透明の「扉」を開けて

美黎

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8の扉 デヴァイ 再々

石たち

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「 うぅ~~~ん? ?」


 でも。

    石達って。

 「意味」とか
 「価値」とか
 そんな感じじゃ なくて

 「私がどんな時に 欲するか」
 「その時の相棒は なにか」
 それなのかも しれないな ?


「こっちにも、石に意味って。ありますよね?」

 ウイントフーク さん。

いきなり突然、そんな質問を投げた私に
少し嫌な目をして しかし。

流暢に 手元の石の説明を始めた本部長もやはり、好きなのだろう。

 あの ガラクタ屋敷の中に 大切に飾られあった
 特別な石達を思い出しながら。

なんだか 始まったばかりだけれど、終わりそうにない
その「石についての蘊蓄」を聞き流して いた。




「おい。」

 あ?

    バレた?? ?

途中、チラチラと様子を見つつも 手元の石を玩び
なんならあの秤に乗せ遊んでいた私
勿論、説明を聞いてはいるが時折出てくる知らない言葉に脱線気味なのは否めない。

 まあ
 私の場合は。

 地球での 石の意味で 知ってるやつと同じものがあって。
  面白いなぁ なんて 思ってた だけだけど。


「全くお前は。今度は何が気になってるんだ?怒らないから言ってみろ。」

「 えっ」

 なんで 「怒られる」前提? なの??

そうは思いつつも、様々な前科アリの私に 説得力は皆無である。


「いや、 まあ。 あのですね ?」

しかし。

 私が 気になっていること
    疑問に思ったこと
    知りたかったこと

 それは 「私だけに当て嵌まること」でもある。

「ん。」

 いやでも。
 この人 そんなの 気にしちゃいない な ?

きっと彼の材料にもなるだろう。

ある意味「同類」の私達、「他人の色」は美味しい材料でもある。
そこまで自分の中のカケラが回り、そう私の中での答え合わせが済むと。

自分の中でも、くるくるとカケラを回しながら
「なんで 気になるのか」、それを話し始めたんだ。



「なんか。この、同じ白い?透明な石でも、「効果」が違うなあって。 いや、「効果」と言うとちょっと違うんですけど。なんて言うか。 まあ、「持っているもの」が違うんだろうけど、だから構成成分が違って 用途が違う。」

「例えばこっちは。キラリと輝いてて、強い光を発してるけど、「可愛い」とか「美しい」んじゃなくて、なんか「意志がある光」なんですよ。でもこれは、もう「水」って感じで 頭が痛い時に見ると、いい。スッキリして治る、多分。癒し?浄化? なにしろ「雑味」が無い。スッキリしたい時にこっちの強い方を見ても、同じ透明だけど全然ダメで、スッキリもしないし、煩いと言うか うーん、「強過ぎる」んですよ。なんか、チカラが 訴えが。」

「ああ、それで?」

チラリと上げた視線
「まだあるだろう?」という、眼鏡の奥の瞳は鋭い。

「えっと、それで。 私の世界だと、石には意味が付けられてて でもその通りの部分もあれば、そうじゃ無い部分もあるんですね。まあ、石の個性と言うか。それも、ある。」

「だから例えば。自分のなりたいものとか、したい事に合わせて石を持ったりするんですけど。 あ、ほら恋愛運とかですね。あるでしょう、おまじない的な そうそう、あのラピスで私がやってたのも結構近いです。うん、そんな感じの。」

顔がなかなか面白いが、どうしたのだろうか。

 てか 結局
 ウイントフークさんの恋愛事情は 知らないけど
 「みんな光」だから
  私が思う「朝との相性」も。

 それはそれで 良くて 「猫だから」とか
 関係ないな ??

  あ~ でもなー

   子供を産む とかは 無理だよな ~

 でもさ?

 うん?


  もっと       それも。

  「可能になる」かも   しんない、な ???


