風の時代/月の神話 [R 18]

生まれた 「私」

じかんが 経つと

そうして　しばらく。


おとこの　手が　動くのを止め

わたしの頭にかかる息が

　　　一定のリズムを　刻み始めた


この　　リズムは


　　　　　自然にも　あるものだ。


心地よい　　この　胸の上



いつしかわたしも　　この　リズムに誘われて



　そう
　　　　　　　眠りについて　　いたのだ。






……………………………………………






そうして　　ふと　　　気が付いた



明　るい　　　


朝だ。




初めて　おとこの隣で　眠り

　　　　なぜだか　　あたたかさ　を感じる



　なぜ？

　

おとこは　　まだ　　あのリズムで

　　胸を上下　させていて

わたしは　　するりと　抜け出し


　　放ってあった　服をつかみ　　部屋を　出た。





…………………………………………………






「おや　　よく　ねむれた　かい」


あのこが　　食事の　　支度


立ち昇る　　湯気


　　　　　いい香り　　　動く　　腹と喉



「あれ　は　　まだ　食べんのか　」


「そうね　　もうすこし　よくならないと


　まだ　　おくすり　しか　　　だめだね　」



「　そう　か　　　　　　」




そうか

まだ　　　アレしか　　駄目か


　　ふぅん　　


それなら。


いいのか。　　　うん。



「おや　　だいぶ　　おぼえた　ね」



そう　あのこが　　　いう


「　？　」



「　きもち　だよ　　　いま　うれしかったので

　　しょう？　　もっと　いっしょに


　いたかった　から　　ねていたんだよ　　」



？　　そうなの　か？


あの　　心地よい　　規則的な　　　リズム


あれ　が

あれが　　よかった　の　では？



「そうだ　なあ　　　そろそろ　　うまれる


　ひとつ　のものに　　いだく　　感情


　　　　　こころ　　　それは



　とてもすてき　で　　やっかい　な　　もの」



「　まあ　　もうすこし　　たしかめると


　　　　　　　　いいかも　ね　　」




　感情　　　　　こころ　　　？？



「　それは　　あたたかい　か？　」


「まあ　　つめたいか　　あたたかいかと

　　いわれたら　　あたたかい　だろうね　」



「　　ふぅん？　　」



わかった　ような　　　わからない　　ような。



しかしなにしろ


　　そのとき　の　　　わたしは。



　その　　　「気持ちいい」を


　　　　探究　　する　こと　に


　　　夢中になって　　　いたのだ




　　そう　　　どうぶつ　の


　　　　　　ように　な。




　何故　　　そう　　なるのか


　　　　なぜ　　そう　　　するのか　を



　　　あまり　深く　　考えもせずに。









まぁ　アレは　溺れてしまうものよ

ひと　ならば　　なぁ？


まだ　ひと　になった　ばかりの　　わたし

まだまだ　　わからないこと　ばかり


　　　　研究　　せねば　ならん




そう　　「気持ちいい」の　研究

そして　その　あとの


　　　　「あたたかさ」の　研究


も　　な。