風の時代/月の神話 [R 18]

始まりの わたし

思えば。

今　思えば。

あの頃　わたしは　なに　でも無く

ただそこに　　　　　　在る　　　　　　もので。





何も知らず

何も考えず

知る事を知らず

思うこと　もない

ただ　　　　　　　そこに在り

あたりを　見る　　もの


　　　　よる　


を　　照らして　　　


いるもの

だった。






いつかは　わからない

遠く　　近く　　遥か

きっと昔に　　　　　　　　ずっと　先に

　消えた

私を生んだものは　知っていたのだろう。







だから　　言ったのだ。

わたしが　姿　を取る遊びを覚えた

その時




　　　　「ひとの　おとこ　は


　　　　　　　　　拾ってはならない　」



　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　と。








そう

言われていたのに

やはり

知らぬ　ということは

罪



知っていたのに

知らぬ　　　わからぬ

考えぬ

それはやはり　　私への罰で


かわりに手に入れた


星屑

光

希望

あたたかさ

ぬくもり

　た　い　よ　う

知ること

生きること

だれかが　いること

たいせつ　な　もの

欲する　ということ



私が決して

手に

入れることがなかったであろう　もの

それを　　与え



　　　　そうして




消え　て　　　　　　　　なく　なった



　　　　　　あの



　あの




名前もない　　　　　　あの





。










随分と　ひと　らしくなったものだ。

失うこと


それを　知り

寂しい　ということを覚え

感傷とは　　これか

おもいで　とは

この

やり場のない　　　　おもい　　　　　　とは。










おまえを　恨むよ。

もう　交わることがない

私達の　輪

しかし



いつか。


　　きせき


が起きて



おまえが　また　月の庭に堕ちたのならば


きっと　拾ってしまうのだろうよ







私は　　知って

しまったからな。


知らぬ方が良かった　　　しかし

　　　　　　　　知ることで　沢山のこと　を



沢山の　ことを　　得た　あの　　　とき。





だがしかし。



今度は　　　　次　こそは

一緒に　　共に　　いける

魔法をかけようぞ。





それ迄

しばし　研究するとしようか。


きっと長い　　永い　　　　時間が




　　　　　　　　　　　必要　だろうからな。