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10の扉 わたしの せかい
リュディアの部屋
しおりを挟むよっ
ほっ
とっ
との
とっと と と ??
「 っ たた」
「大丈夫??」
そんな 風に。
「ポスン」とリュディアの部屋に降り立った自分
しかし足元が覚束なくよろめいて
抱き抱えて貰ったのを 可笑しくなって笑う。
「 ふふ フフフフ」
「………大丈夫そうね。まあ、ヨルがこうなのはいつもの事か。」
そんな 優しい声と背の高い ゆるふわウェーブに包まれながら。
良かった。
今 大丈夫だった みたいね ?
「部屋の主のオーケー」があったから
「降りれた部屋」
その「相互確認」を自分の中で確認しながら 私はスンスンと お風呂上がりのいい匂いを嗅いで いた。
きっと 「寝る前」の今
いつもの「夢の中」よろしく、やってきた私のことを。
彼女がしっかりと迎えてくれたのが嬉しくて、しかし
その反面「もしかしたら」と自分の中に「拒絶されるかも」の色があったことにも 気が付いて。
そんなの
「ポイ」よ
そうそう「ポイポイ」
そうやって 自分の中の澱をすっきりと排した 後。
「こんばんは。お嬢さん。」
そんな意味不明な事を言って 再びリュディアの失笑を買っていたのであった。
「で?今日は一体、………って言うか結婚式の事よね?」
「 そう だね?」
若干 失礼だろうが「意外にも可愛らしい部屋の中」を ぐるり観察している私に、優しい薄茶の瞳は細まっている。
ふむふむ
やっぱり リュディアは 穏やか 優しい
そんな感じで 可愛らしくもあるけれども
しかし
造船所では ふむ
やはり 「武器」は もう 要らんのだよ
ふむ。 うん
「…本当は、子供達にも結婚式には来て欲しいのだけど。それは難しいわよね?」
「 うん?」
私の思考を読んだ様に、そう言った 真剣な瞳に。
中途半端な事は言えないが、私が確実にわかるのは ここまでだ。
「 多分。それは、こっち側の問題 かも。」
「……………そうね。」
勿論、子供達は招待されれば。
喜んで 行くだろうし
なんなら 服装は私が準備すればいいし
イストリアもいるし
それはなんとでも、なるので ある。
「やっぱり、ヨルの言った通り。場所に関しては、なんとかなりそう。イストリアがこっちに戻ってるのも大きいし、ウイントフーク先生もいるじゃない?あの二人が賛成してると言えば、今は大概なんとか、なるわ。それに…あの人達も、好意的だし。」
「 ふぅん? まあ、それなら良かった。」
リュディアが言っている「あの人達」はきっと
アリスとブラッド、銀の家を今取り仕切るあの二人の事だろう。
これまでずっと 反対されてきた自分達の 行動に。
なにも 「文句を付けられない」
それにリュディアは慣れていないのだ。
反対されないのは いいことなのだけど。
なんとなく、含みがあるその色に 「うんうん」と頷きながらも自分の中身を整理する。
私が 彼女に確認したいこと
それはそんなに多くない。
とりあえず忘れないうちにそれだけ訊いてしまおうと。
くるりと瞳を回してある、美しい茶色に こう問い掛けた。
「 リュディアは。別に「綺麗な」とか いや、「綺麗」は、綺麗なんだけど「新しい」とか、「豪華」とか。 そういうのは別に、拘り無いよね?」
「………そうね。私もあの後、許可を貰って行ってきたけど。あのままでも、勿論素敵だけど流石にそれは両親が許さないだろうから。少しだけ?どの位なのかは分からないけど、手が入るのは全然。でも、そう、造り替えるとかじゃないの。…多分、ヨルが言ってるのはそういう事よね?」
「 そうそう。 まあ、あそこちょっとボロいじゃない? でも、それがいいのよね。うん、わかった。 リュディアがそれなら多分大丈夫。 シェランは まあ いいや。」
ニヤつき出した私を見て、逆に微笑ましい様子の リュディア
なんだか私も それを見て。
「自分の成長を わかられている」
