でもなく、老人でもない。
特別大きいわけでも 小さいわけでもなく
まあ なんの 変哲も無い 「男」である。
あの子の 手伝いをしながら 見ていたその「男」は
「私」には 少し 不思議で 恐ろしく
まだ 近くで見ることも 叶わない
そんなものだった。
まだ 目が 片方のうちは
視線を 避ける事ができた。死角が あるからだ。
しかし。
ここらが 潮時なのだろう
その 瞳が 2つ 見えたならば。
「私」は もうその 視線に
捕らえられる他 なく
仕方無く こうして 目を 合わせている訳である。
扉を開けて 一歩も 進めない「私」
それを 不躾に ただ 真っ直ぐ
見つめる その 瞳は 鳶色で。
後に 「私たち」が その「男」を
判断するに 必要な その鳶色 を
それとは まだ 知らず 見つめる「私」
ただ それは。
目が 離せない。
そんな 不思議な 何かを含んだ
鳶色 だったのだ。
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