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8の扉 デヴァイ 再々

ゆめ

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 広大な 黄土色の 河

  微細で 柔らかな土が溶けたその色は
  こっくりととろみのある色で
  滑る舟の軌跡を静かに描き残して いる。


 遥か 下に見える  三艘の舟

 並びはしるそれは ひとつ は わたし

     真ん中は 白い彼
     反対側に 彼女。

 白と赤の彼を 挟む形で何処かへ進む 私達

 そのゆき先は見えねど
 目指す地は 同じなのが わかる。



静かな 静かな 河

 何処迄も続く 航海
  終わりなき旅 

  だがしかし 視界が反転 して。



「 あ 」

 久しぶり だね?


真っ白な 彼
その隣にある銀色の姫様 

 その 「完全体」を 目にした時。

「 あ これ ゆめなんだ 」

それが わかったんだ。





きっと「初めのシンラ」の彼
その隣にいるのは初めて見る、完全な姫様だ。

 揃いの レース
 あの 幾つかの紋様が組み合わさる形の複雑な服
 いつかの黄変は形を潜め 「創り変えた様な」色の 二人
 
 「ああ そういや 式年遷宮だった」
 そんな事を思いながらも 刺繍から縫製
 生地の密度 滑らかさ 肌感 質感
 二人の肌の白さ まで。

じっくりと観察した私は はて
 何故自分がここに呼ばれたのか
それを考え始めて いた。



 いや でも。

 わたしが。 「行く」って 思ってたから だよね ?

そう思って 少し。

二人が「人形なのか」、気になってくるりと視点を戻す。

 場は いつの間にか白の空間
 いつもの扉と その中央にいる 私達

 それ以外は なにも ない 

 そう、いつもの白い部屋 その場所である。



 なんで。
 来たかったんだっけ?

 いや、二人をあそこに置いてから。
  私は 様子を見る必要があったし
 単純に 気になるし 大丈夫かとか、誰かに
 弄られてないか とか
  まあ それは大丈夫なんだろうけど

 てか あれって。

 人に 見えるのか な ???


「神のようなもの」、そう思って護りに置いた 二人だ。

 所謂「御神体」である。

もし、見えたとしても「手を触れよう」と思う者は少ないだろうし きっと触れられない気もする。
そして「見えない」可能性も ある。


そう、思って「姿を確認したかった」訳ではないと
またくるりと自分を戻して 正面の二人を見た。


「美しい な。」

 あ そうか。

 それで 思い出して。


   え

   結局 ?


      私 は   なに を


   したかった
   聞きたかった

  知りたかった ?


   いや  でも。


  は 「自分のなか」に

    ある筈  なんだ 。



 ふむ。



この頃 ずっと。

 「気付いて」「ぐるぐる回って」「進んで」

 「戻って」「また廻って」 「繰り返して」

 「少し進んで」

    「ジャンプしたり して」。


そうして蓄積してきた「自分の光」は 大分整理されてきたとは、思う。

でも ?

