透明の「扉」を開けて

美黎

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17の扉 こたえしかない ところ

自然の感覚

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「………あんたの「感覚を感じ取る感覚」って、独特だからねぇ。「感覚を感じ取る感覚」って、感覚感覚言っててなんかよく分かんなくなってきたわ。」

「  確かに?」

「でも、やっぱり前より鋭くなってるのよね。なんか、以前は「漠然と在るものを感じ取ってる感じ」だったけど、今は「自分の欲しいものを呼び寄せてそれを採ってるかんじ」。なんなの、なんか効率的って言うか、なんかコワイ。」
「  えっ どゆこと 」

「いや、わかるでしょう、なんかさ。その、「確実に呼び寄せて採ってる感じ」が、「獲ってる」っぽくて、なんか。」

「   フフ、でも 。 言ってることは、わかる。」

 確かに 朝の 言う様に。

「花」が 蜜蜂を呼び寄せる様に
     蝶を 呼ぶ様に

 「私」だって
「自分の欲しいいろ」を掲げ「示していればそこに在れば」。

 そこへ「自然と 導かれ現れるものがあり」
    「私はそれを得て」
    「変化してゆくのは自然」なのだ。


「    なるほど、 成る程ね。流石、朝。」
「なによ、怖いわね。」

 そうして いつもの様に 
   ケラケラと笑いながら。

私達が 今 向かっているのは白い書斎で
 朝は作業中の私を 呼びに来ただけだ。


 最初は 静かに魔女部屋へ現れた灰色のフワフワを横目に捉え
顔を上げずに「今日、いつもより早いね?」と声を掛けたのだが どうやら朝は本部長に頼まれて、私を呼びに来たらしい。

「   てか、なんか用事なのかな?」

「さあ?…私は何も聞いてないけどね。」
「  ふぅん?」

 そんな ことを言いつつも
 青い廊下を ゆっくりと進みながら。

久しぶりに朝と歩調を合わせて歩くのは なんだか楽しくて
 その楽しい気配に釣られ
  「いつかの庭の景色」が紐付き
  「おばあちゃんの花」もついでに出てきて
鮮やかに展開し始めた自分の想像に ホワリと胸が 温かく なる。


「  成る程  「感覚」、確かに感覚 ね。 ふむ 」

「………なんだろう、ほら、私は猫だから。勿論、「そんな感覚」はあるのよ、当然の様に。そしてそれはなんでか、あんたにも元々あってそれがまたここに来て開花したんでしょうね。」

「なるほど?」
「でもやっぱり、依るならではなんだろうなぁ。」

「  ん? なにが? 」

「いや、あんたって物とか動物とか、植物、なんでも「その気になる」じゃない。相手方の立場に立つ、っていうの?だから捉えるのが上手いんだなぁって最近気付いた。大体人間って、立ち位置変えないのよ。それでまた、自分達とそれ以外をスッパリ分けてるしね。」

   ふむ 。

「この世界に来て、余計に感じるけど、別に「なに」とか「誰」とか「どこ」とか、あんたあんまり関係ないもんね。…まあ、もし最初は猫被ってたとしても。直ぐに地が出ちゃうし。」

「  なる ほど。」

  「猫」に「猫被ってる」と言われるのが
   なんだか 面白くて。

 その「不思議な感覚」を捉え 自分の中で転がしながらも
青のホールを抜け
 大きな木の扉を押して 青縞の廊下へ 入る。


「   でも。自分のことが、よくわかってきたお陰なのかな。 確かに欲しいものを検索する機能は上がってるし、でも、それで言えばやっぱり「体感」、なんだろうなぁ。」

「うんうん。わかる。その辺、元々動物的だもんね。」

「  えっ そう?」

「そりゃ分かるわよ。あんたは昔の人に近いもの。………ほら、時々私が言う「もっと身近だった頃」。その頃はみんないろんなものと共存してて、私達に境界は少なかったのよ。でも、今は末期ね。まあ、だからこそ次の時代へ行けるんでしょうけど。」

「   うん。」


  その 「朝の口から出た 移行の言葉」


 それは私の奥深くに 触れて。

 「サイクルに乗る者たち」の「リズムを感じ取る力」
 その感覚の鋭さと 理解に感心するけれど
もっと気になるのは「破壊と再生のサイクル・リズムを当然に知っている感覚」、それ そのものだ。

「    なるほど、 ね。」

「なによ。ほら、もう開けなさい。」

 私が 感心しているうちに
勿論目の前は白い書斎の扉で しかし
 この「もにゃもにゃ」を片付けないとノブに手をかける気にはなれない。


 だから
 もう一度 
 綺麗な青い瞳を 観て。

そこから受けた「いろ」を 「頭」を通さずにスルリと 口にした。

「    やっぱり。受け入れている。 いや、わかってるんだ ほんとうを。 そこに、余計な感情はなくて、「それが自然」。 そういうこと、か。 だね。」

「………はいはい、分かったから、待ってるわよみんな。」

「 はぁい。」

 その 「私のことば」を聞いた朝は
  なにも言わなかったけれど。

多分 「私の言いたいこと」は わかったんだろう。

 スルリとフワフワの尻尾を足首に沿わせ、小さくぴょこんと跳ね
それを 返事代わりにして。

私よりも一歩先に、みんなが待つ書斎へ 入って行った。





   おっ ?

     あれ ?


   ほう 


        ふむ。


「 失礼します」と 書斎へ足を踏み入れると。

 そこには「珍しい光景」が広がっていて
 なんでか人が沢山、いる。


   ソファーに本部長
 その向かい側にイストリア
  左手の本棚の前にはアリススプリングスとブラッドフォードがいるし
  ふと気配がして横を見ると
  入り口脇にある椅子にメディナとラガシュが座って いる。

  
    うん?  なんだ これは。

 そう
 思いながらも。

正面奥の小部屋前には金色が陣取っているし
 姿は見えないけれど極彩色と玉虫色の気配は する。

だから
 私を見てニコリとするメディナへ 会釈をして。

 とりあえずは手招きされた イストリアの横へ
 座ったんだ。




「…さて。」

 予想通り、口火を切ったのは本部長で
チラリと本棚前の二人に目をやると 意外と落ち着いている二人の様子が 手に取れる。

この中で 一番久しぶりに姿を観るのは銀の二人で
しかし今、二人と私の直接の接点はない筈だ。


   なんで この二人も いる?

    最近、大きなことって なにか

    あったっけ な ??


 そんなことを 考えながらも
 「感じる部屋の気配」

 しかしここに「嫌な色」は 一切ない。


「…………で、お前、聞いてるか?」

「  へっ? ああ、すみません どうぞ。」

 なんだか「本部長の前置き」は聞き逃したけれど
多分重要な点はまだ始まっていない筈だ。

 「仕方がないな」、という顔から「確かに前置きに重要性は無かったこと」を読み取ると
両手を膝の上に揃え 正面を向き直し「どうぞ」という姿勢で 続きを促す。

 そうして 「用意ができた私」に 本部長が話し始めたのは。

 「ここに来て 表に出てきた世界の影響」

 その 話だったんだ。
















 
 
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