そのおかしな「鏡の様子」が面白くて 二人で目を合わせて 一頻り笑っていた。
「………えっ、ヨルが聞きたいのってそれだけ?」
「 そうだね?あとは まあ、なる様になる でしょう。」
「出た、予言。」
「予言じゃないんだけど まあ そう?なのか。 なる、のか。 ?」
「なんかね………。」
笑うのを止めて、首を傾げ始めた 私を 見て。
そうしてチラリと天井を見た 薄茶の瞳がキラリ 美しく見えて
「イストリアよりも濃いけれど 赤味が強いな?」
なんて 思っている私に移って きて。
「なにか、私も。ヨルみたいに、色々みんなの助けになりたいし、何かしたいんだけど。中々それって難しくて、そもそも何をすればいいのかも解らないし。………みんな今は、迷ってる?試行錯誤?以前より良いのは、分かるんだけどある意味。混乱、なのかなぁ。なんか焦っちゃうんだよね。ヨルに言っても仕方ないんだけど。でも。」
「 うん。」
その 真剣な瞳を 見て。
「私に言うのは 違う」
「けど 聞いて欲しい」
「言いたい」
「世界 世間の混乱」
「浮足立つ 雰囲気」
「強い 風」
「新しい 空気」
「チラリと光る 希望」
「だがそれと共に ある不安」
その どれもがわかって。
はて
さて
私は どう したものかと。
少しだけ 考えて いたんだ。
「て いうか。リュディアは「そのまんま」で、良いんだよ。いや、みんなそうなんだけど。」
「………うん?」
きっと 私が「考えて」いたのは 一瞬だったろう。
自分「脳内」では
ぐるり 一周まわった けれど
きっと「こたえ」なんて 決まってるんだ
そう「このこたえ」ならば。
それは いつだって「ひとつ」だからだ。
「う~ん。 ぶっちゃけ、世界はぐるぐる 混乱してるし それはある意味仕方ないんだけど。多分、リュディアは私と話してたから、その理由も大体分かってるとは 思う。でもさ、別に いや、特に リュディアは。それで、いいんだよ。「そのまんま」で いい。」
「……………因みに、なんで?「私は」?」
「 ふぅむ。 その、理由は色々 あるけど。 ごめん、気になるよね。とりあえず一番は まずこの結婚式が「風穴」な こと、それに「まじない道具をやってるリュディア」な こと。それってどっちも。 これまで無かった、ことじゃない? だから、そのままでいいし、その方が上がるし、なにより それに。」
「うん。」
「私は、一人でいいんだよ。私は私の場所で、「私のいろ」をやって、リュディアはリュディアの場所で「リュディアの色」を やらなきゃ。 てか、「ぜんぶわたし」だったら、やだもん。」
「…ふふ、なにそれ。………でも、そうね。解ったわ。確かに「ヨルは一人でいい」。」
「えっ それどういう意味。」
「まあ、それに誰も代わりには、なれないしね。」
「そうだよ。 それは、「リュディアの代わり」も いない、って事だからね??」
「うん、解ってる。」
「みんながみんな、試行錯誤するのはいいし
それは必要だとも、思うけど。リュディアはやりたい事が決まってて それをもう、やってるんだから リュディアが見本なんだよ。 みんなの。だから そうでないと困るし。うん。 みんな違って、みんないいし、 なんだろうな 。」
貰ったものを 返したいし
ここにピタリと嵌まる カケラを出したい。
そう思って 回り始めたカケラ達
突然の 私の沈黙に。
釣られた様に 考え始めた 緩い紺色のウェーブは
気付けば素敵な「紺色のビロードリボン」で緩く結ばれている。
ふむ
これは エローラか 結婚祝い か
しかし
この 「生地」は。
シャルム だな?
そうだよね この 微細な「絹」感
それを「綿」で出す この技術力
美しい 「毛並み」
いや ビロードに「毛並み」は おかしい か。
そんな脱線を しているうちに。
くるくると動いていた彼女の瞳は
じっと 私の上に止まっていたのだった。
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