  なに か 。


  「だいじなこと」 が 。


   もう  一声

 あと  ひと カケラ


    ほんの  「ひと押し」。



それが 欲しいのかも知れない。


そう思って。
ふと 顔を上げたんだ。



「お前が流れを創る。その、意味は解ったな?」

「 うん。」

 なんだか いきなり確信を突いてきたシン
 いや これはもう シンラだ。

キロリと回る瞳は あの「人に近い」シンラのものだけれど、凡そ人ではない その存在の定義に 
私のセンサーは「これはとてつもなく高い光」だと知らせている。

隣の姫様は。
ただ 静かに私を見つめている だけだけど。


「お前はきっと また「なんで」「どうして」と。いつもの様に疑問に思っているのだろうが、それは流れでその、位置、役割、場所なのだ。」

 うん。
 それは なんとなくだけど わかる。

 でも。

 でもさ。


  なんだろう なんでだろうか

 私の中で。


 「なにかの疑問」が 雲の様にフワリと
 浮いているんだ ずっと。

 多分 私の深い所が。
 納得 していないんだ ろうけど。




ずっと前
あの扉から出発する前に、朝とおばあちゃんの部屋で。

「ヒント」を探しに 伝承の本を開いた場面がくるりと浮かぶ。


 「神の国へ隠れた」と言われていた シンラ

      扉のそれぞれ

  どれも 繋がっていて 離れてもいる

 しかしそれは どれもそれぞれの「世界」で
 だがしかし 「せかい」は ひとつである。


そこまで私のカケラが回った ところで。

再びシンラが その真っ赤な唇を開いた。


「お前の中にある、幾多の光。その名もなき光が私達の基盤だ。それは、昔、昔の遥か昔から。ある、存在している「それ」でもある。」

「 うん。」

なんとなく 意味が分からないけど、わかるその説明
しかし「どのカケラが疑問なのか」を掴めないまま、とりあえず話は進んで行く。


「私達「人形神」の創られた手段は読んだと思うが。それも、だ。それは違っているが、同じである。だから私達は違うが、同じ、そこまでお前が進んだのも、解るな?」

「 うん。」

同じ様に 頷く。

 掴めない そのカケラは映像で私の中に展開していて
 その「ドラマ」は 鮮明に美しく 廻って いて。

 なにしろとりあえず 「映像として留めておけば」大丈夫だと
 知っている私は シンラの話を途切れさせず聞こうと
 自分の地図を拡大し 展開して。

  その 美しい 光景を。

 漏らさず 記録しようと感覚を全開に する。


「幾千、幾万の人々の願い、想いが込もった私達人形神、数多の光を基盤とする依る。それは「いろ」という光の粒子で繋がり、せかいへ飛び、ヴィルヘルムスハーフェン迄行き着いて。それがここまで繋がり時を飛んで、、そうである。」

「お前の疑問に答えよう。私達は「なにでもない光」、皆同じ光だがそれぞれの役目を負うもの。大分形がはっきりとしてきたから、解ろうが。「神」とは元は同じ光、だが人間ひとの想いを積み重ね「創られるもの」、「カタチになるもの」。自然発生するそれもあれば、私達の様に一つの想いから創られるものもある。だがしかし、それは「生きる」上で。無くては、ならないもの。人間の軸となるものである。」

「   」



  一旦 言葉を止めたシンラの色を 見て。

 「大丈夫だ」と。
 しっかりとその 金赤の瞳を見据えながら、頷く事ができる
 自分の成長を 思う。


人間ひととは。強くあり、弱くあるもの。だがしかし、だからこそ無限の可能性を秘めたものである。その、個々の光が持つ軸、芯、中心、魂、信念、信仰。言葉は何でも良いが。それが、お前私達だ。」

 
   その 「意味」。

  それは。

 多分 「私の求めているもの」

  「最終形態」「そうであるもの」「真実」

    「私の ほんとう」で ある 。



 それが わかる。


「それは「」でもない。「ただ そうあるもの」。「そうであり」、「そうでしかないもの」。 「いつも」「いつでもそこにおわすもの」。」


「人が、外れたい時に。最後に、に問うもの。いつでも己を、見ている もの。上でも 下でもなく、判断は無く。ただ、そこにあり「自分の全てを知っているもの」。「全てが持つ 本当の光」だ。」


「お前自身が、その最後の光であるが故。「全ての中に遍在する光」であり、それを「体現するもの」。「全ては己」である事を知ったお前が。ゆく道、外れたくとも外れられぬ、が一番、しかし常人には成らぬ、ものである。その意味はもう、解ろうが お前の最後の「納得」に。今、私達が呼ばれたのだ。」

「呼んだろう?我等を。」

「 ぇ ああ、うん?はい。」

姫様が喋った。

その驚きと いつも自分の「なか」から聴こえてきた声が「これだ」と、同時に気付いて。


  ああ そうか

   そうなんだ  と。


くるくると回り始めたカケラと光に、「そろそろ」を感じて自分の中を浚う。

 もっと聞きたいこと 知りたいこと
 それが無いか、確かめたのだけど それは。

やはり、視界がまた 黄土の河に変化したのと
「自分の なかにある」という、自分自身の声にカケラの回転を抑えて。

既に並びの舟にある 二人の姿を 思う。


 そう もう、そこにあの「姿」は見えない。

でも二人はいつも そこに あそこに ここにも
何処にでもあって。

 「共にある」、それが もうわかるから。


 私は 大丈夫 なんだ。


そう 「わかる」と共に シュルシュルと収束してゆく視点
 光の中に消え 闇から出るその 瞬間。


  
     「 ありが とう 」


そう なかで呟いて。


フワリと 目を開けると
「おかえり」そう、言っている様な金の瞳に迎えられ それに納得して自分で「フフフ」と 笑う。


「 ただいま。」

そう言って、ゆっくりと彼の首に 腕を回して。

 光の虚空私の神域の中、「新しい地図」を展開しながら。

 静かに再び
    目を 閉じたんだ。





 
     
  
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