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17の扉 こたえしかない ところ
生成力
しおりを挟む「いや、予々思っていたのだが。君の…なんというか、その生命力?いつでも元気な力というか、回復力というか。通常、人間徐々に下降してゆくものだけど、それは若者であっても例外でない。だけどやはり、その枠には当て嵌まらないんだね。」
「現場にいて、その変化を経験してるわけじゃないんだけどな。しかしちゃんと、それも何故か誰よりも先を歩いてるんだ。不思議なものだ。」
「ウロウロしてるからじゃない?」
「だけど、当事者じゃないだろう?そうあれば普通はあまり変わらないものさ。」
「…確かに。」
キッチンの奥で カチャカチャ鳴る音
気持ちの良いすっきりとした蒸気と
お腹も心も満たされた気配
みんなの 優しいやり取り
しかし 集まっている焦点はこちらへ向いていて
心地良い「注目」が刺さるけれど。
その 「集中点」にある意味慣れている私は
心地良くエネルギーを浴びつつ、それと共に
食後のお茶を飲んで いた。
「篭っていると鬱々とするしな。」
「そう、それが普通だ。」
「変化が起こった当初は、いいんだ。周囲が変化して、自分の環境が少なからず、変わる。そうやって変化したつもりになる事が、スタートなのだから。だがそれからまた平坦な日が続くと、いつもの生活に戻って。行き先に迷う者は、大体が袋小路に嵌っていく。変化はもう元には戻らないのに、自分だけ戻っている事に気が付かずにね。」
「まだ目に見えて世間が変わってないからね。なんて言うの、人間達の行動?」
「一応、これでも以前よりは全然変わってるぞ?」
「まあ、そうかもだけど。」
「だがしかし、変えるのは自分達だ。」
「その意識があっても、何をしていいかなんて、分かんないんじゃない?」
「それはそうだろうな。これまでは何もかもが決められていたんだから。」
「だから始めは張り切っていた女性達も、最近は停滞気味なんだ。…止まるだけなら、まだいいのだけどね。別の、いや、逆の方向に走り出している者も、いる。」
「……ああ、ふざき込んじゃったりしてね。あと、逆に長老に縋ってみたりとか?集まって、愚痴大会になったりとかね。」
「まあ、まだそこまでは大事になっていないけれど。だが人は影に同調し易いからね。しかし、ヨルの区画に入れない者は「長」について気になってる様だ。」
「何かに縋りたい気持ちも分からなくはないが。」
「指針が無くなるとねぇ。」
「俺は全く解らないがな。今更何処をどうやったらそこへ行き着く思考なのか、よく分からん。」
「まぁまぁ。」
「だから最近、みんなあんな感じなのね。元気なのは一部の子供達だけ?」
「それもやはり周囲を感じ取り始めている。敏感だからね、子供達は。以前ははっきりと区切られていた境界線が崩れてきた所為で、良い影響もあるが勿論暗い影も忍び込む事になる。だからそろそろ他の扉へとも思ったんだが、まだ保留中なんだ。」
「…成る程ね。それでイストリアはこの子が気になったんだ。」
「そうさ。これだけ長い間、何にも何処にも所属せずに一人で…楽しんで成長している。自ら学ぶ術を持っているというのはやはり、特別な事だよ。大概失速するからね。」
「そういう意味で言えばウイントフークだって同類じゃないか?」
「それに、あなた自身もそうじゃない。」
「確かに。」
「成る程。」
「しかしなにか、私達は「教師だから」と、みんなが括ってしまって、それが普通になっているからね。なんと言うか、「そうせざるを得ない立場」に、いる。だからその立場でない者が、そうしている事が、余計に稀少なのが解るんだ。そういう意味ではやはりヨルは特別だ。…今は時折顔を出して好きに振る舞って貰っているが、それだけでも効果がある。ヨルがいる時といない時の子供達の雰囲気の違いが目に見えるから、面白いよ。」
「………まあ、この子はなんかあっちの世界でも枠外だからねぇ。まあ、殆どの子が閉じてるから、あまりそれに気付かれないけどね。ちょっとおかしな子ってくらいで。そもそも普通は、どうしたって外に引き摺られるからさ。………懐かしいわぁ、ウェストファリアも言っていたけど、この子は染まらないからね。」
