透明の「扉」を開けて

美黎

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8の扉 デヴァイ 再々

記録と記憶

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「てか、「含まれてる」って ことは。そのうち、全部なって、消えた事も「知れる」という事だろうか。」

「まあ、そうかも知れんな。」

「そうだね?」

「 ふむ?」

いきなり、朝食中 パンを頬張りながら。

私が漏らした 独り言に普通に返してくる、この二人は流石だと思う。


そっと押されたカップを受け取りながらも、隣のテーブルから聞こえてくる 本部長の話が興味深い。
 
 いつの間にか 自然と馴染んでいる 
 極彩色の狐と。
なにやら、この頃のデヴァイについて 私の知らない話をしている様なので ある。


「悪知恵の働く奴は、勘も鋭いからな。「何が」、不味いのか知っちゃいないだろうが心当たりのある事は全部消したいんだろうよ。何しろ消息不明な者が、多い。」

「ここに来て、か?前からだろう、それは。」

「ああ、だがあからさまだ。連中もなりふり構っていられないんだろう。」

「しかし、それじゃ余計に、なぁ。」
「まぁな。だがそこまで見えぬが、その生き方。だからこそ、だな。」

いつの間にか真ん中に鎮座している玉虫色からも、物騒な話が繰り出されて いる。

 その
 男三人が 真剣に顔を突き合わせているのを
 眺めながら。

「いや 一人と二匹?か?」そんな事を思いながらも、正面の薄茶の瞳に視点を戻した。

いつでもキラキラと私を迎えてくれる、その色は
この「世界の話」を払拭するには丁度いい清涼剤だからで ある。


「やはり、成長しているね?気になるだろうが、こちらは大丈夫だ。」

「 はい。なんか、うん。そうですよね。」

首を突っ込んでいかない、私を見て。

そう感じてくれた事に、有り難みを感じながらも今し方感じた疑問をそのまま 口に出す。

「でも、イストリアさんはどう思います?私達はきっと、「忘れている」って 思ってても。きっとその中に「記憶」?というか、「情報」は刻まれてて 多分、自分が物凄くクリアになれば 何をも見透せる様に なれば。それって、「何をしてきたか ぜんぶ」、バレちゃいますよね????」

「まあ、そうだろうね。」

苦い色で笑いながらも、頷いてくれるその顔を じっと見る。

 なんだか その 笑顔が。

少しだけ「気まずそう」に見えて、この人に何ら「不穏な色」を感じていない自分のハートが首を傾げていたからだ。


「なに、どんな人間でも。後悔や、失敗の記憶はあるものさ。私だって向こうにいる間、見て見ぬふりをしてきた事は五万と、ある。だからね、少しだけ思い出してしまうんだがそれ以外にもあると思うと、なぁ。」

「 ふむ。」

「私は君の様に、「今より前の生」は分からないけど。ここの歴史から見ても、人間とはそう大した事はしていないだろうし、なんなら何故ここまで変わらなかったのか。見るのが怖いよ。フフ」

「まあ。 そうかも知れないですね。 でも、それはみんな同じだしなぁ。」

「それもあるけれど。だがしかし、未だ変わらず「神の一族」を守ろうとする、長老達を見ているとね。なんだかやり切れない思いになる事も、ある。」

「 成る程。 」

 確かに。

すっかり失念していたけれど、最初はそんな話だったんだ。

確か

 「自分達以外は 人以下である」と。

そんな「神の一族デヴァイ」に憤っていた事が思い出されて、なんだか懐かしく感じる自分が少し 面白い。


「 ふむ? 「血が濃い」か 。」

ふと 思い出した「寿命」のこと
それがなんだか、自分が今 気になっている「ひかり」と「からだ」に関係がある気がして
くるくると回り始めたカケラを遊ばせながら。

再び 向かいにある薄茶の瞳をチラリと眺める。

「それもね、女達が変わってきたから。少しずつ、良くはなると思うが。しかし、逆に結婚以外の選択肢が出てくる事でやはり子供は少なくなるのだろうね。いや、しかし他の扉という選択肢が?うん、どうだろうな。」

そう言えばイストリア自身がラピスで子供を産んでいるのだ。

 確かに 選択肢として。

 私的には 「アリ寄りのアリ」だけど

  その「差別」?的なところは どうなんだろう か

  その辺男女差は ありそうだけど な ??


