透明の「扉」を開けて

美黎

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8の扉 デヴァイ 再々

楽しむ こと

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 奥の深い いろ

   繊細な彫り
 緻密な細工の小さな宝石箱と
   大胆な筆使いの絵画
 そのそれぞれの「個」が際立つ つくり。

「あの。これって、やっぱり 今は再現できないものなんですかね?」

「いや、原料自体がもう無いでしょう?しかしね、あなたの石からその「可能性」の部分を引き出して 」
「いや、僕もそう思うんですよ。染料にしたって、反応を見ながら割合を増やしていけば 」

 
 わやわや  ワイワイと
 私達が話しているのは 今は亡き 創り手と
 その「生み出されたもの」達の話

私が素を出して盛り上がっているのは その相手がコーネルピンとユークレースだからだ。

 この 二人は私が「なに」でも。

 そう 全く気にすることはなくて
  いや ユークレースは少しアレだけれど
なにしろ気を使わずに「込もるもの」について話ができるのは 単純に楽しい。

ここデヴァイ
引き篭もってある 私だけれど。

こうして「ありのまま 在れる場所」では、少しずつ外に出たりもしているのだ。
 だって私は「生きて」もいるのだから
 この世の美しいものを愛でる権利は 
 やはり失ってはいないので ある。


今日は この頃自由度が増した銀の区画
そのコーネルピンの屋敷で。
 道中、キョロキョロしながら中々進まないユークレースと
 調度品を眺めながら 屋敷の廊下を探検してきた。

やはり コーネルピンが 白の区画に行くよりは その方がいいと本部長と相談してユークレースと待ち合わせしたのだ。

まあ 案の定キョロキョロし過ぎなのは彼だけじゃないけれど 私は少し、「澄ましたフリ」が上手いのである。
 うむ。
 いや 見えてないだけかもだけど。


そうして広く古いお屋敷を楽しみながら、私達が今 見せてもらっていたのは「調合」の場面で
「込もるもの達」の色を参考にしながら 彼の使っている道具や絵の具を見せて貰っていた所だ。
涎が出ない様に口を抑えながら私が見ていたのは バレていない筈だけど。

 そう その中にあったのは
 まだ「試作品」だという 新しいカード
 
美しい地色と厚みのある独特の 紙
 絶妙な 彼の配色の流れと 繊細な筆使い。


「 いや  流石ですね  。ふむ。」

調合中は こちらに目もくれないコーネルピンを見ながら、隣で釘付けになっているユークレースに 安堵して。
 私も心置きなく 自分の中へ没頭していたんだ。



  キラキラ   キラキラと回る

 「創造」の カケラ達

     
   「自分とは 違う 色」

     「方法」    「順番」

 「見た事のない 道具」

     「色数の多さ」

  その 一つ一つに 「なにかが 込もる」様子。

 練り上げられて ゆく

  「ワクワク」と「キラキラ」の カケラ。


 「創ること」それはやはり 「儀式」に似ていて。

 自分のチカラを 捧げることで
  「応えてくれる せかい」

 そうして私達は 響き合い  讃え合い

 共同創造 してゆく。


   「秩序」  
         「調和」

      「それぞれの 法則」

        「呼吸を合わせること」

  「祈り」

       「コンパスを合わせ」

    「意思のひかりを もって」


  「真摯に」  「一点集中すること」。


「職人の技」 それはやはり 尊きもので 美しき もので
それは「もの」と「ひと」がどこまで呼吸を合わせられるのか、それを顕現している貴重な 場だ。


「だからこそ。 願い、祈り 讃え 大切にして 繋いで いく。」

 ひとり 心で唱える 
          自分へ刻む ことば


そう ありたいもの 
   あるべきもの
「べき」という言い方はしたくないけれど。

こればかりは やはり「べき」と言いたくなるものなのだ。
「本物である」が 故に。



そうして 私が一人ふむふむと深く 頷いていると
どうやらひと段落したらしい彼は、ユークレースと顔を突き合わせて何やら話し込んでいる。

私が分からない話かと思って、じっと聞いてみたけれど どうやらそれは。
聞いていると なんだか少し、協力できそうな気がしてきたのである。


「しかし、ここはどうする。」
「いや、それは 」

「うーん、私のカケラで良ければ。とりあえず 足してみましょうか。後は 本部長かな 。」

「  。」

突然、そう口を挟んだ私に 二人のキョトンとした顔が面白い。

どうやら二人は「もっと深い 青」を出したいらしく、
しかしなにしろ それが今ある材料だけだと「不可能である」と言うのだ。
けれども 二人とも「出したい色」が具体的にあるらしくて。

 それなら もしかして 「私のいろ縛りのないカケラ」を。
 加えてみれば いいのじゃないかと思ったんだ。


「許可は取らないと多分、不味いですけど。でも「これまで無かった色」なんですよね?ん?「今はもう無い色」なのかな? でも、なんとなく二人には「こうしたい」、という共通認識が あると。それをできるだけ詳しく、教えてもらえれば なんか「私寄り」にはなるかもだけど、多分 「不可能」では ないと。 思うんですよね 。。」


 そう でも 多分 
 思うのだけど。

 「無限」「可能性」「オールマイティー」
 「なんでもできる」、その空間から出した
   カケラであれば。

「多分。 できる 。よね、うん。」

キラリと光る 私の「中にある」、多色のカケラの張り切った 艶を感じて。

私には 確信がある。

 それに。

 多分だけど。

二人ものが わかるから
 「そうなる」んだ。

 だって この場の全員が 「できると思っている」のだから。


「で、どうすればいい いや、どうしたいんでしたっけ?似た色の見本はありますか?」

「いや、この色なんだけどね。もう少し深みというか黒味のある、青が欲しいのです。」
「ああ、成る程。紺色でなく、ね。」

「そうそう。」

「えっ、じゃあ早速ですけど。私はとりあえず帰ります。早ければ  うーん、でも明日かな。 」
「いや、今日でも」
「いつでも………いいですよ。」

「えっ、 うん はい。」

 その 気持ちはよ~く わかる。

クスクスと笑いながら、二人に合図して 
本部長をどう攻略しようか 話の内容を考える。


 ふむ 。

そうして、深く頷いた後 
二人と「出したい 色」を 詰めた私は。

 「新しい 色を創る」
そんな楽しい課題を持って 一先ず自分の空間フェアバンクスへ 帰ったので ある。







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