透明の「扉」を開けて

美黎

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13の扉 創造

果ての場所で

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「ああ、やっぱりいた。」


   ん?

「   あれ? 」


   どうした の ?

 
 「色のない 風」が 吹き付ける中で。

 
ひとり 佇んでいた私は
聞き慣れた声がした事に少しだけ驚いて
 くるりと笑顔で 振り返る。

 
 そう その 「声の主」は。

   「私のことを気にかけているレナ」で
  なんとなくだけど。

 「何故 レナが ここへ来たのか」

 私も 気付いていたからなんだ。



「…………やっぱり、あんただったのね。」

「   まあ。  そう、なりますかね ?」

「なんで疑問系なのよ。」
「う~ん?  そんなつもりじゃ なかった から ?」

 そう
今 私が佇んでいるのは
 「あの場所」、旧い神殿裏の崖っぷちで

 そこには勿論今も 「どす黒いシミ」があるし。

だけど 最近。

 私の所為で それが薄くなってきたからだ。


「…………?掃除、してるわけじゃないわよね?」

「  うん。多分、「祈ってる」からだと思うんだけど。」

「…ああ、なるほど。」

そう言って 直ぐに納得したレナは。

 フワフワの青い髪を靡かせながら
 ゆっくりと私の周りを回って 地面の変化を眺め始めた。

だから私は。

 その「青い色が着いた 風」を観ながら

 「自分のやっている 祈り」について
   考えていたの だけど。


「………ねえ、ヨルはさ。それでいいの?…いや、分かってて、訊いてるのよ?あんたは「それでいい」って言うって。でもさ、これだけ色々やってるんだから…なにか、気焔と二人で店を出したりさ。したいことって、ないの?」

「     成る程。」

「………なんで「成る程」なのよ。」

 私は ただ くるりと丸く輝く
 茶色の瞳を見ていて。

 「変化している ラピスの街の様子」
 「レナの店が軌道に乗ってきたこと」
 「活躍の幅を広げる女性達」
 いろんな場所で まだ「問題と言えるであろう こと」は あるけれど。

だがしかし 「上向き」になってきた 世界に於いて
 「その一端を担う」「私が 
 それが気になっているんだ、と 改めてわかったから。

 「その 思い」が 嬉しくなると共に
 自分の 考えが裏打ちされたことの嬉しさ
そして
「確かに そちら側から見ると そうなるよなぁ」なんて
 呑気に考えていて 
ブツブツ言いながら回っているレナの話を全く 聞いていなかった。


「………てかさ、なに、「立役者」?そう、なる訳じゃない二人とも。まあ、気焔はあれこれ動いてるし男達の中でも一目置かれてなんか全然違うけど。でもヨルはもう「幻」みたくなってて、ラピスでだって少し前までは「女神」とか「魔女」とか、噂はあったのよ?………あ、最近いろんな所の話が入ってくるのよね。まだ、行き来は完全じゃないけど、話だけならかなり伝わる様になってきたの。」

「でも、やっぱり噂は風化するものね。みんな新しい事でいっぱいだから、話題は直ぐに移り変わってあんたの事は忘れていく。………なんか、私。ふと「なんだかなぁ」って思っちゃって。こうやって「何事もなかった様に」、なんでこの島が何にもないのか誰も知らない様に。また、「普通に戻る」のかなぁってなんだか居た堪れなくなっちゃうの。………なんだろう、この気持ちは。」

「    」

 その 「話の内容」は
  殆ど聞いていなかったけど。

だけど
その「レナの思い」が ふわりと私の胸の中にも 入ってきて

 「確かになぁ」
  「なるほど」
    「レナも まあ そう 思うよね」

  「私達は」「それを」「から なぁ」

 そんなカケラを眺めながら
自分もこの島全体に伝わってある 「古いエネルギーチカラ」を 感じて みる。


 そう 始めの頃に。

あの 広い図書室で ワクワクと歴史を調べていた私は
 「無に帰した」この島の循環を 「辛いもの」と捉えて「思い」、沢山のことに奔走して
だけど 
 結局 「チカラは巡っている」と。

 あの 石窟を見て 気付いたけれど

今 観れば
 「この島は この島のサイクルで廻っていて」
 「それは なんてことない自然で」
 「また 再生し」
 「それを繋いでいく事ができる」それがわかる。


そう きっと もう「崩壊」は しなくて。

 しかもそれが
「みんなの意識が変わったからだ」
「その新しいチカラいろ」が 風としてこの島を取り巻き流れているのに気付き
  「ああ 成る程」
  「そうだよね」
  「そういうことか」と。


 その「理解の 一連の流れ」
   「せかいが 私に見せていること」の翻訳を 読み


 「変化した 風」  「空の雲」

      「そこに在る 人々の意識」

   「チカラ」

      「ひかり」

  「伝わる エネルギー」

     「せかい」

 その「構図」に 納得して
また新しい景色が視えた自分に 労いを送る。


 そうなんだ
 「小さなことでも 気付いたことを 留めておく」
 
その行為は 私をまた数段アップさせる為の日常に落ちている「手段」で
 私は「せかいが提示している それ」を着実に拾い 
 「瞬間 瞬間 自分のかたち光の創世神話を織っている」。

 「そのこと織り込んでいくもの」自体が
 光の創世神話で あり
 その「見えないかたち」を 創り
 「私の本当」も 創って
 「すべて」は 完成へと拡大してゆくのだ。


「    てか。 「完成」って あるのかな?? ない よね ??」

 そう 私達は「可能性の存在でもある」から。

それは
 「どっちでもいい」し
自分が「完成だ」と決めたならばそこまででいいし
「もっといける」と思える限りは無限へ飛び込める、それもわかる。


「     ふうむ。 奥深い。」

「………ねえ。なんか、拍車がかかってるわね?」
「  うん?」

 そんな 私を
側で見ていた茶色の瞳は くりくりしながらも興味深そうに
「私の姿」を頭のてっぺんから 足先まで
 眺め回して いる。


「なるほど、だから。まあ、あんたが商売に興味がないのは分かってたけど。………そもそも「住んでる世界が違う」もんね。」

「      ぅん? ?」

「ああ、おかしな意味じゃないのよ?分かってると思うけど。…そう、デヴァイとラピスの違いとか、そういうのじゃなくて。でも「別の扉から来たから」とかでもないんだよなぁ………なんだろう、ピッタリくる言葉。」

そう言って考え始めた彼女の答えに 私も興味が湧いてきて。

 隣で ついニコニコと構えながら

考えが纏まるのを 待っていたのだ。


 
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