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17の扉 こたえしかない ところ
パレット
しおりを挟む「 じゃあ、明日迎えに来るね?」
「うん、ありがとう。よろしくお願いします。」
「じゃあね。気を付けるのよ?」
「 はぁい」
「多分、みんな気付かないわよ。」
「そうかもね。」
あの後
何人か お客さんが来て
レナとリュディアの話も一頻り終わり
私達のお腹も大分膨れて なんだか眠くなってきた 頃。
「そろそろ、お開きにしようか。ごめんね?」
そう言って 接客を終え帰ってきたエローラを囲み、明日の相談をした上で
やっと店を出て来たのはギリギリ暗くなる前だ。
実は 「今回の実験」の移動の部分、その前半は「移動そのもの」であるが 後半はその「滞在期間」にある。
そう 「デヴァイ生まれのリュディア」が
ラピスにどのくらい滞在できるのか
それを試す為にも今日一日泊まることになっている。
その「保険」でもある私はしかし
ずっと一緒にいると「ヨル効果」が有るか無いかが分からないので 一緒にエローラの家へ泊まるのは止めにしたのだ。
だから「何かあったらすぐ知らせる」
それをエローラの所の猫に頼んで。
「街に蔓延る朝組織」を利用し、非常時には伝えてもらう手筈になっている。
本当は「私の石」の方が 直ぐに連絡は取れるのだけど
それもまた「側に私が居る」のと そう変わりないから。
とりあえず エローラとレナ
二人がいれば大事にはならぬだろうと、一人テクテクと店を出て来たので ある。
「 ま、実際 「心配」しても 意味ないしな。 あの二人なら大丈夫でしょ うん。」
チラリと巡る「いろんな方向の想像」を
シュッと仕舞って。
その「体調のこと」や
「移動の差」
いろんなカケラがくるくると廻る中
白い石畳をリズム良く降りながら「店内からずっと回っているキラキラ達」も加味して 「今日の行き先」を展開し始める。
そう
私は 今日ラピスに泊まるのだけど
「一人で整理をしたくて」
「だけど久しぶりに教会へ行こうかとも思っていて」。
だが しかし
あそこへ行ったからには「あの緑の瞳」が私を甘やかすだろうし
ティラナは最近「恋話」に興味を持ち出したからして 金色とのあれこれを根掘り葉掘り訊かれることは間違いない。
いや 「それが嫌」な訳じゃ
ないんだけど 。
「今日の主題」は「エローラの店で回収した光の精査」で
それには「一人の時間」が必要だ。
そして「私のなかを整理する」には
「ただの私である必要がある」。
そう、他にも「村に行ったら」
「ルシアのところ」
色々「想像してみる」けれど、その「どれもはただの私」ではなく
「娘の私」や「お姉さんの私」
「女神の私」で「妹の私」だ。
まるっと
スルッと
なんでもなく「ただの私」なのはきっと
金色とゴロゴロしているマシュマロの上とかで
成る程 それは。
「私が 自分の内側にいるから」、「ただの私」なのだ。
だけど「自分の空間」から
一歩出ると。
「それ」は「対相手のいる「世界」」で あるからして
私は「相手の認識している私」に なり
私もそれを受け入れ「その私を演じている」。
「 ふむ?」
でも 考えてみると
「それ」は「それで良くて」。
私はいつだって「自分のパレットから好きないろを選んで演っていいし」
「世界はそれを楽しむところ」なのだ。
そして もう一つ言えば
「その どれもは紛れもなく私で」
「数多含むいろのうちのどれか」
そういうことだ。
確かに そうやって並べて視ると。
「どの私」も「本質は同じ」で
「その場でコミュニケーションが取りやすいかたち」を取っているのが わかる。
そう 無意識に。
「その場」で「一番馴染むかたち」を取り
「いつだって最適を採っているのだ」。
「 成る程。 それなら とりあえず。 いつものところに、行きますかね。」
だから 白と空の橙の 暖かなコントラストを潜り
街の外に ポンと出ると
くるりと振り返って。
白く 高い壁に守られた街の姿を目に映し
くるりと向き直って 荒れていた大地と遠くの森を 観る。
なるほど やっぱり
変化は ふむ 。
「荒れていた」、大地
その「街から森への中間」の土地は 今
僅かながらもピョコピョコと草が生え 以前とは変化した大地の姿を 明確に見せている。
ここで
すぅっと 大きく息を吸えば。
それは「気まぐれに生えたもの」ではなく、「街と森のチカラ」、それが 間に挟まるこの土地を癒していることを現していて
以前より土に力が込もり 街の周囲にある畑の土と近くなっていることも 見て取れるんだ。
「 ふむ。」
街も
人も
森も
そう「みんなが」、今 様々な方向へ
動き出して いるけれど。
いや
うん 。
くるりと、その「走り出した光」を仕舞って。
サクリ ふわり と
踏み出した足の感触を 確かめながら
ゆっくりと歩く 森までの道
夕暮れ時の「堺」で ある「この時間帯」に
「森へ入る」なんて
以前の私ならば 確実に尻込みしていただろうけど。
何度も
急に「森でお風呂」がやりたくなって移動したり
「夜の森」を散歩したり
その「見え難い中での気配の充満」、それを感得してからは。
やはり「森は私の一部」で「私も森の一部」で
「そこにはあらゆるものが存在しているけれど」
「それもまた自分の一部であるからして」
「恐れは無いし」
「スルリと抜けられるんだ」。
「 でも やっぱり。「そう」、だよね ?」
段々と 近づいてくる
「入り口で私を迎える木々」に 呼び掛けるけれど。
その「スルリと抜けられる感覚」
「ぜんぶ自分で その一部」
それが私に沁み込んでいるから、「移動」も今はスムーズで
「私は世界を渡り歩くことができるのだ」。
「 なんだろう?「段差」? 多分、始めの移動は。 「私の移動」じゃなくて、「ここの移動の仕方」だったから 「あっちとこっちの繋がり」に「ボン」って飛んで。 で、ガダッとなって気持ち悪かったし、酔ったんだ きっと。」
「相変わらずだね、その特異な感覚は。」
「そうだ」
「そうじゃ」
「それは 」
「そう」
「人間ではない」
「「そう」」
「我々に 近い感覚」
「私達は移動できないけどね」
「移動しなくともわかるからじゃ」
「そう」
「「「繋がっている」」」
「みえる」
「わかる」
「ひとつの 大きな「巣」」
「それが 森」
「枝葉の先まで」
「土の下の一粒まで」
「そう 」
「全てを記憶するもの」
「 ホントに。 そうだよね 。」
森の入り口に 差し掛かって。
珍しく 沢山の木々達が私の独り言に応え、その大きな枝葉を揺らしながら
「森の意味」を 私の中へ沁み込ませる。
そう
それは
「「共有」するから 伝わるもの」
「同じものが 私の中にあるから」
「わかる もの」。
だから それを以てして。
ずっと
この道中 私の周りを廻る
「待っている カケラ達」の中に
明晰君を 散らして。
「分厚い充満の中」を 進んで行ったので ある。
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