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8の扉 デヴァイ 再々
選択肢
しおりを挟む私からの プレゼントは何がいいかなって
思ったのだけど。
きっと 「結婚祝い」なんて
気の利いた事を考えそうにない、あの人を巻き込んで
私の要望を実現することに したんだ。
まあ 自分が見たかったのも 多分にあるけれども。
「なんか、多分。火薬?火を着けるとその色が弾けて、空を彩る花になるんですよ。その、組み合わせのセンス、そして技術力。」
「ふぅん?」
私の 説明は勿論 全然意味不明だけれど。
きっと この人なら
わかるだろう
そう知っているから適当に説明している、それは ある。
「教会から出て いや、礼拝堂か。それで、昼間だけど。雲に映える、花火を作る事なんて ウイントフークさんには朝飯前ですよね ?」
「で、どのくらいの大きさなんだ?」
「えっと 」
案の定、本部長は乗り気である。
でも まあそれは
「結婚祝い」に対してじゃなくて
「新しいもの」に対してなんだろうけど。
「後は説明してやる。今日は予定があるんだろう?」
「あ、うん? あ!!そうだった、 ありがとう千里。」
何故 この狐が私の予定を把握しているのか。
それについては突っ込まない方が無難だろう
そんな空気を出して とりあえず書斎の扉を出て青縞の廊下を 歩く。
そうだった 危ない
忘れそうだったわ 。
いや しかし。
実際問題、私がこんな大切な用事を忘れる 訳がない。
そもそも 私の空間に
「時間」の 感覚がないから 。
その「今がいつなのか」 それがいつも曖昧になるので ある。
「 ふんふ~ん♪ あ、朝も行く? 」
「えっ、嫌よ。絶対長いもの。」
「まあ そうだね。」
今日はリュディアのドレスを相談に、マデイラ洋裁店へ行くのだ。
「今日中には 帰ってくる。うん。」
「なにそれ………ま、なんかあったら迎えが行くからいいだろうけど。」
「まぁね。」
心配かけると いけないけど。
しかし、思い出した私の色を感じて、彼も「今日は遅くなる」と思っているに違いない。
それを 思いながらクスクスと
笑って。
とりあえずは支度をしようと思うが、「ふむ?」と確認した出立は「いつもの羽衣」
何ら問題のない格好では ある。
「とりあえず、いっか。多分リュディアとレナしか来ないし。お客さんには見えないし。」
なんでか まだ。
ラピスにこの格好で出掛け、「見られた」事はないのだ。
いつもの 「融け込み観察」なら
チラリと見られることは あるけれど それだって。
「なに」、と認識されることは ない。
きっと 人は「きちんと意識して見る」という事を
日常的に している人は少なくて。
「だから、まだ なんだろうけど。」
逆に言えばまだまだ私は出かけ放題、それもある。
「まあなにしろ。夕飯迄には帰ってらっしゃいな。」
「はぁい。そうだね、最近 ここのご飯以外は うぅむ 」
それも ある。
私のからだが イストリアの畑のもの以外は
受け付けなくなってきたのと
「あの色」が 注がれているからか。
「い、いってきます 。」
「はいはい。気を付けてね?いや、気を付けるのは相手かしら…。」
とりあえずは そんな失礼な言葉を聞き流しながら。
ピタピタと 頬を冷まし
移動する事にしたので ある。
「えっ、でも母が許さないわ、きっと。」
「でも、言ってみたら?言うだけ。」
「まあ染めるならいつでも出来るしね。」
「でもやっぱりこの色、素敵よね………。」
「シェランが見惚れ過ぎて駄目かも知れないわよ。」
「それはある。」
「 うんうん。」
可愛い なぁ。
素敵な 店内 水色基調
キャラキャラと 騒がしく可愛い三人
色見本の素晴らしさ
決めたいけど 決まらない ドレスの色
私は勿論 リュディアには「あの色」が
似合うと思うけれど。
とりあえず訊かれても、なにか「言う気」には なれない。
なんでか わからないけど。
「自分のドレスの色は 自分で決める」
それに勝るものは ないと思えるからだ。
「 ♪ 」
そうして そんな可愛い三人を横目に店内を彷徨き
フラフラと 余裕で引き出しを開けようと屈んだ その時に。
突然 質問でもない「私の話」が降ってきて くるりと振り向いた。
「えっ、それ?やっぱり?」
「迷わないわよ。絶対これ。」
「あー、そうかもね。」
「ヨルならこの色、選ぶだろうね」と。
話の中で
ズバリ エローラ様が示した色
それは 私が「いい」と思った色だった。
「んっ? えっ ? 」
なん で ?? ?
そもそも、「何故」。
「私が選ぶであろう色」の 話になったのかが、わからない。
キョロキョロとみんなの顔を見ながら、自分も色見本が置いてある テーブルに近づき空いている椅子に座る。
みんなは立ったり座ったり ドレスの袖や裾丈、色見本を持って当てたりと くるくる忙しそうに働いていて私だけが呑気に店内を彷徨いていた感じだ。
ある意味「傍観者」が通常になった私の立ち位置に、何故 話が飛んできたのか。
それがわからずに首を傾げ、しかし エローラの鋭さも「流石」と面白くなってきて。
私は いつの間にか前のめりで
みんなの話を横から 聞いていたんだ。
「ううん、私が決められなくて。でもほら、ヨルはいつもスッパリ決められるじゃない?だから、なんでかなぁと思って。エローラは、なんで?」
「私は………なんでだろう。でも、ヨルは分かり易いから。でも私が分かるのは服の場合だけどね。」
「私はあっち。」
「あっちって、どっちよ。」
「フフフ。」
話が 散らかり始めた ところで。
自然と集まった視線に、私の中のカケラが くるくると回り始める。
「う~ん。 でも、私の場合は。 大体、選択肢が出た時点で、こたえは決まってるからなぁ 。なんて言っていいのか、わかんないけど。」
「でも、それは分かる。」
「まあ、あんたはそうでしょうね。」
私のフワリとした こたえに。
ピシャリと言うのは 勿論レナで
隣で頷くのはポニーテールを揺らしているエローラである。
対して質問者のリュディアは 少し考える様に視線を彷徨わせている。
そうして少しすると、自分の中が整理できたのか。
冷静に こう言ったんだ。
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