「以前は外から来たからだと思っていたのだが。元々の性質なのだろうね。」
「俺は最近色々な場所を見ていて思うんだが、ヨルは自分の色が強いから染まらないというよりも、あの色もその色もどの色も持っていて、それが自由に変化するから、そうなんじゃないか?」
「成る程、確かにそうだ。」
「それに、以前はどの色も直ぐに燃えていたが。最近は随分、落ち着いたしな。上手く使えてるって事か。」
「確かにヨルの降らせる星屑や石の色は決まっていない。あの、泉で石が出来た時も多色だったしな。」
「その時々で本人も変化するし、結局「世界は一色じゃない」と。知っている、中身の現れなのだろうね。確かに、本当に目まぐるしく変わっているよ、この世界は。」
「変化だな。」
「………確かに俺もこうなったしな。」
「そうだねぇ。」
「その、先頭にいて渦、いや流れを創る者、か。」
その しみじみとした
イストリアの言葉と。
ジワリと 沁み込むいろに
有り難く頷いていると
急に 違う流れが やって来た。
「ある意味いつでも新鮮なのよ、この子は。常に一人でぐるぐるして、ポイって脱ぎ捨てて次の波に乗るの。」
うん?
ずっと 心地の良い「おと」を聴いていたけれど
この 朝の言葉が私のアンテナを「ピン」と弾いて
海で飛び跳ねる「キラリと光る魚」が 視える。
「 ねえ、なんか私のこと「イキがいい魚」みたく言うの、やめない?」
「だってそうじゃない。」
「 えっ うん まあ ? ?」
そう言っている 青い瞳の映す いろは
いつでも「鮮度最高」
どこでも「惹かれる波へ向かい」
「必要を得て」
「また新しい波に 乗る」
そんな いろで
確かにそれは「いつでも新鮮」で。
その「妙にしっくりくる状態を表すことば」に
私のなかみも 刺激される。
「それにしても………なんか、最近落ち着いたじゃない?どうしたの?」
「 どうした、と言われれば どうも?してないのかな。」
確かに「なに」が、「あった」訳では ない。
だがしかしみんなの「待つ視点」が視えているから、きちんと自分の中を浚って「ちょうどいいこたえ」を くるりと持ってくる。
「 でも。 結局なにが どうであっても「今 ベストであるしかない」に、落ち着いたからかも。 やっと落ち着けた、の方が正解かな。」
「…君のそういう所なんだろうね。自分できちんとやってきた事を振り返って納得いく迄、追って自分なりの答えを出せる。しかしなにしろ、継続力、持続力だろうね、それは。」
「確かに、実験からの修正と推論の検証、結果の纏めは必要だからな。お前はただ数字に弱いだけで、やることはやってるんだ。ただその扱う規模と範囲、そして対象が見えないから、本人の口から出る結果が、俺達からすれば突拍子もないものに見えるだけで。」
あれ?
雲行きが怪しいぞ
「頭を使うのが嫌いなんだけど、行動はできるし、その内容はちゃんと記憶してるのよね。ジャンルの違いなんだろうけど。この子勉強は嫌いだしね。」
ねぇ
ちょっと 朝
フォローも もっと入れて ??
そんな感じで
なんでか その日の朝は
食堂にて
「みんなで ヨルというものの検証会」が
始まっていて。
だがしかし それが「この頃の世界の気配」、それを受けてのものだったから
私もあまりツッコミを入れない様にして みんなの「ヨル談義」に そのまま耳を傾ける。
それに
さっきも「感じた」けれど。
やはり「みんなが」「私を」
「そういう風に扱って」
「そう会話し」
「それを言葉として発し 交流して重ねることで」
「それは徐々に形を持ち」
「現実のものとなって」
「世界に 影響を及ぼす」。
そして
それは やはり。
「私のチカラになるし」
「それを 私が使えるんだ」。
だから
明晰君に 細かい仕事を任せておいて。
私は「その場の空気を 目一杯味わうこと」
その「すべてで感じること」に
集中 していたので ある。
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