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8の扉 デヴァイ 再々
楽しむ こと2
しおりを挟むどう しようか 明日に しようか
でも。 多分。
あの二人、待ってると 思うんだよね 。
いや、「待ってる」と言うよりは
そのまんま 私が行くまで ずーっと。
アレ やってそうな 気がするんだよね 。
「 ふむ。」
銀の区画から戻り、昼食を食べた 後。
「………なんだ。」
カチャカチャと 聴こえる食器達のお喋り
奥の リトリが何かを焼いている音
その いい香りが鼻に届き始める中
立ち働くマシロとイリスをボーッと 眺めながら。
珍しく無言で食事を終え、静かにお茶を啜っている私に 本部長は何かを察したのだろう。
いや きっと
あまりにも「なにか言いた気な目」をしていたに 違いない。
うむ。
「 あのですね 。」
しかし 諦めた様に溜息を吐いた彼に事情を説明すると、案外あっさりとカケラを提供する許可が出た。
やはり自分と同じ様な色を感じて、断れないのかも知れない。
それか
また何かの時に融通してもらおうと思ってるのかもだけど。
しかし、なにしろ許可は得たのだ。
気の変わらぬうちに、出掛けてしまった方がいいだろう。
「じゃ、行ってきまーす。 夕飯迄には帰りますね ? 多分。 」
「多分」と言う言葉に少し顔を顰めた白衣にヒラヒラと手を振り 「結果は報告しろよ?」という後押しを得て。
そうして早速
ウキウキと 黒の廊下をスキップで
横切って行ったのである。
「 ~♪ 」
ぶっちゃけ銀は隣だから、派手に弾んでいれば
直ぐに着く。
おっ とっ と
いかん。
その、勢いに少し ブレーキをかけて。
色々と案内されるのも面倒だと、羽衣を羽織って来た私はこっそりと住人の後について 扉を潜る。
そうしてそのまま、きっとまだ同じ作業部屋にいるであろう 二人に向かって一直線に進んで行ったのだ。
「 ジャ~~~ン♪ 」
ん? あれ ??
扉を開け パッと 羽衣を脱いで
得意気に仁王立ちをして二人の背後に立ったのだが、期待していた様な反応は 出ない。
「やあやあ、お待ちしていました。」
「て事は、用意できたんですよね?こっちはもう準備万端ですよ。」
えっ
やっぱり ?? ?
案の定、二人は予想通り。
私が直ぐに戻って来ると思っていたらしく、昼食も食べずにずっと作業をしていたらしい。
少しだけ迷ったけれど、やはり直ぐに戻って来て正解だったのだろう。
隅には 布が掛けられたトレーのワゴンが見えて いい香りもする。
あれはきっと二人のお昼ご飯の筈だ。
だから 本当は私も直ぐに試したかったけれど。
カケラを出すのは後にして
先ずは 昼食を取ってもらうことにしたんだ。
「 ふむ。じゃあ、普通に混ぜていくだけでいいんですね?」
「ええ、しかし私達が触れずに貴女にやって欲しいのです。」
「 かしこまりました。」
彼の 思いの外真剣な目に
なんだか かしこまってしまったけれど。
静かな作業部屋の中、用意されてある「パレット」それを見つめながら
並んである「これまでの青」を観察する。
そう
コーネルピンの言いたい事は 私にもわかる。
多分 彼は本能的に。
「色が混じる」、そのことを知っているのだと
思うんだ。
だから私が来た時点で、「二人が決めた色」は既に用意してあったし
作業的に 後はどうやら私の「可能性のカケラ」を混ぜ込むだけの様だ。
やっぱり わかる人には 普通にわかるんだ。
でも まあ。
そう だよね 。
その色が自分のカケラと「どう 混ざるのか」
これまでの青の性質を読みながら思う「反応のこと」
「どこまで見えているのか」、職人の目によっても違いがあるだろう こと。
それを 言葉に出すか 出さぬのか
そもそも「気付いている」と 自分で気付いているのか。
でも それは
きっと「わかる」人には当然のことで しかし
そんな事を考えもしない人にとっては「驚き」の内容なんだろう。
そう、そもそも彼は「それ」を 当然だと思っているに違いないのだ。
「わかりました。 じゃあ 途中、ストップって 言って下さいね?」
「はい。」
そんな 自分のぐるぐるを抑えて。
二人の顔を交互に見ながら、意思とその向かう先を確かめて 慎重にカケラを加えて いく。
「コーネルピンの 出したい 色」
「ユークレースの 出したい 色」
「二人が浮かべて ある 光」
「それを読み取り 私のカケラに加える こと」
「私の いろ」が 邪魔しない ように。
「透明」に 近く 「カケラ」を調整して いくこと。
最初の一手が 肝心だ。
ゆっくりと深呼吸して しかし呼吸は止めず
流れる様に細い光をイメージしながら、ゆっくりと 小さなカケラを一つ、加える。
「丁寧に 自身の光が 込められた仕事」
