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8の扉 デヴァイ 再々

必要 

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「君を、見てると思うのだけど。それは、それぞれに「必要な道筋」なのではないかな。与えられ、且つそれを持って君の様に自分で感じ取りながら学べる者はそれでいいのだろうが、与えるだけでは。それに満足してしまって、堕落する者もあるだろう。それは勿論、与える方、与えられる方、両方ともそうで。きっとそれぞれの道に沿った、学びがありその時に対価が双方にとって必要であらば払う方が身になるのだろうし、その必要がなければ。きちんと自ら、学び、進めるのだろうよ。」

「なる ほど 。」


 「払う必要性」確かに それは ある。

先日の自分の気付きをホロリと漏らした所。

イストリアが齎してくれたヒントは やはり中々に素敵なカケラである。

「「お互いがお互いを尊重し、補い合う」。皆が、そこまで基盤が出来上がっていれば。世界でも、上手く回るのだろうが今はまだ世界は重い。その「対価の意味」も、君と他の人間は違うだろうしね。もう少し重石を下ろして、みんなが成長して。そうなれば、とても良いとは私も思うよ。なにしろ時間は多少、必要だがね。何事も一足飛びには、いかない。」

「 はい。」

その 優しい色を 受け取って。

 わかっている 様でいて
   やはりまだ 浅はかな自分

しかしそれに落ち込むことはもう なくて。

新しく手に入れたそのカケラが自分の中をくるくると回るのを 見つめていた。


   まわる    まわる

     新しい いろ 
  気付いていなかった カケラ

   
   優しい 薄茶の まあるい カケラ

それがピンクと紫の 美しいグラデーションと
相まって。

 「ああ 美しいな」とぎる 
            いつものセリフ
しかし姫様の銀色と入り口の木肌がスッと重なり
私の中で 光達が。
「ここはここだよ」、と はっきり色を知らせてくれるから 気を取り直して二度 瞬きをした。


今日は久しぶりに イストリアと魔女の店にお出掛けしている。

 朝 目が合った時に「一緒に行くかい?」と。

優しい薄茶の瞳が細まったものだから、少しだけぐるぐるしていた私は直ぐに頷いて ウキウキしながらサラダを頬張っていた。

そうして朝食後
早速出掛けるという白衣の後ろをテクテクと付いてきた 今。

ポツポツと 道中漏らしていた私の独り言に、絶妙な相槌を打っていた彼女の返事が スッポリと私の真ん中に 嵌ったのである。


「しかしきっと。そのポイントは君の言う「等価交換」で、その「等価」とは何を指すのか。それが君の場合はより細かく、精度が高いんだ。まだ粗く物質的なものを求めるのならば、それはお金や物になるのだろうね。先ずはみんなが。自分で自分の面倒を見れて、自分の中で力を循環させる事が必要だ。それには、対価も。必要だという事だろう。」