「こら。何、考えてる。」

「えっ  うん? はい、いや あの。」

私が真剣に脱線し始めた所を、止められる。

 えっ 
    ちょっと  待って ??


中々に面白い想像を展開していた為、思ったよりも入り込んでいたらしい。

自分の頭のカケラをまた、石達に戻す為
手に持っている透明な丸いカケラを。
くるくると回して、ギュッと握った。


「なんか、石って。 確かに、その震えを常時一定して発してくれてるから 癒しにいいとか、そんなのも分かるんですけど。」

「ああ。」

「この子達がそれを発しているから、癒される。 多分それは間違いじゃないけど、私の 場合。例えばこの子とこの子で部屋の中を構成したとして この子達は癒しとか強い光を発してはくれてるんだけど、それで私が変わる、と言うよりは。私がそうしたい時に、見て、愛でて 必要を取り込んで ?ものにする? 反応する?いや、使う? う~ん、言葉にすると難しいな。」

 ニュアンスが 少しずつ違うのだ。

 今 ある 「言葉」だと。


私に考えさせるつもりなのだろう。
本部長からの返事は無く、ただ奥の山で 本を片付けているのか
 更なる山を積み直しているのか
それは定かではないけれど、放っておいてくれるのだろう。

 それなら。


自分でも、自分の中にある小さな絡まりが気になる。

 「大したことじゃないけど 私だけの色」
 「他人と違うこと 違うところ」
 「私の思うところ」「見解」
 「自分だけの ルール」。

それを掘り下げて、ここまで来たのだ。

 ここに何か ヒントが ある。

その予感はきっと、光達からのサインでも ある。


 さて?

  じゃあ  「なにが」。

 違うんだ 気になるんだ 
 私の 中で。

   引っ掛かって るのだ ?


それは「絡まり」の筈だ。

 「解けば」「進むもの」
 「また新しい光」「カケラ」「いろ」が
 見える もの。


そう、意図を定め その薄く繊細に絡んだ纏まりに狙いを定めて 
じっくり ゆっくりと進んで ゆく。


   「組み合わせ」

  「相性」  「反応」  「変化」

  「それによって 起こる こと もの」。


  「必要」を 「その時」取り入れること


  「選択する」こと

 「使う」「共に 働く」「助け」「足すもの」

  「自分の中に その 粒子を取り入れて」。

  
  「適切な反応」を 促し

   その「効果」「結果」を 得るもの


 日々 「食べたいもの」を 選ぶ様に。

  
  その時 「欲している いろ」を

 「取り入れること」「取り込むこと」

 いや 


   それを 「選んで 使う」こと
   それだ。


「  ふむ。」


多分。
「私の中にない石」、それは私が選ばぬものだし
私の部屋の中には無いものだ。

 まだ 綺麗に並んだままの 色々な「もの達」
 この間確認した 「お気に入り棚」を
 思い浮かべて。


「自分の好きなものだけ」「合う色だけ」、それを具現化しているあの棚の意味がカチリと嵌り なんだか面白くなってちょっと笑う。

 なるほど あれは
 そういうこと なんだ。

そう、一人納得しながらも その厳選された品の「なかみ」をぐっと探っていって。

 「その 粒子の種」「質」「高さ」「いろ」

それが「今の私」と 同系統
 または もう少し下の私 前の私と同じ事も確認して
自分の「選択眼」に感心しながらも 目の前の石に視点を戻す。


 この子は。  私の お気に入り棚 に?

  入る  置ける  かな ?


「 う~ん。 ちょっと まだ かな。」

右手の子は まあまあだけど
左手の子は ちょっと無理だな ?