「そこから生まれる 宇宙」
「加わる また一つの宇宙」
「反応」
「変化」 「変容」
「なんでもありの 組み合わせ」
「星の数だけある 宇宙」 。
「ああ やっぱり全然 違う」
カケラと カケラが。
触れた瞬間 すぐにわかる、その違い
「ことばにできない なにか」が生まれる その感覚。
パチパチと 爆ぜる
小さな火花がカケラから ホロホロと溢れ生まれ始めていて
その「いろ」が 「どちらに転ぼうか」、そんな表情を出しながら 私達三人の間を回り
「自分の色を決め始めている」、その様子が 想像以上に美しくて。
ラピスの時とは 違う「私の目」
それは 「職人」の違いなのか
「場所」か 「もの」か それともなにか
世界自体が 変わっているからなのか。
その 「反応のカケラ」に私の「くるくるのカケラ」が 混じって。
更に煌めき始めた 部屋の中
思わず、手を口に当てチラリと周りを見る。
二人にこの「カケラ達の反応」は 見えていないのだろうけど。
でも やっぱり 思ったんだ
ああ 私が 欲しかったもの
欲しいもの
見たかったもの
現したい もの って。
やっぱり これ なんだ。
「楽しみ」「興味」「好奇心」を
追い求めてゆくこと
「自分が惹かれるもの」を。
何処までも辿り 「美しいもの」を発見してゆくこと 。
カケラを加えながらも そう 思う 熱気の中
勿論二人の「いろ」も 相まって。
「予想外の いろ」
それが出始めている、出て 来そうであるこの 瞬間が。
なによりも 愛しいと 思うのだ。
「 だよね。 「創造」って そういうことで。 生み出すって それで。やはりそれぞれの「純粋な いろ」が 仕上がりを決めるんだ。」
「はい。」「ええ。」
カケラ達のことは「言葉」に 出していないけれど。
きっと二人にはこの場の「いろ」と共に 私の言いたいことは伝わっているのだろう。
それはやはり 職人独特の「空気」で
ラピスで 工房にいる時も。
そうだから、わかる。
この なんにも言わなくとも
「いろ」が伝わる
その 感じが。
堪らなく 好きなんだ私は。
しかし、見惚れているだけでは「意図した色」は 成らない。
「で、もう少し? ですかね?」
「ああ、ほんの少し濃い方が 」
「僕はこの位でもいいと思いますけど でも」
そうして 私達は。
じっくりと 色と自分達のチカラを煮詰め、心ゆく迄
「反応」を楽しんだので ある。
その夜は なんだかぬくぬくした気持ちで
マシュマロに滑り込んだ。
「 でも。 やっぱり。チカラの、「源」って。 そう よね。」
くるくると自分の中に未だ巡る、「二人の色」
それをまた 微妙な面持ちで眺めている金色を眺める、自分たちの構図が 面白くて笑う。
そう そうなんだ
やっぱり 私は「それ」が 好きで
「見る」のも
「やる」のも 好きで。
でもきっと「世界」の中にある、創造では なにか物足りなくなっている自分の中身を思い また想像を巡らせてゆく。
「あの二人は。正反対だけど、「型」が無いからな。いや、ユークレースは あるのか?でも自分の創りたい物はあるよね? やはり。 「焦点」、の 違いか。いや
「練度」か、 まあ 色々なんだろうけど。」
ブツブツと 呟きながら
目の前でキラリと光る 美しい金を見て思う
「誰が 為にそれをやるのか」
「なんの 為にそれをやるのか」。
それは 今「世界」に在らば 必ず「己」か「他」かで
しかしそれが「己の為」で なければ。
「すべてが自己のエネルギーで 創造をする」
「ゼロからの 創造」
それは成らない。
「誰かの 為」「なにかの 為」にやる それは
その 奥を観れば
凡そ「自分の為」だけれども
それを認めて。
「真の自己」の為に 己を創造していかなければ
「真の創造」は できないのだ。
「すべてはまるっと自分」で
「未知」「可能性」「見えないもの」と反応し
共同創造した 時に初めて。
「自分の 想像」が 具現化し
「ほんとう」が かたちを持つ。
きっと そう。
「学び」「表し」「表現して」「楽しみ」
「味わい」「慣れ」
「また学んで」「飽きて」「次へ進み」
「どんどん上昇して」。
ひとは 次へと進む。
「まだ、「見えない」から。「もの」を 求め そこに何かを見出すのか。」
それも
そうなんだろう。
しかし すべては 光で
エネルギーでも あって
「見えない」からこそ
「もの」が「扉」になり「媒介」になり
「刺激」になり 「触媒」にも なる。
「ま、結局。 すべては 「扉」ってことよね。」
うむ。
そうして今日も 美しい光が
具現化した「楽しみ」を胸に持って
私のせかいへ遊びに行くので ある。
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