「成る程。 それわかりやすいです。 ふむ。その、時々 それぞれのその、場に 位置に合った「対価」。なるほど。」

「そうだよね。君はだからは、要らないんだろう。全ての幸せを願い、祈る君が求めるものとは。やはり、なんだ?「世界平和」とか、なのかな。」

「  ふふ まあ、みんなが踊り楽しく暮らせれば、一番いいですよね 。」

「そうだよね。………ま、なにしろ。君はあまり考えずに好きにやるといいんだ。さて、私は先に行くよ?」

「あ、はぁい。じゃあ 私は少しブラブラしてから帰ります。」

「ああ、ゆっくりしてくるといい。」

そう言って、「カラン」と。

入り口の鈴が鳴り 水色髪が見えなくなったところで大きく息を吐いた。

 リラックスできる この空間で。

緊張していた 訳じゃないけれど
やはり「気付かなかった自分に気付いた」私は少し 反省もしていたのだろう。

 「なんで」「わからない」、そう 思いながら。

少しだけ、自分の中に 責める様な気持ちがあったことに 気が付いたからだ。


「 まあ。 そう、認めて。わかれば、また 進めるのよ。 」

そう呟きながら 中二階の階段を降り今し方水色髪が消えて行った 入り口付近のハーブ達を見上げる。


   ここも 大分変わって。

モッサリとしたハーブが 程良いドライになって
「出荷時です」そんな顔をしてフサフサと下がる、みんなの顔が面白い。

 なんだか 「愛でられる為に 誰かの家に行く」のを
 喜んでいる様で。

「いや、それは そうなんだ。」

そう 思いながらも乾いたハーブの匂いを胸いっぱいに 吸い込んだ。


  静寂に包まれた 薄暗い店内

 いつもこの店は 「人で賑わう」ことは ないけれど。

 私は その雰囲気が好きで
 寧ろ誰もいない方が良くて
「確実に誰も来ない」、この店主不在の 店を。

独占してある、この瞬間が堪らなくて
 イストリアに感謝しながらくるり 空気を動かしながら回って みる。


 「ひとり ひとり」

    「それぞれの 必要」

  「必然」

     「道筋」  「道のり」

  「最善 最適な 各自の最高の道標

それは確実に個々の「すべての人」の 頭上に 光って 在り。

気付いて見上げれば、その「必要が示される」
その最善の光の 筈だ。


「  そう、そう なのよね。」

 だから 一人一人 違うし
 違っていいし 違って当たり前だし

 だからこそ 面白く 楽しいし

 勿論「自分の最善」も からして
 私はこの気付きから 「なにを得るのか」
 「どう 拡がるのか」。


「そうなの。転んでも、ただでは起きない いや、転んでないけど うん。」

しかし私のこの性質が幸いして、自分がここまで来たことは もう重々承知で ある。

 からして ?

 私の 「最高の光」は。

  なに を 
         どれ を

  私に  言いたかった

      伝えたかった


 「みんがみんな 自分の最善を 辿る」

  「望めば」   「決めれば」

    「スタート すれば」


「まあ。 それは そうか。」

そう、その道は「自分が始めなければ」見えぬし
開かぬし 示されぬし わかりも しない。


「対価。 等価交換。 わかる、こと。何処まで  いるのか わかりたいのか。見えているのか、いないのか 。」

きっと 私が引っ掛かっていたのは
「見えている様で 見えていないこと」
世界を見ているとそれが沢山あって、「え?そうなの?」と 自分がいちいち。

 そこに躓いているから 戸惑うのである。


「でも。 なんか。お陰で、はっきり わかったかも。」

 そうなんだ
 「何処まで行きたいか」「今 何処なのか」
 「なにを目指しているのか」
 「その人の真実は 今 なんなのか」
それは「今の色」を見れば すぐにわかる。


「それに、いちいち。「え?ほんとに?」って やってるからいけないんだわ。 そうよ。」

自分が「子供だ」とか
「知らない」とか 「ちょっと?阿保だ」とか。

私は自分を 未だにそう思っている時があって、「みんな凄いな」って。
 世界を 見ながら素直に思っているから
 なにかそれが少しズレた時に。

「あれ??」って ヒュンと移動してしまうのだろう。

 そう
 ちょっとジャンプした時に 
  風が強くてそのままスライドする 様に。
 飛ばされ流される 様に。


「私は、私の 位置を。」

ちゃんと 見つめ直して。

 「すべてがまるっと 自分の中」
 「せかいは ひとつ」

  「世界は せかいの なかに ある」

それを適用している私の中に、「すべてがそれぞれに含むもの」について「対価を貰う」と いう。
 「選択肢」が ないのだ きっと。


「そうなんだ、私の場合は。そう、なんか。「辻褄が 合わない」の。なんでかは、わかんないけど。まあ 「等価交換じゃないから」なんだろうけど。 ただそれが「自分のなかの等価交換」に ならないから貰わない、それだけなんだ。」

自分の創ったもの 
 それに対しては、受け取るけれど。

「みんなが本来 持ってるもの」
「だけど まだ見えないもの」
それについて私が対価を貰うのは、私の中では何かが違うのだ。


 「開ける手伝いをする」「ヒントをあげる」
それはとても素敵だけれど 
その役目は「今の私今世」の「やりたいこと」じゃ ないんだ。

 
   私は 私の 自由に

  どこまでも  拡大してゆく


多分 今回は そうなんだ。

あの 深海で思った様に。
今の私最後の私」は 本当に自由で良くて
瞬間瞬間でいろも違って やりたい事も変わるし
なにしろ縛られるのが 苦手だ。

 そう  
 手を 出したら離せないから。

きちんと「そうなるまで 懐に入れておく」、その性質を持つ私がそれを今 やるとすれば
大きな大きな袋を持って 沢山の光を持ち歩かねばならない。


「そうじゃ、ないのよ それじゃないの 。うん。」

そう、それに。

 今 それ対価が必要な人には それが渡り
 それを払う事でまた 重みが出て学ぶ意欲が上がるならば
 それもまた よし

 それぞれの最善へ流れが加速する中
 それは勿論 私にも適用されている筈だから。

「そうなの。だから、きっと 私の問いの答えも。 遠からず、現れる? わかる、と いうこと。」

そうなんだ。
だから私は ズレてもまた 直ぐに戻って。

 自分の本当を 探しに出掛けてゆくのだ。


「よし。 然らば。いざ。」

そう言って、ポンと膝を叩いて。

少し名残惜しいが 空が見たくなって入り口へ向かいながらもくるりと回り
静かに見送ってくれる商品達に手を振り「またね」と 言う。

そうして 勢いよく「カラン」と鈴を響かせ
 大きく扉を開け放って。

 「ポン」と元気よく 入り口を飛び出し

  桟橋を 走り出したんだ ずーっと。













  
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