クスクスと、笑い声が聞こえてきて。

テーブルの木目を見て唸っていた顔を上げると、私の欲しい答えが降ってくる。

「そう、確かに女達の方が外に対して積極的では、あるんだ。「デヴァイの男は見飽きた」なんて言っている子もいるとか。フフ、それでだけど。」

「えっ」

 なんだか、俄かに いい色な予感が する。


「何れ耳に入るだろうから、言っておくけれど。リュディアはシェランと結婚するよ。アリスが許可を出した様だから、本決まりだろう。どちらに、いや、何処に?住むのかは決まっていないらしいが、今はまだ準備中だろうね。」

「 グッ ゴホッ  」

「大丈夫かい?いや、口に物が入っていない時なら大丈夫かと 」

「いやいやいや、大丈夫ですよ、全然。てか 全く気付かなかった というか?最近 黒の廊下パトロールしてなかったから???あぁ~
ラピスとグロッシュラー寄りになってたからなぁ~   ぁ~ 」

「まあ、落ち着いて。なにしろしかし、君は「公には」結婚式に出られないだろう?何処か別の場所で御披露目でもしようかって、ベオグラードが言ってたとか、なんとか。」

「えっ  あっ 、はい、ベオ様が?ふむ?それなら私が直接行っても差し支えないか?? いや、どうだろうか。」

「ハハッ、まあ、焦らなくていいよ。なにしろ久しぶりの明るい話題だ。長老達にとっては、どうか知らないが若い子達は浮き足立ってる。………しかし式は向こうグロッシュラーにはなるかな…だがみんな、移動の申請が忙しそうだ。」

「 ぇ え~  」

 なにそれ

 楽しそうな予感しか しない。


「兎に角。君は、あまり勝手にウロウロしないこと。見られない様にするのは、得意だと思うけれど。君がまたこちらを闊歩すると、空気が変化する可能性が高い。なにしろは、禁物だからね。」

「言っても無駄かも知れんが。」
「そうだろうな。」

間髪入れずに 飛んできた相槌の所為で。

 極彩色が こちらにいる理由が
 わかってしまった。


「 ぇぇぇ~~~」

「なんだ。気に入らないのか。」

 いや
   そうじゃない けど

   わかって るんでしょ

  その 目は。


チラリと確認した 紫色の瞳は。

相変わらず極上に美しいけれど、その美しさが得意気に見えて
なんだか自分の行動範囲が狭められた様な。

そんな気がして プイとそっぽを向いた。


 でも。 あの子が いる所為で。

 「私の範囲が狭まる」それは あり得ないことも
 知っているけれど 。



「解ってるなら、いいんだ。解っているなら、な。」

「 フン、だ。」

しかし、きっと「見られる」事に変わりはない。

「ぇえ~。でも。結婚式かぁ。久しぶり!なんか、エローラの結婚式 思い出しちゃうなぁ  。」

「程々に………いや、言っても無駄か。」

「あの時は結局、どうしようもなかったからな。」

「しかしラピスより、こっちだとジジイどもが五月蝿いだろう。」
「まあ今はアリスやブラッドフォードもいるが 」
「そんなもので止められるか??」
「どうだかな。」


なんだか 向こう側で
不穏な会話が繰り広げられて いるけれど。

「ま、私には 関係ないっちゃ、ないな。うん。」

「彼にも、言っておくからね?まあ、もう知っているかも知れないが。」

「   ? あ。 確かにそれは ありますね?」

いきなり、「ポン」と湧き出てきた金色に
頬をピタピタとしながらも頷いておく。

 この頃 居たり 居なかったりが
 曖昧な金色は
  「夢の中で会ってるのか」「現実なのか」
 私の中でも 区別するのが 怪しいのだ。

しかし 
自分の「中に残る 金色」から。

 彼が 色々な世界を見て回っているのは
 わかるのだけど 。


「  うむ。 ゴホッ、えぇと。」

「フフ。仲が良さそうで何より。」

「 うっ はい。 」

そうして 細まる薄茶の瞳に見守られながらも。

 私はひたすら 両頬をピタピタ
 していたので ある。










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