左の石は「可愛い」けれど、少し荒くて 重い。
 それそれで、いいのだけど 「私が選択するか」で言えば 選ばないものなのだ。
 
 だから 
 それを選択して「使うこと」は ないもの
 その色のカケラを回すこと
 取り入れることはないもの

 即ち「古い色」であって 
 「今の私」には 必要がないもの。


「ふむ。 」

 「必要以外 自分の中には入れない」
 「置かない」
 「構成成分に入れない」
 それは大事だ。

 そう が あると。


「確かに?  成る程ね。」

そう それは「澱」となる。

 「澱でもある」と 言っていいのか。


「確かに「前の私」だと。なんか、このが悪いみたいに思っちゃうのが嫌で、できなかった かも??」

 いや しかし。

 「お気に入り棚にお気に入り以外を置かない」、その気はずっと前からある。

 あ~  でも。

 
   「もの」とか 「色」「かたち」は 
 厳選していても 「人」は 難しかった かも。


  "じぶんの いろ のみで
    自分の世界を構成すること"


それは ある部分では 成っていたことだが
ある部分では絡まりこんがらがって、私の中に溜まっていたものだ。

「ふぅむ。」

多分 それは「見た目と中身」の違い
「もの」と「ひと」の違い
私の中での「掛け違い」の修正
「世界」の仕組み
「魂」がわかったこと

それが 成されて。

「  だから やっぱり。「思い」を紐解いてたって こと なんだ ?」


 人間ひとは 「もの」よりも
  変動率が高くて 揺らいでいて

 その時 その時での 色の違いが激しいから。

それは勿論、私自身にも適用されるし 周囲の人も そうである。


 どの 面を見るか
      見えるか
 どの殻を被るのか
 どの角度から 光を当てるのか。

それにずっと惑わされて 惑って 遊んでいた私達

でもそれをずっと 解いてきて
今、はっきりと見える 「光のなかみ」

「もの」を見極めるのは昔から得意だったんだ。

 だけど 「ひと」には 色々な誤解や思い込み
 刷り込みが 適用されていて。


 「みんな光」なのに 違う現実 
 「世界」は 美しい、そういるのに
 大きくなるに従って 齟齬も大きくなる
 現実の「世界」。


それにずっと混乱して 迷っていた自分
巻き込まれて 飛び込んでいた私

 そっち側人間側の 仕組みが わかったから。

今 こうして はっきりと選択できる、「自分のせかい」
「お気に入りだけで 粒子を構成すること」。


「  ふむ。」

チラリと 奥で動いている白衣に視線を飛ばす。

 あの色だって そうだ。

「個性的で」「ガラクタ屋敷だけど 潔癖」
「難しそうで優しい」し
「自分の興味以外はゴミ」
そんな偏った性質は私に似ているから合うのだろうし、だから私はあの人が「わかる」のだろう。

 全てが わかる訳じゃ ないけれど
 「あの人の性質」は。
 わかるし、好きだ。

 気持ちいいんだ はっきりしてて。

 ブレなくて 他人に期待しない。

 押し付け 乗せる事もないし
 「自分のせかい」を持ってるから。

 一緒にいて 楽だし「私も興味がある」。

 あの人の 独特な「せかい」に。


「 ふむ、 ?」

そこまでカケラが行き着くと、「じゃあ あの色金色との違いはなんなのか」、それが気になって しかし
随分と違う、その 色に。

 ブワワワワワワワ と
いきなり頬が火照り出したから、慌ててソファーから立ち上がり この部屋を撤退する事にした。

 いかん
 この 顔を見られては いかんのだよ 。


「え ウイントフークさん、また! ちょっと 考えが纏ったら報告に来ますね ???」

なんか チラリと振り返った白衣が見えたけど。

 とりあえず それどころじゃ ない私は

急いで扉を開け、青縞を目に映して その冷静さと賑やかさ
両方を吸い込み やや、混乱して。


「 ?? ?」

ペチペチと 頬を叩きながら大きく息を吐く。

そうして 騒めいている調度品達の間を
曖昧な笑みで誤魔化しながら。

 開放感を求め 青のホールへ向かって
 真っ直ぐ歩いていく事に したので ある。








 
















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